そばにいて

 

 

16.好きな人がいるんです 1

 

 

 

 「あっ、マミだ。ふーん。やっぱ、マミと吉永のウワサは本当だったんだ」

  ミコが優花の前に割り込むように立ち、今バッタリ出会った二人を好奇

 の目で見る。

 「ミコ……。どうして優花が一緒にいるの? あなたたち、仲良かった? 」

  麻美が自分のすぐ後ろにいる吉永君を確認するようにちらっと見た後

 またミコの方を向く。するとすかさずミコが答える。

 「まあね。今日から仲良くなった感じ? ふふっ。これから石水さんとヒロの

 記念パーティーなんだ」

 「記念パーティー? 何、それ。ねえ、優花、どういうことなの? 」

  顔色を変えた麻美がミコを横に押しのけて優花に訊ねる。

 「そ、それは……」

 「つまり、俺と……えっと、なんだっけ。そうそうゆうかちゃんの、記念すべ

 き初デートのパーティーってこと。あんた、ゆうかちゃんの友だち? なら

 全然オッケー。一緒にカラオケ行かねー? なんならそこのカレシも一緒に」

  突然ヒロが話に加わってきた挙句、まるで麻美と吉永君に見せ付けるよ

 うに、優花を横から抱き寄せる。

 「は、離して! 広川君、やめて。お願いだから……」

  ヒロから離れようと必死でもがくも、びくともしない。動けば動くほど、背中

 から回されたヒロの手が優花の右腕の上の方をがっしりと捉えて離さない。

  吉永君が見ている。とても冷やかな目で、じっと優花を見ていた。

  優花はいたたまれなくなり、顔を背ける。

  ああ、お願い。麻美も吉永君も、早くここから立ち去って欲しい。もうこれ

 以上、こんなみじめな姿は見られたくない。ヒロは全くの他人なのに……。

 「なんでそんなに嫌がるんだよ。なあ、別にこれくらいいいだろ? だって

 俺とゆうかちゃんの仲だものな。な、ゆうかちゃん? 」

  ヒロの顔が優花の目の前数センチのところまで迫ってくる。

 「いや、やめて! 」

  と優花が口走ったのと、ほぼ同時だった。俺、もう行くよ、それじゃあ……

 と吉永君が麻美に言い残し立ち去ったのは。

  麻美が去って行く彼の後ろ姿を見ながら呆然と立ちすくんでいる。

  ヒロから逃れることに成功した優花は、麻美に近付き小さい声で伝える。

 「マミ、お願い。このことは絵里には言わないで。それに、あの広川君は、わた

 しとは何の関係もないの。ふざけてるだけ。ね、信じて」

 「わかってる。あの男の人が優花の好きになるタイプじゃないってことくらい

 見てればわかるよ。でもどうして優花がサリたちといるの? 」

 「それは……」

 「なら、今すぐ、あたしと一緒にここから逃げよ。その方がいいんでしょ? ね

 優花? 」

  歯切れの悪さを不審に思ったのか、麻美がこの場から優花を救い出そうと

 するかのように、手を差し伸べてくれる。

  でも、そうはいかない。

 「それが、だめなの。このあとちょっとだけ、一緒に遊ぼうって、約束したから。

 それよりマミはいいの? 吉永君、行っちゃったよ? 」

 「あ、うん……」

 「デート中だったんじゃ……」

  ここで出会わなければ、二人をバラバラにしてしまうこともなかったのにと

 麻美に対して、申し訳ない気持ちになる。

 「デート中っていうか、その、まあ、いろいろと」

  すっかり元気を失くしてしまった麻美があいまいにうなずく。彼女を置き去り

 にして吉永君が行ってしまったからに違いない。それもこれも、すべて自分の

 せいだと、優花は自己嫌悪に陥る。

 「早く吉永君のところに行った方がいいよ。マミ、ありがと。わたしは心配いら

 ないから」

 「優花……」

 「マミ、早く行って。でないと、追いつかなくなっちゃうよ」

  優花は一向にここから動こうとしない麻美の腕を揺する。大丈夫だから早く

 行ってと繰り返しながら。

 「あんたたち、何こそこそやってるの? マミ、あんたもカラオケに一緒に来るの?

 どうするのよっ! 」

  サリが乱暴に言葉を投げつけるように言った。

 「あ、あたしは……」

 「あっそう。なら、また明日ね、バイバイ! 石水さん、マミは帰るって言ってん

 だから、もたもたしないで早く行こ! 」

  サリはまるで麻美を邪魔もの扱いにでもするようにそっけなく手を振り、追い

 返した。そしてまた優花の腕をぎゅっと引き寄せ腕を組み、ずんずん歩いて行く。

  優花は出来る限り明るい笑顔を作って振り返り、麻美にまた明日と言った。

  力なくバイバイと手を振り返してくれた麻美は、今にも泣きだしそうな顔をして

 その場から動こうとしなかった。

 

 

 

 

 

 

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