11時すぎ
母が病室に入ってくるのが見えて、力が抜けた。
・・・と同時に衝撃が走った。
ゆみちゃんがいる!!
旦那がゆみちゃんと母に連絡。ゆみちゃんが車を運転し、母と一緒に高速で来たらしい。
正直、母には会いたかったけど、ゆみちゃんには会いたくなかった。
・・・というより、顔を合わせられないと思っていた。
ゆうすけの赤ちゃんを死なせてしまった。
あんなに喜んでくれてたのに。目の端にゆみちゃんの姿をとらえながらも、直視はできないでいた。
「お姉ちゃん・・残念だったね・・辛かったね・・」
来る途中でも泣いてたんだと思う。真っ赤な目で涙を流す母。
少し落ち着き始めていた私も、またわっと涙がこぼれた。
ゆみちゃんも泣いてる。
縁がなかったんだよ。自分を責めちゃだめだよ。大丈夫、次があるから。
ゆみちゃんは私の足をさすりながら、何度も繰り返し言ってた。
ゆうすけも泣いてた。
ひとしきり、みんなで泣いたあと。
いつまでも泣いてちゃだめ。早く体を戻して、次を頑張ればいい。まだ若いんだから、いくらでもチャンスはあるから。
それにしても、神社でお祓いをした直後。結婚式の2週間前に骨折したときも神社でお参りした後。神社と相性が悪いのかも。そんな冗談が出るくらい。不思議なほどなごやかな雰囲気に。
みんな、私を元気付けようとすごくムリして、楽しくさせようとしてる感じがした。でも、私もそれに乗っかりたかった。
早く乗り越えたいと思っていた。
落ち着いたら、トイレに行きたくなった。
病院のパジャマを借りて、着替えて、トイレへ。自分で歩いて行った。
さっきまで全然痛くなかったのに。歩くと一歩ごとに痛みが襲った。
お尻や足の付け根が響くように痛い。それでもさっきまでに比べればなんてことない。
頑張ってトイレまで行った。
巨大なナプキンには、大量の血がついてた。流産したんだ。
って現実を見た気がした。
でも、それで悲しくなって泣くことはなくなってた。
トイレの前は、ナースステーション。
生まれたばかりの赤ちゃんたちが、寝てる。
ゆみちゃんは、みんなが使うトイレなんだから、もっと病室側に作ればいいのに。配慮が足りなすぎる。ってすごく怒ってた。
実は私もちょっと辛かった。
でも、ゆみちゃんがすごく怒ってくれたからか。その後何度かトイレに行くことになったけど、あまり気にならなくなった。