倒立する塔の殺人/皆川 博子 | mokkoの現実逃避ブログ

mokkoの現実逃避ブログ

現実から目を背けて堂々と楽しむ自己満足ブログ

倒立する塔の殺人 (PHP文芸文庫)/皆川 博子
¥741 Amazon.co.jp
発行年月:2011年12月
サ イ ズ:357P 15cm

戦時中のミッションスクールでは、少女たちの間で
小説の回し書きが流行していた。
蔓薔薇模様の囲みの中に『倒立する塔の殺人』と
タイトルだけ記されたその美しいノートは、
図書館の書架に本に紛れてひっそり置かれていた。
ノートを手にした者は続きを書き継ぐ。

しかし、一人の少女の死をきっかけに、物語に秘められた
恐ろしい企みが明らかになり…
物語と現実が絡み合う、万華鏡のように美しいミステリー。
----------------------
幻想的な作品ばかり立て続けに読んできましたが
ここにきてミステリー!
どんな作品に仕上がっているのか期待度満々で読み始めました。

背景は戦中戦後。
前回読んだ幻想短編集も、たまたま戦中戦後の話だったので
頭がちょっと混乱気味になりましたが、舞台はお嬢様学校。
そこで流行っていた小説の書き回し。
そういえばネットでも、知らない人同士が小説のリレーを
してるってのを見たことがある。
すごいアイデアだと思ったけど、やはり元になることって
あったんだなぁ~と思ってみたり・・・

図書室に紛れ込ませるようにして入れられていた1冊の本。
それは「倒立する塔の殺人」というタイトルと、
最初の部分だけが埋められた手書きの本だった。
どこかのグループの「小説の書き回し」なのか、それとも・・・
書き足される小説の続き。
その途中で不可解な死を遂げた女学生。
空襲の最中とはいえ、何故あんな場所で?
あの書きかけの小説との関わりは?

現在と過去を行ったり来たりして混乱しそうになるのは
いつもの事だけれど、それが手書きの小説の少女達と
重なって、更には、お嬢様学校とはいえ戦時中の過酷な労働と
質素な食事、差別、クラスメイト同士の友情や軋轢、
女学校特有の密やかな交流や嫉妬や悪意等々
時代背景が変わろうとも、女という生き物が群れて生活すると
同じなんだなぁ~と思ってみたり、恐怖を紛らわすために
歌っていたのが「流浪の民」で、その歌詞を読むと同時に、
頭の中でメロディーが流れる。
そういうのが、いちいちリアルだったりする。

それでも幻想的な部分は相変わらずステキだ。
美しくて醜くて、優しくて残酷で、リアルでシュール。
そして、見事に惑わされ、誘導されましたよ。
通常のミステリのように、書き回しの小説のラストで
これが真相だろうというのが書き足されるんだけど
途中で、え? ちょっと待て・・・
嘘でしょ? そういえば・・・あぁ~って感じかな?

短編集でお馴染みのラストでいきなりひっくり返されるやつ。
あれの長編バージョンって感じかしら?(^◇^;)
本当の結末はその後にひっそりとやってくる。
なんというか切ないくらいの執念を感じましたよ。

皆川さんのミステリ。楽しませていただきましたぁ~