発売日:1993/11/1
文 庫:139ページ
ISBN-13:978-4309403953
「兄さん、あの署名・・・あれはどう云う意味。
自分の名前を記せばいいのに。」
緑に深く埋もれた祖父の家で、ひとり療養する兄の夏織(かおる)
気怠い夏の空気の中、弟の柊一は夏織の秘密の隠れ処を
見つけ出そうと川を遡っていった・・・。
----------------------------
現実逃避をしたくなると、読みたくなるのが長野まゆみ。
長野ワールドに浸っている間は、物語の景色の中に
どっぷりと浸っていられる。
今回の舞台は気怠い夏の深い緑と川・・・
年に1度しか会えないから、後姿ならはっきりと思い出せるのに
いつも不鮮明で思い出せない兄の顔
そんな兄が毎日出かける「隠れ処」
突如現れた少年・・・
宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」に出て来る少年の名前といえば、
わかるかなぁ
霞みがかかったような景色の中での不思議で切ない数日間・・・