お母さんのための湿潤治療講座~やけど編④ 広い範囲のやけど~ | 文京区小石川 もものマークのクリニック 院長ブログ

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文京区春日駅最寄りの形成外科・皮膚科のクリニック。
湿潤治療、シンプルスキンケアのこと、もっと皆さんに知ってほしい♪

『やけど編② ちっちゃい水ぶくれの取扱説明書』 では、小さい範囲のやけどへの対応を解説しました。
ご家庭でのやけどの大半は、このレベルだと思います。

でも、ごくごくフツーの生活を営んでいても、

アツアツの味噌汁の入ったお椀をひっくり返したりガーン
カップラーメンにお湯を注いでいて手が滑ったりショック!
やかんのふたが突如外れて熱湯が飛び出してきたり叫び

と、結構な量の熱~い液体がかかってしまう、そんな場合も、たまにはあります。
まずは落ち着いて、『やけど編①』 で説明したような、初期の手当てをしてください。

ただ、かかった液体がかなりの高温で、かつ範囲も広いとなると、
大きな水ぶくれができる確率は、相当高くなります。
そんな時は、やはり医者にかかっておいたほうが無難だと思うのです。
理由はこれ↓

「水疱は直径2センチより大きかったら全て潰し、水疱膜は可及的に切除する。残した水疱膜の下の水疱駅が細菌の培地となり、創感染を起こすことが多いからだ。」(by 夏井睦先生)

やけど編② でも引用した一言。
要するに、大きい水ぶくれは全部取っちゃいましょう!!ってことなのですが、
やっぱり、ピンセットだの、ハサミだの、それなりの道具が必要です。

広い範囲をやけどしてもすぐに受診できないときには、
ワセリン+ラップの応急処置で数日がんばってからでもいいので、受診してほしいです。
「なんですぐ来なかった~~!!むかっ
なんて、怒りませんから。

さてさて、わがクリニックにそんなやけどの患者さんが受診すると、
まず、やけどの状態をチェック。
傷にしみにくい生理食塩水をかけつつ、色の変わっているところを触ってみる。
この時、明らかに水ぶくれになって皮膚が浮いている部分が大きければ、
水ぶくれの膜をピンセットでつまみ上げるようにして、
そーーーっと、ハサミで取り除いていきます。

「ぇぇえっ!?ハサミで切るなんて、痛いんじゃないのっはてなマーク
と思う方、ご心配召さるな。
水ぶくれの膜部分は、切っても痛くありません。ホントです。

大事なのはここから先。
水ぶくれを取り去ったやけど部分は、まさに「いなばの白ウサギ」状態。
放っておいたら、ヒリヒリヒリヒリ・・・・・・メラメラと悶絶ものの痛みが襲ってきます。

クリニックでは、即座にプロペト(純度の高い白色ワセリン)を塗り、
やけどの広さと深さと部位に応じた被覆材で、パパッと覆ってしまいます。

この「やけどの広さと深さと部位に応じた」というところが実はミソ。
湿潤治療で大事なのは 「ほどよいうるおい加減」 
カピカピは論外ですが、ビショビショも好ましくない。
被覆材によって吸水力は様々なので、やけどの状態により
「これぞ」と思うものを選んでいます。

また、体のどこをやけどしているかによっても、被覆材の選択は変わってきます。
当たり前ですが、クリニックを受診するのは全員外来患者さん。
普段の生活もしなくてはいけません。

可能な限り、患者さんの日常の障害とならないように、
被覆材の覆う範囲や厚みも、実は結構考えているのです。

だって・・・・プロなんだものドキドキ(みつを風)

とはいえ、患者さんは私の貧困な想像力の斜め上を行く日常生活を送っていることもまれにあり、
「や・・・・やられたorz」と脱力することも(笑)

そんなこんなで、私が再診の患者さんにかける最初の一言は
「なにかおうちで困ることはありませんでしたかー?」
が、定番です。
そのお返事によって、次の手を考えるのです。

やけどで病院通いなんて、気分下がりまくりダウンな状況でしょうが、
どうせなら少しでも快適に過ごしてもらいたいなあと、日々思いつつ診療に当たっております。