蝶/皆川 博子 | mokkoの現実逃避ブログ

mokkoの現実逃避ブログ

現実から目を背けて堂々と楽しむ自己満足ブログ

蝶 (文春文庫)/皆川 博子
¥576 Amazon.co.jp
発行年月:2008年12月
サ イ ズ:221P 16cm

インパール戦線から帰還した男は、銃で妻と情夫を撃ち、
出所後、小豆相場で成功。北の果ての海に程近い「司祭館」に住みつく。
ある日、そこに映画のロケ隊がやってきて…
戦後の長い虚無を生きる男を描く表題作ほか、現代最高の幻視者が、
詩句から触発された全八篇。夢幻へ、狂気へと誘われる戦慄の短篇集。
--------------------
今まで読んだ作品の突然引っくり返される驚きはなかった。
ただ、苦手な詩句が必ず登場する。
普通なら、ここで引いてしまうんだけど、そうならない。
意味もよくわかっていないのに、泣きそうになる。

背景に戦争があって、それに翻弄される人々が主役である。
大人だったり、子供だったり、妾だったり、孤児だったり・・・

まさかロード・ダンセイニにまで触発されて
物語が生まれていたとは・・・
知っている名前があって嬉しかったのだけれど、それでも
内容的には重かったり暗かったりします。

幻想に惑わされるのか、知らずに狂気が育っていたのか
気が付くと「死」が纏わりついていた。
いつも突然、過去に飛ぶ。
それはいつものことなんだけど、ラストは衝撃的な驚き
というよりは、そいういうことかぁ~と納得させられる。

戦争がそうさせたのか、そうなる運命だったのか
美しくて、なげやりで、悲しくて、空っぽで、
そして残酷な物語。
幻想世界は、実はすぐそばにあった・・・

この薄さで、この内容って・・・
物凄く得した気分なんですけどぉ~

「空の色さへ」「蝶」「艀」「想ひ出すなよ」
「妙に清らの」「龍騎兵は近づけり」「幻燈」「遺し文」