同じ系列のNホテルに出向に行っていた時のこと。
ホテルの寮では、幽霊話がいくつかあった。
そのうちの一つが、音楽を聴きながら眠ると
テープが切れた後に話し声が聞こえるというものだ。
(※テープ:カセットテープの事)
出向に行く時は、持っていく荷物を最小限にする。
音楽は必需品だったので、小型のラジカセを持ち込んでいた。
私は、音楽を聞きながら眠るということが元々できない。
しかし、噂の話も気になったので、試してみることにした。
かなり遅い時間まで話しこんでからベッドに入り
イヤホンをつけてボリュームを低くして眠りについた。
はじめは音楽が気になっていたものの、
遅い時間だということもあり、かなり眠かったのも事実なので、
すぐに眠りについた。
テープは、片面が終わったら切れるように設定していた。
カチャンという、テープが切れる音で、薄っすらと意識が戻った。
イヤホンはそのままの状態だったので、意識を
耳に集中してみた。
しかし、別に何も起きなかったので、ただの噂話かと思い
私はベッドにうつぶせになり、イヤホンを外そうとした。
その時、話し声がした。
確かに、誰かが話をしているのだ。
部屋の誰かが起きたのかと思い、片方のイヤホンを外してみた。
しかし、誰も起きてはいなかった。
もしやと思い、イヤホンを耳に戻してみると、確かにその声は
イヤホンを通して聞こえているのだ。
何度もイヤホンを外したり、戻したりしながら確認はしたが
イヤホンを外すと、話し声は聞こえないのだ・・・
神経を集中したけれど、話の内容はわからないが
それは、男女2人の会話のようだった
噂話だと思っていたものは、本当のことだったのだ。
この男女は、何故イヤホンの中でだけ語り合うのだろう
何故、音楽が終わった後だけに聞こえるのだろう・・・
未だにその答えはわからないのである。