好きこそものの上手なれ | 注文の多い蕎麦店

注文の多い蕎麦店

人間は何を食べて命を繋いできたのか?
純粋に生きるための料理を実践し
自然に回帰することで
人間本来の生活を取り戻します。

人前で笑えない女の子。
どころか人の前に出ると硬直して
何もしゃべれなくなる女の子。

そんな子が以前、勤め先に入ってきました。
よりによってホールのバイトで(汗)

とにかく顔も上げられない。
いらっしゃいませすら出てこない。
極度の人見知り。

何ゆえこのバイトを選んだ(苦笑)

最初はね。そのうち慣れるだろうと。
たかを括ってたんです。
でも一向に改善しない。

こりゃまずいな。
そろそろ店長も我慢の限界のようだ。
そのまま放っておいてもよかったんですけど。

何を隠そう僕も相当な人見知り。
気持ちがわかるだけに
ここで終わってしまうのが忍びなくて。

もしかしたらもう人前で働けなくなるかも。
どこかで踏ん切りつけないと。
そのどこかがここでもいいんじゃないかと。

さりげなく厨房へと引き入れました。
ちょっと人手が足りんから手伝ってと。
あくまでホール失格ということではなく。
ごく自然にさりげなく。

聞けばその子。
某有名料理学校に進学予定とか。
なんだ料理できるんじゃない。
なぜ厨房を選択しなかった(苦笑)

一度ホールも経験しときたかったから。

黙ってるだけでは経験になりません(苦笑)
いったいどうして料理の道を選んだんだ。

自分の作った物で人が笑顔になるのを見るのが好きだから。

できる限り教えてやろうと思いました。
残り時間は少ないが教えられること全て。
残らず伝えてあげたいと思いました。

当時の僕は。
自店舗の営業再開の目処も立たず。
日々の仕事に追われ疲れ果て。
ただ生活のためだけに料理をこなし。
調理技術だけに目を奪われ。
忘れてました。大事なこと。
僕が料理を始めた理由。

自分の作った物を人が美味しいと言って
笑ってくれるのを眺めるのが好きだから。

まったく同じです。

ちゃんと丁寧に教えてあげようと思いました。
僕の経験してきたこと。
将来役立つであろうこと。

そして決めました。
この子が独り立ちしたら自分の城に帰ろうと。
そろそろ逃げるのはやめようと。

本題。好きこそものの上手なれ。

たとえ器用に包丁が使えようと。
たとえ鮮やかに盛り付けができようと。
たとえ愛想よく接客ができようと。

好き。

には勝てません。
好きだからこそ続けられるし我慢もできる。

どんなに接客がぎこちなくても
好きだからこそ必ず伝わる。
楽しく過ごしてほしい。笑顔で帰ってほしい。
そういう気持ちは必ず伝わります。
無理に会話を中断させないよう気を使ったり。
料理のペースは?そろそろ飲み物?
ちょっと空調寒いかな?
マニュアルを器用にこなす人間には
思いつかない心配り。
これこそ好きの醍醐味。

料理も同じく。
どんなに盛り付けが不細工でも。
できるだけ熱いうちに食べてほしい。
綺麗とはいえないが、ぎりぎりまで盛り付け我慢しよう。
お年寄りだから細かく切っておこう。
見た目は貧弱になるがこの方が食べやすい。

こういう気遣い。必ず伝わります。
好きでないとできない。

そんな彼女も料理学校から希望のカフェに就職。
そして近いうちに結婚予定とか。
料理学校で知り合った料理人と。
好きこそものの上手なれ。

あなたが好きになった人と。
あなたが好きな料理を作り出し。
二人の料理が笑顔を作り出し。
その笑顔が二人の幸せを作り出す。
そんな素敵なお店が出来上がるといいですね(笑)

期待しております。おめでとう。