序章  その1  その2   その3   その4 その5


その6 その7 その8 その9(完結)




11時すぎ

母が病室に入ってくるのが見えて、力が抜けた。

・・・と同時に衝撃が走った。

ゆみちゃんがいる!!

旦那がゆみちゃんと母に連絡。ゆみちゃんが車を運転し、母と一緒に高速で来たらしい。

正直、母には会いたかったけど、ゆみちゃんには会いたくなかった。



・・・というより、顔を合わせられないと思っていた。

ゆうすけの赤ちゃんを死なせてしまった。

あんなに喜んでくれてたのに。目の端にゆみちゃんの姿をとらえながらも、直視はできないでいた。



「お姉ちゃん・・残念だったね・・辛かったね・・」



来る途中でも泣いてたんだと思う。真っ赤な目で涙を流す母。

少し落ち着き始めていた私も、またわっと涙がこぼれた。

ゆみちゃんも泣いてる。

縁がなかったんだよ。自分を責めちゃだめだよ。大丈夫、次があるから。

ゆみちゃんは私の足をさすりながら、何度も繰り返し言ってた。

ゆうすけも泣いてた。





ひとしきり、みんなで泣いたあと。

いつまでも泣いてちゃだめ。早く体を戻して、次を頑張ればいい。まだ若いんだから、いくらでもチャンスはあるから。




それにしても、神社でお祓いをした直後。結婚式の2週間前に骨折したときも神社でお参りした後。神社と相性が悪いのかも。そんな冗談が出るくらい。不思議なほどなごやかな雰囲気に。



みんな、私を元気付けようとすごくムリして、楽しくさせようとしてる感じがした。でも、私もそれに乗っかりたかった。

早く乗り越えたいと思っていた。




落ち着いたら、トイレに行きたくなった。

病院のパジャマを借りて、着替えて、トイレへ。自分で歩いて行った。

さっきまで全然痛くなかったのに。歩くと一歩ごとに痛みが襲った。

お尻や足の付け根が響くように痛い。それでもさっきまでに比べればなんてことない。

頑張ってトイレまで行った。



巨大なナプキンには、大量の血がついてた。流産したんだ。

って現実を見た気がした。

でも、それで悲しくなって泣くことはなくなってた。



トイレの前は、ナースステーション。

生まれたばかりの赤ちゃんたちが、寝てる。



ゆみちゃんは、みんなが使うトイレなんだから、もっと病室側に作ればいいのに。配慮が足りなすぎる。ってすごく怒ってた。

実は私もちょっと辛かった。


でも、ゆみちゃんがすごく怒ってくれたからか。その後何度かトイレに行くことになったけど、あまり気にならなくなった。