俺は札付きの悪ではあるが不良とは言い難い。
なぜなら俺は学校をサボるなどした事など無かったからだ。
それには深いながらも単純な理由からだが。
それはまた別の気に話すとして、俺は学校に行く準備をし始める。
「・・・あ」
そういや今日は体育があったな・・・
思い出した俺はどこかにしまい込んだ体操着を探しはじめるが、
「・・・何処だ?」
箪笥を漁り、物で溢れた床を蹴り廻った俺だったが何処にも体操着が見当たらない。
「俺、この前何処にやった?」
確か先週洗って何処かに置いといた筈だが・・・思い出せない。
俺が思い出すのに四苦八苦していた時。
奴が現れた。
不意に袖を引っ張られる感覚を覚えた俺はその方向に顔を向ける。
「・・・は?」
「・・・」
そこには俺以外の人間がいた。
俺より一回り、二回り小さい人間が、今までずっと俺の部屋にいたのかそれとも部屋に今入ってきたのかは分からないが。
俺以外の俺が知らない人間がそこにいた。
「な、な、な!」
「・・・」
そいつは全身真っ黒の、テレビや舞台などで見たことのある黒子の格好をしていた。
しかも俺に向かって何かを差し出している。
「お前誰だ!」
「?」
叫ぶ俺を見た黒子は不思議そうに部屋を見渡す。まるでこの部屋で他の人間を探しているような。
「お前だ!お前!」
「!?」
俺が指差すとその事に黒子は驚いたようにびくつく。
「?」
「そうお前!何処から入ってきた?いや、そもそもいつからいやがった!?」
俺が問い詰めると黒子は先程の落ち着いた動きからアタフタと慌てふためく。
「・・・とりあえず何だそれ?」
「!!」
「盗んだのか?」
「(フリフリ)」
違うと首を振った黒子は自分がもつ袋を俺に手渡す。
「俺に?」
「(コクン)」
「・・・これ体操着、何処にあった?」
俺が聞くと黒子は机を指差す。
あ、思い出した。昨日自分で準備したじゃないか。
「俺に?」
「(コクン)」
「なんで?」
俺が聞くと黒子は一度だけ口を開こうとしたものの、何かに阻まれるように押し黙る。
「・・・」
「口が聞けないのか?」
黒子は何も答えないが、にぎりしめる手にそれが真実であると理解した。
俺は手短にあった紙とペンを黒子に手渡す。渡された本人は戸惑い俺を見つめる。
「それにここにいる理由を書け」
「(コクン)」
頷いた黒子は一心不乱に書きはじめる。
俺はそれによって警察に突き出すかどうか決める気でいた。
しかし黒子が書いた文章を見て気が削がれてしまった。
『私は貴方の黒子ですから』
そこにはそう書かれていた。