話しかけられる | 東四ヶ一の庄

東四ヶ一の庄

実家を離れて40数年。もう帰ることはないだろうと
思っていたこのまちに戻ってきました。
「東四ヶ一の庄」とは、私の愛読書『ホビットの冒険』
『指輪物語』の主人公の家があるところです。

雨が降っているけれど気温は高く、昨日はあまり歩く機会がなかったので、出かけてみた。

普段は行かないスーパーに行ってみようと思った。しばらく前に一度だけ行ったことがある。

うちからだと、片道1.5㎞くらいだろうか。

 

ここへ行く途中に、母が最後までお世話になった介護施設がある。そこまでは、よく通った道だ。

 

特に何を買うという目的もなくスーパーに行って、どんなものがあるのかな、いくらくらいかな、と思いながらカゴを持ってうろうろするのがわりと好きだ。

「コレを買いに来た」と、さっと目的のものを手にして、さっさと会計をすますタイプの人には嫌われるだろう。店の人には、もしかしたら不審者としてマークされるかもしれない。

 

「昔ながらの野菜コロッケ」というのを、とても安く売っていた。

手にとって見ていると、突然近くにいた初老の男性(通称「おじさん」)に話しかけられた。

「ここのコロッケ、安いでしょ」

はあ、そうですね。いいのかなあ、と思っちゃいますね。

「これがね、すぐに売り切れちゃうんだ。売り場こんなに広くとってあるのにね、すぐ売れちゃう」

人気商品なんですねえ。

「ほんとに、すぐ売り切れなんだよ」

そのおじさまのカゴの中にも、コロッケがすでに入っていた。私もひとパック買ってみた。

 

一昨日も高齢の女性(通称「おばあさん」)に話しかけられた。

前に住んでいた茨城県北部では、こんなに短期間に2回も知らない人から話しかけられたことはない。地域性だろうか。

 

そういえば二十年ほど前、京都の美術館でやはりおじさんに話しかけられた。モディリアニの絵を見ていたときだ。両手を重ねて、ちょっと首を傾げたモディリアニ独特の細長い女性。

「この女の人、『私、今日お金ないで出かけんと家におるわ〜』てな顔してまんな」

そのとき、私はなんと答えたのだったろう。モディリアニの絵について、こういうコメントは初めて聞いたような気がする。(私はモディリアニけっこう好き)

 

やはり京都の喫茶店で。昼食に何を食べようか、メニューを見ていたときのこと。

「口出すこっちゃないけど、この店はクリームコロッケがうまいんでっせ」

食べ終わって支払いに行くらしいおじさん。私のテーブルの横を通り過ぎるとき、メニューをちらりと指差してそう言った。

あ、そうですか、ありがとうございます。と、私はクリームコロッケランチを頼んだ。確かに美味しかった。

 

もしかしたら、西へ行くほど「話しかけ指数」は高くなるのだろうか。

今住んでいるのは、日本のちょうど真ん中へん。「話しかける人」と「話しかけない人」、両方が住んでいるのだろう。(って、考えてみれば(みなくても)どこでもそうか)

 

帰って、コロッケと「本日のお買い得品」だったキノコを冷凍した。

 

歩いている途中、いろいろものが置いてある空き地の、差掛け屋根の下の物置の前に猫がいた。(肉球を上にして前足を差し出したら「雨はまだやまんのか」という風情だった)この猫の遠縁にはノルウェイジャンフォレストキャットがいたかもしれない。

岩合光昭さんではないけれど「今日もよい猫に出会えた」。