医師の働き方改革 | ももせ皮膚科のよもやま

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医師の過労問題にようやく本格的なメスが入りました。

これに関して、論点がずれるかもしれませんが個人的な考えを述べてみようと思います。

私が医者になったばかりの頃はやる気満々で、1人でも多くの患者さんを診ようとわざと病院に長々いたり、当直も苦ではありませんでした。体力もあったからだと思います。

 

困った時には先輩の先生に頼ってました。同じ皮膚科の先輩はよく教えて下さりました。ただ、皮膚科以外の問題が出た時は他の科の先生とのやりとりが必要です。様々な先生がおられて、それはそれは怖い方もいました。

 

仕事に慣れ、経験を積むと、社会の現状が見えてくるようになりました。夜中に救急車で毎日のように来られる、受付から会計までのすべての部署に文句を言っていく、診察料未払いでも平然と受診を繰り返す、などなどなどなど、医療技術を磨くよりも人を相手にすることの方が何倍も大変です。

 

医師になって10年を越えた辺りが一番の激務でした。月の就労時間は300から350時間、これは院内にいた時間のみで、院外での学会や勉強会や、夜間緊急の呼び出しはカウントしていません。本当に太陽を見ることのない生活でした。

勤務医時代にこれはきつい、と感じたことは、

1)慢性の寝不足

2)寝てからの深夜の呼び出し

3)当直(前後を合わせると48時間連続勤務となる体力的な問題と、専門外の疾患を診る緊張感や、救急車や救急外来の不適切な利用による患者さんへの対応などの精神的な負担が大きい)

4)学会、勉強会の準備(診療業務の合間、もしくは終わってから取り掛かります)

5)仕事量の不平等(呼び出しに出ない同僚、診察スピードが異様に遅い同僚などなど、仕事をしない医者が同僚にいると、その分がまわってきた)

6)患者さんとのトラブル

 

上記の中で最もきついのは6番目の患者さんとのトラブルです。これは本当に消耗します。トラブルまでいかなくても、色々な意味で手がかかる方への対応も非常に疲れます。この手のかかる方が近年増えております。

 

次にきつかったのは5)の仕事量の不平等。どの世界も同じだと思いますが平等はありえないと頭ではよく理解しています。こちらも6)同様に体がきついというより精神的に追い込まれます。

 

医師の働き方改革で、労働時間の見直しが始まったことは良いことです。”時間”は数字で評価できることだから分かりやすいです。しかし、個人的には長時間の拘束、つまり体力的な問題よりも、精神的な問題の方が圧倒的にきついと感じます。逆を言えば、精神的な負担が減れば多少の長時間労働は苦になりません。働き方改革はまだ始まったばかりで、医師不足の問題もありすぐには長時間労働から開放されることはないと思います。時間ばかりが注目されがちですが、仕事の内容の見直しや人間関係の改善など数字に出ない部分の改善も急務だと思います。