コオロギみたいなあの夏に2 | 注文の多い蕎麦店

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人間は何を食べて命を繋いできたのか?
純粋に生きるための料理を実践し
自然に回帰することで
人間本来の生活を取り戻します。

がんばれ!

頼む!!

典型的な熱中症。

遮るもののない炎天下の中。
ろくな水分補給もせずに。
昼食を挟んで4時間ずつのぶっ通し。
しかも、いつもより内容はハードになってたはず・・・

その時はね。
そんなに深刻に考えてなかったんですよ。
日射病ってのがあるとは聞いてたけど。
病院行ったら直ぐ治るだろみたいな。

30分くらい経ったでしょうか。
それとも1時間。
宿に帰らされた僕らの耳に聞こえるサイレン。

点滴とか打ったら直ぐ帰ってくるやろ。

そんな安易な考えも空しく。
翌日からの合宿予定は全て中止になりました。

脱水症状による多機能不全。
あっけないものでした。

ついさっきまで一緒に走り合ってた仲間。
こんなに簡単なものなのか。

とにかく合宿はこれにて打ち切り。
この結果に僕たち。
不謹慎極まりないんですけど。
人情の欠片もないんですけど。

よかった。合宿早く終わった。

僕も少なからずそう思いました。
一緒に練習したとはいえ面識も無いし
会話した記憶も無い。
悲しみ云々よりもハードな練習から開放される安堵感。

ほんと今思うと情けないんですけど・・・

本題。
コオロギみたいなあの夏に。

人が死んだという事実。
しかも一緒に競い合ってた仲間の死。

その悲しみよりも自己の苦難回避に
ほくそ笑んだちっぽけな自分。
かっこ悪いよなあ。
虫けらみたいだよなあ。

その後、学校および教員の指導への問題追求。
先生たちは相当追い詰めれたようです。
今なら間違いなく即刻指導処分。

でも結局お咎めなしになりました。

その寛容な処分を決定づけたのは。
亡くなった生徒の両親の言葉でした。

あの子は大好きなサッカーをやりながら死ねました。
いつも痛いや苦しいなど言わない頑張りやさんでした。
正直、その痛みや苦しみを見つけられなかったのかと
悔いは残ります。
でもあの子は大好きなサッカーと一緒に逝きました。
あの子に悔いはないと思います。
皆さんも大好きなサッカー続けてください。
あの子の分まで。

虫けらみたいなちっぽけな僕だけど。
できるだけサッカー続けよう。

コオロギみたいに真っ黒でちっぽけなあの夏。
虫けらだって結構飛べるんだよ。

話したこともない君だけど。
君のおかげで僕も少しは飛べたかな。

ありがとう。
でもサッカーはやめました(苦笑)

完。