森本オレオの落書き帳 -5ページ目

森本オレオの落書き帳

小説などを置いています。

誰か来たのかと思い、玄関のドアを開けた。

しかし誰もいなかった。

隣の部屋かもしれないと思い、引き返した。

二、三歩歩いたところでまた、ごんごんと音がした。

僕はまた玄関に戻り、今度は覗き穴を覗いてみた。

しかし誰もいなかった。

一体何なんだろう。
誰かのいたずらだろうか。

しかし何かひっかかる。

僕は玄関のドアをしばらく見つめていた。

そしてまた、ごんごんと音がした。

僕はそれを確かめるために、玄関のドアを叩いてみた。

やっぱりそうだった。

どこかから聞こえてくる音と、僕が今鳴らした音とでは音質が違う。

前者は木製の何かを叩くような音、後者は鉄製の何かを叩くような音なのだ。

玄関のドアはアルミ製なので、前者ではない。

じゃあ何の音なんだろう。

僕は最初に目についた壁を叩いてみた。

そうだ、この音だ。

でもどこからするんだろう。

隣の部屋からだろうか。

いや、そんな苦情を出されるほど大きい音は立てていない。

僕の部屋は静かすぎるほど静かだ。

するとまた、ごんごんと音がした。

僕はどこから音がしているのか確かめるために、注意深く聞いた。
関係あるのはやっぱり僕なんだろう。

土をかけている僕でないとすれば、それを見ている僕か、現実の僕だ。

可能性が高いのは前者だろう。
女は夢で僕に訴えている。

ただ、現実でのアプローチは少ないとはいえ、まったくないとは言い切れない。

現に夢を見る前に女を見かけている。

待てよ。

前者なら最初から夢に出てくればいいじゃないか。

なのにまず現実でアプローチしてきた。

ということは本当に訴えているのは後者なんだろうか。

どちらにせよ、百パーセントそうだとは言い切れない。

とりあえずこの問題は横に置いておくことにした。

忘れないために、それをさっきの箇条書きの下に書き、その下に線を引いた。

僕は頭を切り換えるために水を二杯飲んだ。

三杯目を飲もうと蛇口に手をかけたとき、僕はふと思った。

夢は毎回同じだ。

多少の変化はあるが、流れは変わらない。

もしかしたら、その中に気づいてほしいことがあるのかもしれない。

僕は紙に夢の流れを書き、共通する場面、物、人物、行為を書き、その右に正の字を書いていった。

そして三つとも印がついたものを、必ず出てくるものとして、さらにまとめた。

場面としては神社、部屋、壁。

物ではスコップ、匂い、賽銭箱。

人物では僕、女。

行為では追う、窓を開ける、壁に入る。

そして人物を除いて、場面と物、場面と行為にまとめた。

場面と物では、神社はスコップと賽銭箱。
部屋はスコップと匂い。

場面と行為では、部屋は追う、窓を開ける、壁に入る。
神社は追う。

部屋に行為がすべて当てはまっているので、神社を可能性から外し、部屋に重点を置くことにした。

そもそもの始まりは僕の部屋なのだ。
そう考えていいだろう。

となると部屋に関するキーワードは匂い、壁、スコップ、追う、窓を開ける、壁に入る。

すると玄関のほうで、ごんごんと音がした。
仕事が終わって家に着くまで、僕はずっと考えていた。

彼女を見つけるということはどういうことだろう。

僕は夢で彼女に会っているが、彼女はそうじゃないと言った。

缶コーヒーを半分飲んだところまで考えてみたが分からなかったので、僕は分かっていることを考えた。

僕の部屋の壁から香水の匂いがする。

ゆきえがいなくなった。

前の住人は中年夫婦だった。

ここのところずっと女が夢で訴えている。

僕は何かを捨てたらしい。

あのグラウンドは死者を天国へ送り出す場所で、僕はゆきえを送り出そうとしている。

そうなる前に女は私を見つけてと言う。

そうすればゆきえは戻ってくると言う。

見つけるって何だ?
何を?
どうやって?

思考はいつもここへ戻ってくる。

缶にはコーヒーがまだ半分残っていた。

頭の中を整理するのに夢中で、コーヒーの存在を忘れていた。

よほど強く握っていたのか、持っている部分が少しへこんでいた。

僕は残りを飲み干し、缶をその辺のゴミ箱に捨てた。


家に着くと分かっていることを紙に箇条書きした。

それからそれと区切るように線を引き、やるべきことを箇条書きした。

僕は一番先にやるべきことの横に赤い印をつけた。

まずは、みつける、の意味を見つけなければならない。

それから適当に夕食を作って食べた。

まだそれについて考えたかったので、ビールは飲まなかった。

食事中も考えていたが分からなかったので、気分転換に風呂に入った。

僕の部屋は風呂場を出ると、通路を挟んでクローゼットがある。

その通路は玄関と居間を繋いでいる。

僕はクローゼットを見て思い出した。

女は、どうしてスコップを捨ててきたの、と言った。

しかし土をかける僕を止めさせたいなら、そんなことは言わないはずだ。

僕は土をかけていたし、仮にスコップをなくしていたとしてもスコップを渡さないだろうし、再び持ってこさせないだろう。

そんなことをしたら僕はまた土をかける。

それはゆきえをこちらに戻せなくするということだ。

女はそれを止めさせようとしていたし、それを条件に私を見つけてと言った。

つまりゆきえを天国に送るということは、女にとっても不利なことなのだ。

ということは、土をかける僕にスコップは関係ないということになる。

じゃあ誰に関係あるんだろう。

そこまで考えたところでどこかから、こんこん、という音がした。
それはコップを木のテーブルに置くような、乾いていてこもった音だった。

上の部屋だろうか。
それとも隣の部屋だろうか。

こもった音だから隣の部屋から聞こえたのかもしれない。

そう思い、僕はあまり気にしなかった。

それからソファに座り、続きを考えた。