T湖編 湖に引かれた | mokkoの現実逃避ブログ

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湖畔のホテルで働いている時、ホテルの向かい側に
寮があって、その隣がS荘という旅館だった。
そこのご主人はいつもベージュの作業服を着て
湖周辺の山菜を積んでは私達にも分けてくれる。


リゾート地での生活は面倒で、買い物するには
車で40分ほど離れた町まで行かなければならない。
ある日、買い物帰りに作業服姿のおじさんを発見。
クラクションを鳴らし、振り返ったおじさんに手を振った。
また山菜でも取ってるのだなと思っていた。


そして車を寮の駐車場に入れた時、思い出した。
おじさんは、1週間前に亡くなっていた事を。
そういえば、おじさんが立っていたのは
ガードレールの向こう側で、そこは崖になっていた。
人が立てるはずがなかった。

おじさんは、湖に魚釣りに出たまま戻らず、
探しに出た人が、無人で旋回するボートを発見。
その湖は日本で3番目に深い湖なので、沈んだら
引き上げる手立てはないのだ。
何の兆しも無く湖で亡くなった人たちのことを
湖周辺の人たちは、湖に引かれて行ったと言う。