ページ数:258P
発売日:2003年06月
15歳のぼくは、母親といってもおかしくないほど年上の女性と
恋に落ちた。
「なにか朗読してよ、坊や! 」──
ハンナは、なぜかいつも本を朗読して聞かせて欲しいと求める。
人知れず逢瀬を重ねる二人。
だが、ハンナは突然失踪してしまう。
彼女の隠していた秘密とは何か。
二人の愛に、終わったはずの戦争が影を落していた。
現代ドイツ文学の旗手による、世界中を感動させた
大ベストセラー。
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初めましての作家さん。
↑クリックレビュー
これはまた・・・
重い・・・重過ぎる・・・・
色々と考えさせられるというか、考え過ぎてしまう作品です。
勝ち負けではないけれど、試合に負けた時の感じに似ている。
肉体的・精神的疲労が全てのしかかってくるかのような、
消化しきれない辛さが覆いかぶさってくるような重さ・・・
読んだのがオリンピックシーズンでもあったので、
こういう比喩になるけど、本当にそんな感じ
あくまでも語り手である「ぼく」に対してなんだけど・・・
小さい時は、「何で?」「これは何?」というのが口癖のように
色んな事を知りたがった。
いつから知らないことが恥ずかしい事だと思うようになったのか
「知らない」という事を知られる事が恥ずかしいと思ったのか
どこかで聞こえた「そんな事も知らないの?」という
バカにしたような声に恐怖を感じてからだろうか?
明日は我が身と、いつくるのかもしれない事を想像して
身構えるようになったからか?
「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」ということわざもあるけど
聞くタイミングを逃してしまったら、今更聞けないって事に
なってしまって、日を追うごとに頑なに鎧を纏ってしまった?と
思ったりもしたんだけど、どうやらそう簡単な事ではない?
戦争という最も悲惨な体験の中で、ハンナは罪を犯した
与えられた刑は、予想よりもかなり重い刑だった。
彼はハンナを擁護することができた。
けれどそれをしなかった。
それは彼の正義ではあるけれど、彼女はそれを望んでいない。
文盲という事を知られるより、無期懲役を受け入れる方が
ましなほど?
ハンナは戦争当時を直視する事を拒んでいた?
だからそれよりも辛い事を受け入れる事で逃げていた?
「ぼく」は物語の語り手であって、正に朗読者でしかない。
ハンナの本当の気持ちはどうだったのだろう。
結局、彼はハンナの内面を想像することはできても
知る事はできなかった。
何も答えてもらえずに結末が来て、消化できない思いが
澱となって残り続けるんだろうなぁと・・・
オデュッセイア・・・これもちゃんと読んでいない・・・
あらすじがわかる程度だった・・・
これを読めば、もう少し感想も変わるのかな・・・
なんというか、自分の中でちゃんと消化できていない事は
引きずるんじゃないのかなぁ
それが思春期に強く焼き付いた想いであって
突然いなくなったと思ったら、予想外のところから現れて
もう一度焼き直す形になって、そこに戦争が絡んでいたから
想像する事は出来ても、検証できない。
虚しくて苦しくて切なくて、痛い・・・
あくまでも「ぼく」に対してですけど・・・
ハンナの最後の決断は、そんな彼に対する優しさですか?
彼の人生に踏み込まないという・・・
やはり難しいです。
映画化されているらしい
これも出来上がるまでに色々あったようだ。