なぜ絵版師に頼まなかったのか/北森 鴻 | mokkoの現実逃避ブログ

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ページ数:289P
発売日:2010年10月

葛城冬馬、十三歳。
明治元年生まれの髷頭の少年は、東京大學医学部教授
ベルツ宅の給仕として働くことになった。
古式ゆかしき日本と日本酒をこよなく愛する教授は、
比類無き名探偵でもあった。
米国人水夫殺害事件、活き人形が歩き出す怪事…
数々の難事件を冬馬の調査をもとに鮮やかに解決してゆく。
史実を絶妙に織り交ぜながら綴る、傑作ミステリー。
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タイトルを見た時に、アガサ・クリスティへの
オマージュか?と思ったのですが、どうやら色んな作家さんの
有名な作品名をもじっただけのようです。でも面白い(^◇^;)

「なぜ絵版師(えはんし)に頼まなかったのか」
「九枚目は多すぎる」「人形はなぜ生かされる」
「紅葉夢(こうようむ)」「執事たちの沈黙」の5編を収録。

明治のお雇い外国人として東京帝大で医学を教えたベルツと、
その弟子となった葛城冬馬たちが遭遇する数々の事件を描いた
軽めな時代ミステリですね。
葛城冬馬は曾祖父が長く江戸詰めだった厳格な人だったので
明治に入っても髷頭だった。
そして、東京大學医学部教授のベルツは超がつくくらいの
日本大好き人間だから大変。
初対面の時、冬馬の髷頭に超興奮して抱きしめて、
冬馬は気絶してしまいます(●≧艸≦)

間違った諺を使い、贈られた京友禅の打ち掛を部屋着として
友人のナウマンも振袖を部屋着として互いに行き来するのだが、
それを除けば、教授というくらいだから医学の知識は
なかなかだったようです。

そして冬馬の友人が面白い。
市川歌之丞(うたのじょう)に始まり、市川扇翁(せんおう)
小山田奇妙斎に鵬凛(ほうりん)に、仮名垣魯文ならぬ
仮名垣魯人(かながき ろじん)と話が変わるごとに名前が変わる。
というか、名前が変わると職業も変わっている。
そっちの才能の方がスゴイと思うのだが・・・
ちなみに他の北森作品に、この中の有名人が登場してます。

明治という時代背景から、開港間もない横浜の街とか、
当時の変化していく東大医学部などが舞台となっていて
背景描写を楽しみながら、身近に起きた事件の謎を調べ、
解き明かしていくユーモアたっぷりな連作短編集でした。

シリーズ化している他の作品のようなミステリを
連想してはいけません。
カバーイラストからもわかるように軽い内容なので
箸休めにちょうどいいと思います。
mokkoは楽しかったです。
時代背景の描写が結構好きです♪