家から歩いて5分ほどのところに狩野川(かのがわ)が流れている。
小学校は狩野川のすぐ横にあった。「ふるさと」という歌を習ったとき、クラスの何人かは
「うさぎ追いし かの山 小鮒釣りし『かのがわ』」
と歌っていた。わざとではなく、本気で勘違いしていたのだと思う。
小鮒がいるかどうかはわからないが、何やら巨大な魚がたくさんいるのは確かだ。鯉ではないかと思うけれど、なんとなくスタイルの違う魚もいて、それはボラらしい。(とても大きいので「大ボラ」かもしれない)
もうすぐ3才になる頃だったはず。台風一過のよく晴れた日だった。私は母と橋を渡っていた。台風のあとで、川は増水していた。見ていると、上流から大きな豚がどんぶらこどんぶらこと流れてきたのだった。
このときの台風で、上流にはかなりの被害があったと後に知った。上流には養豚を営む人たちが住んでいた。
豚は完全に死んでいて、私がいる橋の橋げたにひっかかって、草の束と一緒に優雅に橋げたのまわりをめぐり、またどんぶらこと川下に流れていった。
あの豚は港まで行くのか、港まで行ってもやってある船と並んで浮かんでいるのか、と私は思った。
台風の記憶はまったくないけれど、この豚のことは覚えている。もしかしたら、一番古い記憶かもしれない。
いつだったか、このことを職場の同僚に話したら「その豚、ひきあげたら食べられたんじゃないかしら」と言われた。感じ方は様々だ。
川に行くと、いつも何かが見つかる。
昨日はコサギの群を見た。(コサギだと思う)
チュウサギやダイサギと違って、黄色い足に黒い嘴。知り合いに歩く鳥類図鑑のような人がいるけれど、静岡に来てしまったので、ちょっと聞いてみるというわけにいかなくなった。