先月のブログ「寄り鳥緑 野鳥と野草」に、『家なき娘』のことを書いた。
主人公のペリーヌが、バンの卵を食べる案外たくましい少女だということだった。
その、子どものころ読んだ『家なき娘』が出てきた。
今日、荷物の片付けをしていて(まだまだ片付けなくてはならないものがあるのに、我ながら毎日何をやってるんだと思う)ものに隠れて見えなかった本棚のすみで見つけた。
この全集の『クオレ』と『アルプスの少女』がまだあるのはわかっていた。これも残っていたのか。このほかの数十冊はどこへいったのだろう。
先のブログに書いた無人の小屋で、ペリーヌが友人のロザリーを招いてバンの卵そのほかをふるまう場面。右がペリーヌ。ロザリーは、今まさにバンの卵(ゆで卵と思われる)の殻を剥こうとしている。
挿絵は加藤まさをさんという方。どことなく日本的な可愛い少女になっている。
調べてみてびっくりした。加藤まさをさんは静岡県藤枝市出身の画家・詩人で、なんと、あの
「月の沙漠」を書いた人だったのだ。(私は、かなり長いこと「月の沙漠」を月世界の歌だと思っていた。月面の砂の上を宇宙人?の王子と姫がラクダのような何かに乗っていくのだ、と)
「卵」と表記すると、食用ではないように感じることに気づいた。食べるなら「玉子」なのではないだろうか。カマキリの「玉子」とは書かないし。
この本の中では「ばんの卵」という表記になっている。「黒いまだらのある白い卵が十も(巣の中に)入っている」とも書いてある。バンは5個から9個くらいの卵を産むらしい。そして、托卵される場合もあって、最大20個くらい抱卵することもあるそうなので「十も」あってもいいのかもしれない。
けれど、自然の中で巣からとってきた卵はいつ産まれたものかわからない。ベトナムには、ホビロンという孵化しかけのアヒルの卵を茹でた料理があるというけれど、ペリーヌにしても、楽しみに殻を剥いたら中には茹だったヒナがいた、ということもあるのではないだろうか。
井上ひさしの小説で、日本人が生卵を食べることを野蛮だというフランス人宣教師が、ヒナになりかけた卵を知らずに茹でてしまったときは喜んで食べるという場面があった。ペリーヌもフランス人だから、ヒナならヒナで嬉しくいただくのかもしれない。
私は物語の中の食べ物の描写はなんでも好きだ。本来食いしん坊なのかもしれない。だから、いろいろな物語の、ものを食べる場面が記憶に残っているのだと思う。
本の扉を開けてすぐのカラー口絵。三つ折りになっている。このシリーズには、全てこういうカラー口絵がついていた。
本の奥付を見ると、これが昭和28年3月15日に出版された第七版だということがわかる。
71年前の本なのだ。
そのころの二〇〇円は、安くはなかったのではないかと思う。
奥付の裏に、全集の作品が載っている。
全部が揃っていたわけではないと思う。全然覚えのないものもある。
この本が入っていた祖父の本箱もきれいに治さなくては。
そのためには、スペースを空けなくてはならない。そのためには片付けなくてはならない。
この世界名作全集と一緒に本箱に入っていた、世界童話全集はほぼ全て残っている。また一緒にあの本箱におさめたい。(そのためには片付け……)