黒子、それは歌舞伎で黒装束・黒頭巾を着用して舞台上に現れる人物。
それは芝居の登場人物ではない。
登場人物の必要に応じて動くだけで決して演技をしようとはしない。
そして登場人物たちは彼らが見えないという暗黙のルールが存在する。

だが、もしも、

そのルールが破られたら?

これはルールを思いかけずに破ってしまったとある学生の話。

*

坂上誠、今年中学三年生。
まぁ、人から正しい年齢を当てられた事がない。
なぜなら俺の身長は百八十オーバーの大男、金髪坊主に三連ピアス。
到底学生には見えるはずもない。
ましてや中学生には・・・

そんな背格好を他人を舐めていると勘違いするのか、俺の周りには気の短い野郎が集まってくる。

だが小さい頃にかじった空手の基本と体格差から返り討ちにしてしまう。

おかげで俺は望むにしろ望まぬにしろ、学校の番長という忌ま忌ましい名前を頂いた。

町の不良共は俺の言いなり、学校では教師ですら口を挟めない裏の権力者

そんな俺が今、とんでもない状況にいた。

*

「おい!テメェ聞いてんのかぁ?」
「・・・」

俺の罵声が学校の屋上に響く。しかし言われた当人は沈黙をひたすら守る。

「何なんだテメェ?何が理由で俺に付き纏う?」
「・・・」

口を開こうしない目の前の奴の胸倉を掴む。

「そのふざけた格好はなんだ?確かそれは・・・黒子だったか?お前は黒子なのか?」
「・・・(コクン)」

あっさりと頷く奴に俺はため息をつく。
俺の前で正座するそいつは黒子の衣装を着込んでいる。
しかもそいつは自分を黒子であると言い放ちやがった。

話は朝へと戻らなければならない。