発売日:2023/10/13
文 庫:256ページ
ISBN-13:978-4065331415
顔なき女は燃やす。人を家を男を。その悪意、出処知らず。
霊視の青年・安田怜は悩んでいた。
怪異事件を隠蔽する警察・異能処理班刑事の極意を待つ
過酷な運命。
それを防ぐため、夏休みを使って安田はひとりで
捜査を開始する。
呪い殺されたかのような不審火が頻発するなか、
安田は隠蔽でも解決でもない第三の道へたどり着く。
チームの絆深まる警察×怪異ミステリー!
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警視庁異能処理班ミカヅチ シリーズ第4弾
メインキャラの安田怜は、ミカヅチ班の新人。
ボスは幽霊、班長は陰陽師、同僚は広目天と虫遣い、
連絡係の通称:赤バッジは悪魔憑き・・・
ミカヅチ班は救わない。怪異を止めない、祓わない。
怪異が起こす事件を人が起こした事件に偽装し隠蔽する。
それでも安田怜は、極意が悪魔に騙された事に憤っていた。
契約でも何でもない。弱みに付け込んだ詐欺だと。
超絶お人よしの怜は、力になるべく奮起する。
「エピソード1」 陰火を呼ぶ女
怜は、夏休みの初日から長野県警の小埜(オノ)さんから
ヒントを得ようと長野入りし、力試しの意味も含めて
長野で発生している不審火の情報を得る。
信濃歴史民俗資料館を訪ねた怜に紹介された学芸員は、
灰色の作業着でズボンの尻に手ぬぐいをぶら下げた
小柄な爺さんで・・・
ここでキターッ!!小林教授!!
怜がサニワを持ってるってのを聞いて、行き先が
長野というから期待していたら、やっぱり!
よろず建物因縁帳の主要キャラのひとりが出たぁ♪
こういうのは嬉しい。
ヒントを得た怜は、更に聞き込みをして祠を発見する。
そして超絶お人よしを発揮して・・・
「エピソード2」 東急線武蔵新田駅 迷い塚
元長野県警の小埜さんから、生きたまま冥界を見て帰る
というヒントをもらい、死者のニオイを纏わせたまま
冥界に踏み込むのだが、向こうへ行ったら、決して
動いてはいけないと、キツク注意されるが・・・
団結するバカ・・・いいねぇ~о(ж>▽<)y ☆
「時が来る・・・その時が来るぞ・・・」
怜に囁く声は呪いではなく準備しろと教える声だ。
今回の読書メモφ(・ェ・o)メモメモ
長野の盆は8月だから、もうすぐ地獄の釜の蓋が開き、
死者はそれぞれの家へと帰る。
残る亡者は善光寺へ行くが、この墓地に亡者はいない。
弔われずに迷っている死者を亡者という。
死者と会話しているという事は、今きみがいる場所は
墓地であって墓地ではない。あちらとこちらの端境だ。
日中に端境に存在すれば、眠気は要注意だ。
昔はヒダルカミとして恐れた。
「ものを食べる」という生者にしかできない行為をして
魂と肉体の乖離を防ぐ。
戦いに勝つ秘訣は、準備を重んじ、無闇に剣を抜かない事だ。
敵を知り、援軍を整え、逃げ道を確保して勝算を得る。
そして初めて剣を抜く、これが兵法だ。
相撲と歌舞伎と遊郭は江戸の三大娯楽。
参拝とくっつけたのは、女房の手前、行きやすくする工夫。
石祠に燃える赤い火は、女たちの怒りや情念だ。
公の願いは神社に。邪な願いは祠に。
瘴気はエネルギー。怪異の元は、ただの、普通の人間。
怪異は人の思いが生み出すもので、人が関わらなけば
発動できないのかもしれない。
悪魔が人に干渉するのも、人なしでは存在できないからかも。
警視正は死んでミカヅチの真の一員となり、三婆ズは
病を経て仲間を見つけた。
女郎とかたびは何もかも違う。
シャバの常識は女郎屋の非常識・・・
閻魔大王に仕えたといわれる小野篁(オノノタカムラ)は
小野小町の祖父。
篁は、此岸と彼岸の往還に井戸を用いた。
そのような場所を「境の辻」と呼んだりするが
全てが辻にあるわけじゃない。
正しいかどうかを他人に決めてもらってるから迷う
ことが起きると、それが決まりだからって答える。
基準を外側に置いてる人。それは甘えだと思う。
決まりというのは物事をよくするためにあるのであって
決まりが先では本末転倒。
起これない人間はダメ。怒ってばかりもダメ。
実際に故障しているわけでもないのに、人はイライラが
募ると検証をおろそかにして結論に飛びつきたがるものらしい。
相変わらず蘊蓄と小ネタが楽しかったぁ