ゆうすけが助産婦さんに呼ばれた。
火葬をいつするかということだったらしい。今日だと15時までの受付。明日は友引なので火葬場が閉まっている。明後日か今日か。
今日は入院が決まっていたので、私はいけない。じゃあ、明後日に。そう言ったとき、母たちが反論した。
「お姉ちゃんは行かなくてもいいんじゃないか」
「エリちゃんは行くことない。私とゆうすけで行ってくる」
二人がどうしてそんなことをいうのか、私にはわからなかった。
私が行かないでどうするんだ。という気持ちだった。
でも、二人の考えは違った。
「エリちゃんは、これからのことだけ考えればいい。今日のことは早いうちに忘れたほうがいい。できるだけ映像として残らないほうがいい。後々の回復に支障が出る。前だけをみて、自分の体のことだけでいい」
明後日になると、ゆうすけと私の二人だけ。二人で火葬場というのも辛い。母たちがいる間にお願いしたほうがいいような気がした。そして火葬は今日にしてもらうことには納得した。
でも、赤ちゃんは見ておきたい。
私は母たちに伝えた。
そしたら、母たちは目に涙を浮かべて
「エリちゃんは見ないほうがいい。イメージとして残ってしまうから。後で絶対に辛くなる。気持ちはすごくわかる。だけど、見ないほうがいい」
母もゆみちゃんもゆずろうとしない。
こんなこと、忘れられるわけがないけれど、少しでも早く立ち直ることが大切。嫌なものは見ることない。辛い思いはすることない。できるだけ早く忘れる方がいい。
ゆうすけは心配そうにみていた。
私が見たいという気持ちを先に伝えていたから。母たちに押し切られような形になっているこの状況を、ゆうすけは良く思っていないようだった。
「エリはそれでいいの?」
ゆうすけに聞かれたとき、正直私にはわからなかった。見たい気持ちはある。でも見た後自分はどうなるのか。確かにショックを受けるだろう。イメージが強く残って、引きずるかもしれない。だけど、見ないことを後悔する。そういうイメージも沸いてこなかった。
経験豊富な母たちが、見ないほうがいいというなら、それが正しいんじゃないかと思った。
第一、 この状況で自分がまともな結論を導きだせているとは、思えなかった。
「わかった。見ないことにする」
言葉にした瞬間、もう会えない。ここで本当に終わり。
そういう気持ちが溢れた。また涙がわっと出て、しばらく泣いた。