昨日は4月1日。エイプリルフールだった。
何かホラを吹こうと思っていたのに、(根がまじめなせいか)うっかり忘れていた。
6歳上の長姉は大ボラ吹きだった。
私が5、6歳のころ、6歳年長というのはほとんど大人だったから、私は「おねえさんのいうことは正しい」と思っていたために、よくだまされた。
家の脇にネコヤナギがあって、銀色の柔らかい毛の生えた丸い芽がたくさんついていたころ。
※写真は https://forest17.com/ 無料写真素材「花ざかりの森」 さんからお借りしました。
ホラ吹き姉は
「これを綿に包んでマッチ箱に入れておくと、小さい猫が生まれるよ」
と言った。
私は銀色の芽を大事に綿に包んでマッチ箱に入れ(当時はマッチの空き箱はたいていの家にあった)小さい猫が生まれるのを楽しみに待っていた。
けれど、銀色の芽はどんどんつやがなくなり、しなびてしまったのだ。それを見て姉は
「あ〜あ、こ〜ろしちゃった、こ〜ろしちゃった」
と囃したてたのだった。
私は、自分が大事にしなかったからネコヤナギの子猫を死なせてしまったんだと思って、罪悪感でわんわん泣いた。
姉は「ネコヤナギから猫が生まれるわけないでしょ、バカだね」と私にとどめを刺した。
同じころ。
庭で大きなナメクジを見つけたので、アイスクリームのカップに入れて飼おうと思った。
そこでホラ吹き姉に(懲りもせず)ナメクジって何を食べるの、と聞いたのだった。
姉は「お塩」と答えた。
そうか、アリならお砂糖だけれど、ナメクジは塩なのか、と私はナメクジにたっぷり塩をやった。
悲惨なことになった。
ホラ吹き姉は「ナメクジなんか飼われちゃたまんないもの」と言った。
こんな幼少期を過ごして、私の人格が歪まないはずはない。
すっかり大人になって、ホラ吹き姉に、小さいときあんなことを言われた、こんなことも言われた、と言っても「あら、そんなことあったかしら」とさらりと流されてしまうのだ。
この写真は前にも載せたことがある。
やはり同じころ、この花を道端で見つけてホラ吹き姉に、これなんの花? と聞いた。(我ながら本当に学習しない)
姉は「エルサレムの星」と答えた。
その名前を、カトリック系の幼稚園に通っていた私はすんなり受け入れた。そして、疑いもせずに半世紀以上「この花はエルサレムの星」だと思っていた。
あるとき、姉に聞かされた数々のホラを思い出して(ここに書いた以外にも多々ある)ふと、あの花は本当にエルサレムの星なのだろうか、と疑念がきざした。(遅すぎる)
今は、ホラ吹き姉に聞くのではなく、インターネットで調べることができる。尤も、インターネットの情報も全て正しいわけでもないらしい。
結局「エルサレムの星」という植物は存在していなかった。あったのは「ベツレヘムの星」で、花は微妙に違っていた。私が人生の大半にわたって「エルサレムの星」だと信じていたのは、一般的には「ハナニラ」と呼ばれる植物だった(写真はハナニラ)。ハナニラの別名として「ベツレヘムの星」と書いてあるサイトもあったけれど、ベツレヘムであってエルサレムではなかった。
本当の(と言っていいか)ベツレヘムの星は、和名を「オオアマナ」といって、雄しべがくっきりと立ち上がって花の中心にもうひとつ小花が咲いているように見える。
この花に関しては、ホラ吹き姉のホラだったのか、姉がエルサレムとベツレヘムを勘違いしていたのか、ついでにハナニラとオオアマナも取り違えていたのか、今も判断できないでいる。