序章  その1  その2   その3   その4 その5


その6 その7 その8 その9(完結)





ゆうすけが助産婦さんに呼ばれた。

火葬をいつするかということだったらしい。今日だと15時までの受付。明日は友引なので火葬場が閉まっている。明後日か今日か。

今日は入院が決まっていたので、私はいけない。じゃあ、明後日に。そう言ったとき、母たちが反論した。

「お姉ちゃんは行かなくてもいいんじゃないか」

「エリちゃんは行くことない。私とゆうすけで行ってくる」

二人がどうしてそんなことをいうのか、私にはわからなかった。

私が行かないでどうするんだ。という気持ちだった。



でも、二人の考えは違った。

「エリちゃんは、これからのことだけ考えればいい。今日のことは早いうちに忘れたほうがいい。できるだけ映像として残らないほうがいい。後々の回復に支障が出る。前だけをみて、自分の体のことだけでいい」

明後日になると、ゆうすけと私の二人だけ。二人で火葬場というのも辛い。母たちがいる間にお願いしたほうがいいような気がした。そして火葬は今日にしてもらうことには納得した。

でも、赤ちゃんは見ておきたい。

私は母たちに伝えた。



そしたら、母たちは目に涙を浮かべて

「エリちゃんは見ないほうがいい。イメージとして残ってしまうから。後で絶対に辛くなる。気持ちはすごくわかる。だけど、見ないほうがいい」

母もゆみちゃんもゆずろうとしない。

こんなこと、忘れられるわけがないけれど、少しでも早く立ち直ることが大切。嫌なものは見ることない。辛い思いはすることない。できるだけ早く忘れる方がいい。



ゆうすけは心配そうにみていた。

私が見たいという気持ちを先に伝えていたから。母たちに押し切られような形になっているこの状況を、ゆうすけは良く思っていないようだった。

「エリはそれでいいの?」

ゆうすけに聞かれたとき、正直私にはわからなかった。見たい気持ちはある。でも見た後自分はどうなるのか。確かにショックを受けるだろう。イメージが強く残って、引きずるかもしれない。だけど、見ないことを後悔する。そういうイメージも沸いてこなかった。

経験豊富な母たちが、見ないほうがいいというなら、それが正しいんじゃないかと思った。

第一、 この状況で自分がまともな結論を導きだせているとは、思えなかった。



「わかった。見ないことにする」



言葉にした瞬間、もう会えない。ここで本当に終わり。

そういう気持ちが溢れた。また涙がわっと出て、しばらく泣いた。