「横尾忠則 全Y字路」 | 温室メロンの備忘録

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横尾忠則現代美術館を見学した直後に頼んでいた図録が届いた。絶版のようで少々プレミアム価格での入手。

「横尾忠則 全Y字路」2015.8.6発行


2000〜2014年までの全Y字路作品を、制作順に纏めた図録で、2015年の開館3周年記念に開催された「続・Y字路」展と同時期の発売。


ちなみに先般見学した「ワーイ!★Y字路」展は「続・Y字路」展を補完した展覧会だった↓



こちらでは『Y字路という1つの構図を用いて、様々な日常の断片を切り取り、先人達の生み出した種々の画調から選択して採用することで、よりメッセージ性を際立たせている。多彩と言うのか、自由と言うのか、美術史の集大成的画風の画家だと感じた。』と総括したが、その後の作品はいかに?


届いたレターパックを破くように開封する。


「暗夜光路 N市-Ⅱ 四度(よたび)」2003


豪雨のN市-Ⅱは、暗夜光路シリーズで最もダイナミックな作品。また観たくなったが、個人蔵なのでもう望み薄だろうか。


2005年

「伊豆の夜」


2005年には2作品しか描かれていない。おそらくこの時期、画伯の中でY字路シリーズが一旦完結したのではと思う。描きたいメッセージを、既に出し切られた印象を受ける。


2006年

「芸術と平和」


2006年最初の作品。停滞を引きずりながらも、変化の兆しが伺える。この変化が「続・Y字路」展を2006年以降の作品展示とした理由かもしれない。なぜ「続」なのかも合点がいく。


2007年

「ルソーのY字路」


「文明と文化の衝突」


2006年後半から2007年は、Y字路シリーズの大きな転機だろう。横尾流ポップ&サイケがY字路にやってきた。個人的には、この年に制作された作品はどれも好きだな。


2008年

「交差する時間」


カメラのシャッターを開きっぱなしにして撮影したかのような。


2009年

「工事中」


「『ガロア』の家」


この年には、背景の中に中央の建物が浮かび上がる作品を数点制作されている。これらの作品群もかなり好み。


2010年

「黒いY字路 1」


2011年

「黒いY字路 13」


2010〜11年には、黒を基調としたY字路が連作されている。


2012年

「白い朝」「To Posthumous Works」


「メランコリア」


一見しただけでは、Y字路作品と気づけないかもしれない。それにしても、よくこれだけ多様なイメージが湧き出るものだ。太郎画伯へのダメ出しも、まあ分からないでもない。


2014年

「De Chirico misses BÖcklin and Nietzche」


デ・キリコをよく知らないが、ベックリンやニーチェの影響を受けた時期があったとのこと。なぜ第45回のヴェネツィア・ビエンナーレなのかも謎だ。いずれにせよ78歳とは思えない熱量。


なかなかの盛り沢山。ゆっくりと楽しもう。


中央に建物、左右に2つの消失点がある構図。画伯自身は、特にY字路が好きではないと発言されているとのことだが、知らず知らずのうち、その構図の持つ魔力に魅せられてしまった。