わくらば日記/朱川湊人 | mokkoの現実逃避ブログ

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わくらば日記 (角川文庫)/朱川 湊人
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発行年月:2009年02月
サ イ ズ:317P 15cm

姉さまが亡くなって、もう30年以上が過ぎました。
お転婆な子供だった私は、お化け煙突の見える下町で、
母さま、姉さまと3人でつつましく暮らしていました。
姉さまは病弱でしたが、本当に美しい人でした。
そして、不思議な能力をもっていました。
人や物がもつ「記憶」を読み取ることができたのです。
その力は、難しい事件を解決したこともありましたが…。
今は遠い昭和30年代を舞台に、人の優しさが胸を打つシリーズ第1作。
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二度目ましての作家さん。
初めて読んだのが「かたみ歌」
昭和初期のなんともノスタルジックで不思議なお話に
心がザワザワしたのですが、今回も背景は昭和初期。
いわゆる戦後の貧しくとも活力に溢れていた時代。
特殊なところといえば、語り手である和歌子(わっこちゃん)の
病弱で美しい姉が、人や物の記憶を読み取る事が出来るという
不思議な能力を持っていること。
しかし、その力を使う事は激しく体に負担をかけることになる。
優しくて大好きな姉の為、マネージャー的に姉を支える妹?
楽しくて悲しくてやるせない色々な思い出をまとめた回想録。


「追憶の虹」
わっこちゃんが小学生だった頃、交番のおまわりさんに恋をした。
そんな時、近くでひき逃げ事件があり、子供が怪我をした。
わっこちゃんは「悪い事は悪い」という理由で
姉さまに現場で起こった事を見てもらった。
憎き犯人を捕まえてもらうため、わっこちゃんは
恋するおまわりさんに姉の秘密を打ち明けたのだが・・・

「夏空への梯子」
東京タワーが完成する前の年。
ある高校の屋上で女子高生が殺された。
まるで捕まえてくれと言わんばかりに、わかりやすい証拠を残し
警察に電話までしてきた。
ラジオで流された声が決め手となって犯人は逮捕されたのだが・・・

「いつか夕日の中で」
昭和33年に襲ってきた台風で、避難勧告が出る前に
わっこちゃんが通っていた中学校に一家で避難した。
そこで知り合いのおばさんと一緒にいた茜ちゃんを紹介された。
行儀見習いという名目で、わっこちゃんの家で手伝いを
することになった茜ちゃんだったが・・・

「流星のまたたき」
茜ちゃんの紹介で慶應学生に会うことになったわっこちゃん姉妹。
流星塵の研究をしている笹森さんはイメージしていた慶應学生とは
随分違っていたけれど、すぐに親しくなりました。
流星塵がどこから来たのかを見ようと無理をして
姉さまは熱を出して寝込んでしまった。
そんな時、笹森さんからお見舞いの手紙を受け取るのだが・・・

「春の悪魔」
和裁の仕事をしていたお母様は、時代と共に洋裁に切り替え
ミシンを購入して姉さまと茜ちゃんに手伝ってもらっていた。
ある日、昔からの仕事仲間であるクラさんへのお使いを頼まれ
嫌がる茜ちゃんの代わりに片道30分かかるクラさんの
家に向かうのだが・・・


「わくらば」って何のことだろうと思って調べてみた。
「病葉」という字らしい。病気の葉?
普通にネット検索をすると、淡々と意味だけが説明されている。
なんか美しくない。

でも、よりわかりやすく解説しているサイトを発見
こちら

どうやら「別れる葉」からきているらしい。
紅葉するにはまだ早いのに、一足先に散っていく。
あぁ~ものすごくピッタリな表現だと思いました。
回想録のようなお話だから、姉が若くして亡くなったことを
初めから書いてるんですよ。
普通なら青々と茂っている葉の中で、既に色づいている1枚の葉。
一緒に長い時を過ごす事ができないであろうことを
既に妹は知っている。
そういうのが背景にあるから、色んな事が切ないんですよね。

そして、どこか懐かしい。
話の中で産業革命だといって、お母さんがミシンを購入する。
そういえば小さいころ、うちにもミシンがあった。
最初は足踏みミシンだったけど、それを電動式に改造していた。
何故か色がパステルグリーンだったのよねぇ
そういえば電話もパステルグリーンだった。
流行ってたのか?

そういうところどころに出てくる、ちょっとした事が
忘れていた事を思い出させたり、いつかテレビで見た
あのシーンとかが浮かび上がってきたり
なんとも癒されました(o^o^o)