そばにいて
15.ミコとサリ、そして、ヒロ 1
「あたしたちさあ、鳴崎と同じクラスのミコとサリ」
あんた、ウチのクラスの才女マミと友だちだよね、と言いながら
二人組の女子が靴箱の後ろから姿を現した。
体育の授業が一緒だから、顔は知っている。
「マミは親友だよ」
「あははは。やっぱそうなんだ。で、そのマミがあんたのクラスの
吉永と付き合ってるってウワサだよね? 」
「うん、まあ……」
「ってことは。所詮、女の友情なんて見せかけのものなんだからさ。
吉永の上を行く男っていえば、後は鳴崎くらいしかこの学校には
いないし」
「…………」
いったいこの人たちは何が言いたいのだろう。優花が勇人君と
親しいのは、そんな理由じゃない。どうして麻美に対抗しないと
いけないのか理解に苦しむ。
「何とか言ったらどうなの? それともさあ、あたしの言ったことが
図星すぎて、何も言い返せない、とか? 」
「わたしは、その……。あなたたちが何を言ってるのかよくわから
なくて。いったい、どういうことなの? 」
優花はすがるような気持ちで二人に訊ねる。
「どういうことなの、だって。ねえ、サリ。今の聞いた? この子
とぼけてるし。あのね、あんたが抜け駆けするから、こっちは迷惑
してるって言ってんの。サリはね、どういうわけかあのおぼっちゃま
鳴崎が気に入っちゃってさ。あたしは正直苦手なタイプなんだけどね。
やだ、ホントのこと言っちゃった。サリ、ごめん……」
背が高くてショートカットのミコが両手を合わせてサリに謝った後
ペロッと舌を出す。
「ミコったらひどいーー。あとで覚えておきなよ! でもこの女の方が
もっとタチが悪いし。何が勉強教えて、よ。鳴崎君が誰にでも優しい
からって、いい気になるんじゃないっつってんの! 」
ミコを押しのけるようにして、マスカラをたっぷり付けたまつ毛を揺ら
しながら、ありえないほど大きな目をしたサリという人が迫ってきた。
優花はあまりの威圧感に後ずさる。
「だ、か、ら……。ねえ、石水さん。あたしたちの言いたいこと、わかる
でしょ? 」
今度はミコが威嚇するかのように肩を怒らせて、迫ってくる。
「わ、わからない……」
優花は小刻みに首を横に振った。
「あんた、バカじゃない? さっきから何度も言ってるでしょ? 鳴崎に
近寄るなって! そんなこともわからないなんて、この子相当重症だわ。
サリ、どうする? 」
「ミコ、この子はちゃんと言ってやんないとわからないクチよ。今まで
黙って泳がせてたけど、もう我慢ならない。なにさ、そのやぼったい顔。
かわいいかどうか知らないけど、そんなんでカレに取り入られたんじゃ
こっちだって黙っちゃいらんない。二度と鳴崎君にベタベタ話しかけ
ないで。いい? わかった? 」
サリがとがったあごを突きだし優花に向かって言い捨てる。
「さ、サリさん、誤解だよ。わたし、その。鳴崎君とはそんなんじゃない。
同じ部活だし中学も同じだったから他の男子よりはちょっとだけ仲が
いいだけ。取り入ろうだなんて、そんなこと考えたこともない。信じて」
優花はいつの間にか勇人君のことを苗字で呼んでいる自分に驚く。
でもここで勇人君などと呼ぼうものなら、ますますこの人たちを怒ら
せてしまいそうだ。ここは最新の注意を払う必要がある。
「本当に何もないの。鳴崎君はただの同級生だから」
優花は身振り手振りも交えて釈明を繰り返すのだが。
「サリ、この子言い訳に必死だけど。どうすんの? 」
「ふん、そんなの信じられるわけないし。ちょっとだけ仲がいいだけ?
ただの同級生? はあ? よくもぬけぬけとそんなことが言えるね。
あんたのその甘えたような態度が、鳴崎君の気を惹こうとしてるん
だってことに気が付かないの? 」
サリの怒りは収まらない。思い込みもここまでいけば優花にはなす
すべが見つからない。
「じゃあ、サリさん。わたしはどうすればいいの? 鳴崎君と何でもない
ってこと、どうやったら信じてもらえるの? 帰る方向が同じだから、た
まに一緒に帰ってただけだし、もちろん他の部員も一緒にいたし。それ
に、それに……。鳴崎君は……」
麻美のことが好きなんだ、と言いかけて優花は慌てて口をつぐんだ。
これを言ってしまうとますます事態は悪化の一途をたどるだろう。
どうすればいい? 彼女たちにわかってもらえる方法を模索するが
何一つ手立てが見つからない。
「何よ、はっきり言いなさいよ」
「それは……」
「ほらね、それ以上言えないじゃない。やっぱりあんた、鳴崎君のことが
好きなんでしょ? 」
「違う。本当にそんなんじゃないって。わたしが好きなのは鳴崎君じゃ
なくて……」
「ねえ、サリ。あたしにいい考えがあるんだけど……」
鳴崎君じゃなくて、吉永君だよ……と言えないままミコが話しの途中で
割り込んで来た。いい考えって、何? 優花はますます不安に駆られる。
声をひそめたミコがサリの耳元でこそこそと話す。
「ね? いい考えだと思わない? それなら、この子が鳴崎のことが好きか
どうか証明できるし、もし好きだったとしてもこっちで監視できる」
「うーーん……。どうしよかな。ヒロが何て言うかな? あいつの趣味とは
違うような気がするけど」
「大丈夫だって。この子だって、ちょいとメイクすれば、あたしたちよかずっと
上物っぽいしさ」
次第に二人の会話がはっきりと聞き取れるようになり、とんでもないことに
巻き込まれそうになっているのが明確になる。
「これからちょっと寄るところがあるんだけど。石水さん、あんたも来て」
ミコがニヤリと笑いながら優花の腕をつかんだ。
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