コオロギみたいなあの夏に | 注文の多い蕎麦店

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人間は何を食べて命を繋いできたのか?
純粋に生きるための料理を実践し
自然に回帰することで
人間本来の生活を取り戻します。

高校2年の夏だったでしょうか。
毎年恒例サッカー部の夏合宿。

当時の教員は結構先進的な指導方でして。
泊り込んでまで練習するのだから
普段できないことを。

ということで三校同時合宿。
もちろん同レベルのチーム同士。

二流は二流なりにプライドがありまして。
やはり他校の生徒には負けたくない。
いつも以上のアドレナリンが出ますよね。
僕も例に漏れず。

人一倍練習嫌いの僕。
というより人前で必死の姿を曝け出せない。
いつもこう。さらああっと。
クールにというか。
まあそれが二流たる所以だったんですけど(汗)

でもね。
この時は違ったんですよ。
最初はね。クールに行くはずだったんですけど。
いつの間にか初っ端から先頭に立ってしまいまして。
走りこみも、筋トレも、実践練習も。

普段こんなに前に出るタイプではないんですけどね。
何がそうさせたんでしょうね。
今振り返ると。
この僕のエンジン着火。
これがあの悪夢の一因になったのではないかと。

この頃の一般的常識として。
練習中の水分補給はご法度。
もちろん試合中も。

今でこそ熱中症対策として
適度な水分補給がセオリーとなってますが。
当時はまだ精神論が主流。
忍耐力を養うためにぎりぎりの状態まで精神を追い込む。
その極限状態を体験してこそ
更なる体力、精神力が培われれるのだと。

僕も異論はありませんでした。
自分を苛めて苛めて追い詰めたその向こう側。
そこにこそ真の成長が存在すると。
人前では見せなかったんですけどね。
自分なりにそういう風に追い込んでました。

3日目のこと。
この3日間常に先頭に立ち
分不相応なポジションに躍り出た僕。

必然的に他のチームメートもやらざるを得ない。
だって普段しれーっとしてる奴に
負けるわけにはいかないでしょ。
その効果は他校の生徒にも波及し
今までに無く活気ある有意義な合宿に。
ただしそれは先生たちにとってですが・・・

そんな3日目の終了間際。
全員が円陣を組んでの反省会。
教員からの注意や明日の予定。
生徒間の意見交換でやっと一日終了。

お疲れ様でした!!

ばたっ!・・・

ん?何の音・・・?

仰向けに倒れこんだ他校の生徒。

おい!大丈夫か?

返事なし。意識ほぼなし。

きゅ、救急車!!

ま、まじで・・・

ここは人里離れた山の中。
慌てふためく教員たち・・・

続く。