そばにいて
13.夕焼け空の下で 2
「吉永君が、どうかしたの? 」
錆び付いたブランコに腰を下ろしゆっくり揺らしながら、隣で同じように
ブランコに座っている勇人君に訊ねた。
「夕べ、あいつが急に家に来てさ、僕のクラスの大園のことを教えてくれ
って言うんだ。一学期に僕が委員長で大園が副委員長だったから、いろ
いろ知ってるだろって思ったみたいでさ。で、なんでそんなことを訊きたい
んだ、って不思議に思ったわけ。だって、真澄と大園は同じ部活だし
わざわざ僕に訊かなくても、そっちで話せば解決するんじゃないかと考え
たんだけどね」
「う、うん。そうだよね、確かに……」
「あいつの歯切れがどうも悪いんだ。長年の付き合いだから、あいつの
異変くらい、すぐにわかるさ。彼女のことを訊いていったい何がしたい
んだと、僕も不信感を持った。で、あいつを問いただしたんだ。そしたら
ゆうちゃんのためだって言ったんだ。なあ、ゆうちゃん、それってどういう
ことなんだ? 僕にわかるように説明してくれよ。ゆうちゃんは大園とは
確か親友同士だろ? 」
「そうだけど……。でも吉永君、どうしてわたしのためって、そんなこと
言ったのかな。マミに代わって彼女の気持ちを吉永君に伝えたのは
わたしだけど。でもね、吉永君もマミのこと、悪く思ってないみたいだった
し、付き合うって言ってくれたから、よかったなあって、そう思ってたんだ」
勇人君に促されるまま、昨日のことを正直に答えてしまった。
「そうか……。大園はやっぱり真澄のことが好きだったんだ。熱心に
陸上部のマネージャーやてるもんな。前からそんな気はしてたんだけど
ね……。なあ、ゆうちゃん。新学期早々に進路希望調査出しただろ?
僕、なんて書いたと思う? 」
「ええ? わかんないよ、そんなこと。でもはやと君はむかし、研究者に
なりたいって言ってたよね。ノーベル賞取るんだって」
「ああ、そんなことも言ってたな。大昔の話だけどね。でも、もうはっきりと
目標が定まったんだ。医者になるってね。大園が行くと決めている大学の
医学部を、僕も書いて出したんだ」
「は、はやと君……。それって、もしかして」
「うん。僕は……。大園麻美が好きなんだよ」
優花は目を丸くして勇人君を見た。今まで気づきもしなかった彼の爆弾
発言に、危うくブランコから落ちそうになるところだった。麻美もこの真実は
知らないだろう。
「はやと君。吉永君はそのこと知ってるの? 」
「知らないよ、多分……。あいつとはあまりそういった話はしないんだ。
向こうは陸上のことしか頭にないし、僕も自分のボランティア部のことしか
話さない。男同士なんて、大概そんなもんさ。女子は好きな男の話とか
いつもやってそうだよな」
「そうだね。そういった話をしてる子は多いかも。でも、わたしはあまりしな
いかな。だって、恥ずかしいし」
そうだ。優花は吉永君への想いを絵里以外には誰にも話していない。
「ふーん、そうなんだ。でも僕はゆうちゃんは真澄のことが好きなんだって
思ってたし、真澄だってゆうちゃんのことが好きで、二人は両想いだって
そう思ってた。だからバスの中で仲良く並んで座ってた時、やっと付き合い
出したんだって、マジで応援しかけてたんだけどね。真澄は表面上否定
してたけど、僕にはそうは見えなかった」
「はやと君、そ、そんなわけないよ。両想いだなんて、絶対にないってば」
何てことを言うのだろう。せっかく沈静化していた心臓がまた暴れ出す。
子どもの頃はさておき、中学生以降は吉永君と仲が良かったことなんて
一度もないのに、どうしてそんな風に思われるのか不思議で仕方がない。
誰にもこの不毛な片想いがバレないように、しっかりと隠してきたつもり
だったのに。どうも無駄な行動だったようだ。
「そうだよな……。ゆうちゃんは真澄のことを何とも思ってないから、大園
の気持ちを伝えてやったんだよな。でも真澄は絶対にゆうちゃんのことが
好きだと思う。これ僕のカン。結構当たるんだけどな」
残念ながら今回の勇人君のカンは当たらなかったようだ。もし吉永君が
優花を好きであるなら、夕べみたいにひどいことを言ったりしないはずだ。
好きな女の子に向かって、あそこまでの絶縁状を叩きつけたりはしない
だろう。
クリックでの応援
よろしくお願いします
↓↓
Copyright (C) since 2008 Mayuri Ohira, All rights reserved
