まあ時代の流れといいましょうか。
ある程度の年代に達するとね。
何かこう人から外れた道を歩きたい。
世間から落ちこぼれたような生き方をしたい。
なんてことがかっこいいと思えるような季節がありまして。
僕だけでしょうか(汗)
彼とはいろんな悪巧みを試みたんですけど。
ある時ですね。
どうしてもバイクに乗りたくてですね。
当時は結構簡単に直結できるマシンもありまして。
暗くなるのを待って駅前のデパート。
駐輪場を物色。
あるわあるわ。直結可能な走る自転車。
たった5分です。
今思えばわざとそんな簡単な仕組みにしてたんでしょうね。
それだけ人間の良心は信用されてたと。
もちろんヘルメットなんていらない。
交通規則なんてクソ食らえ。
盗んだバイクで走り出す。
ただそのフレーズ。
その感慨に耽るだけの行為。
僕はね。
彼は違いました。
行きたいとこがあるねん。
え?どこ??
向かった先は徒歩でも行ける近さの
中華屋さん。
何や。腹へってんのか?
違う違う。
と。いきなりアクセルを吹かし出す彼。
ぱふううぅぅん。ぱふふふぅぅぅん。
主婦層向けの原動機付バイク。
空疎なマフラー音が乾いた路地に響き渡る。
ぱふふふぅぅん。ぱふぱふぱふふううぅん。
やめとけよ。
恥ずかしいやんけ。
彼はいたって真剣な眼差し。
見つめる先は中華屋の店内。
実はこの店にはね。
1年上の女の子がバイトに入ってまして。
彼とちょくちょく食べに行ってたんです。
500円玉握り締めて。
天津飯(笑)
知りませんでした。
彼の想いがそんなに強かったとは・・・
で。ちょっとでもかっこいい姿を見せ付けたい。
俺はバイクにだって乗れるんだぞ。
主婦専用のオンボロ原付ですけど(苦笑)
続く。