小説「壁」第六話 | 森本オレオの落書き帳

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街で見かけた女のことだが、確かめる方法があったことに気づいた。

彼女に電話をして、あの日は何をしていたのか聞けばよかったのだ。

まるで匂いによってその思考に蓋をされているかのように、僕はそれにまったく気づかなかった。

それくらい混乱していたのだ。

だが僕は彼女の連絡先を知らないことにも気づいた。

前は知り合いを通して連絡してもらったのだ。

僕はその知り合いに連絡して、彼女の連絡先を教えてもらった。

彼女に電話をすると、彼女は何も知らないと言った。

「この前の日曜日は仕事だったわ。それに私黄色いパンプスは持っていないし、その香水もつけていないわよ。香水に詳しいのは、あなたもしっているとおり私が美容部員だからよ。自慢じゃないけどこう見えて結構勉強してるの。えらいでしょ」

これが彼女の答えだった。

彼女は一見フレンチレストランのように高級そうに見えるのだが、話してみるとファミレスのような気さくで気取らない女性だった。

そしてゆきえはサービスの行き届いたこじんまりとしたカフェみたいだなと思った。

「ええ、えらいですね」と僕は言った。彼女は笑った。

「あれから匂いはどうなったの?」と彼女は言った。

「相変わらずです、むしろひどくなってます」と僕は言った。

「それは大変ね、今度大屋さんか不動産屋に聞いてみたほうがいいんじゃないかしら」

「そうしてみます」

「何かあったらいつでも電話してきてね。相談に乗るから」

「ありがとうございます」

それから急に電話をしたこと、勝手に連絡先を聞いたことを謝って電話を切った。