今日は5月の第二土曜日。駅前から続く仲見世商店街の市の日だ。
この日は、商店街の一角にストリートピアノが置かれる。
誰も使っていなかったので弾いてみた。一つ覚えのノクターンNO.2。間違いながら(相変わらず)弾き終えると、ピアノの横のベンチに座っていたおばあさんに「リクエストしていいですか」と言われた。
ひえぇぇぇ。
いや私、弾ける曲は5曲しかないんです(それすらまともには弾けない)。
すると、おばあさんは(「5曲」と言ったのを聞いてくれたはずなのに、なお)「エリーゼのために」と言う。
そしてなんと「エリーゼのために」は、たまたま私のレパートリーの5曲の中にあったのだ。
それで、身の程知らずにも弾いてみた。幸いちょっと間違えただけで(間違うんかい)弾けた。
「まあ、ありがとうございました」とおばあさん。いえいえ、こちらこそ「ありがとう」でした。
2年ほど前、住んでいた茨城の駅ピアノで「今の曲をもう一度」と言われたとき、ちゃんと弾く自信がなくて断ってしまったことの埋め合わせが、やっとできたような気がした。こういうのを「江戸の仇を長崎で討つ」と言う(言わない)。
そのあとしばらくして通りかかったら、女子高校生がノクターンNO.2を弾いていた。
ピアノの置いてあるのは、市内で一番大きな書店だったところの前。私がこのまちに帰って来てもいいと思った理由のひとつは、この書店があるからだった。それが、2年ほど前に店じまいしてしまった。
この書店は文庫本のスペースが広く、海外文学も、ハヤカワSF文庫もたくさんあった。そして、私がずっと愛読している岩波少年文庫も児童書コーナーの書架一つ分くらいはあったのだ。今、そのへんの本屋に行っても、岩波少年文庫は10冊くらいしか置いていない。全然ないところさえある。
アマゾンで買うのは簡単だけれど、本は、やはり手にとってぱらぱら読んで、それから買うかどうか決めたいと思うのだ。
書店はなくなり、連休中にこんなところがオープンしていた。
キン肉マンミュージアム。
男の子が、爪先立ってガラスに描かれた絵の隙間から中を覗き込んでいる。
「キン肉マン」というと、大量のフィギュアの消しゴムが頭に浮かぶけれど、実はあまり読んだことはない。格闘技の漫画だと、全然系統は違うけれど私はこれがけっこう好きだった。
小林まこと作 「1・2の三四郎」 講談社
最初は絵柄がもうひとつ合わないと思ったけれど、連載が進むにつれてどんどん上手になっていった(たいへん失礼な言い方)。連載していた時期は「キン肉マン」と同じころで、やはりこのころ古舘伊知郎さんのプロレスの実況中継が面白くて、世の中格闘技ブームだったような気がする。
商店街に「みちくさ」という少女の像があった。
みちくさというより、うたたねしているように見える。
商店街というのは、みちくさでできているのかもしれない。
あ、ピアノ、と思って弾いてみる。こんな店ができてる、とのぞいてみる。逆に、あれ、ここは閉店しちゃった、としばらく立ち止まる。
「道草」というのは、馬が足を止めて道端の草を食べるので余計な時間をくってしまう、というところからきていると聞いたけれど、本当だろうか。
私は、実際に道端の雑草を見ては写真に撮ったりするので、正真正銘の「道草」をしている。
ストリートピアノではなく、ストリート猫。
ぎりぎり近づいて写真を撮らせてはくれるけれど、撫でさせてはくれない。(ピアノだったら触るくらいのことはできるのだけれど)
帰りに通った公園には、食べ物やアクセサリー、洋服などのテント店が出ていた。値段を見て、ここでは道草しないで帰った。