かたみ歌/朱川湊人 | mokkoの現実逃避ブログ

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発売日:2008/1/29
文 庫:302ページ
ISBN-13:978-4101337715

 

不思議なことが起きる、東京の下町アカシア商店街。
殺人事件が起きたラーメン屋の様子を窺っていた
若い男の正体が、古本屋の店主と話すうちに
次第に明らかになる「紫陽花のころ」。
古本に挟んだ栞にメッセージを託した邦子の恋が、
時空を超えた結末を迎える「栞の恋」など、
昭和という時代が残した“かたみ”の歌が、
慎ましやかな人生を優しく包む。
7つの奇蹟を描いた連作短編集。

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初めての作家さんです。

Mirokuさん のレビューを読んで購入したのですが
「世にも奇妙な物語」で放送された「栞の恋」の原作が
本書に入っているのを知って、速攻読みました♪

 

ただ、活字で読むのは初めてなんだけど
どうやら、昔の「世にも奇妙な物語」でも
朱川氏原作の「昨日公園」を見てました。
覚えてるもんですねぇ~


 

商店街にほど近い覚智寺というお寺はあの世に繋がっているという
噂があり、時々奇妙がことが起こる・・・
ノスタルジックで切なくて、幻想的な連作幽霊奇譚?
そういうのをノスタルジックホラーと言うのですね。納得。
映画「3丁目の夕日」の風景を連想します。

 

昭和30年~40年代。
電話すらまだ一般的ではなかった東京の下町が舞台の物語。
セピア色というと、ありきたりな言葉なのかもしれないけれど
この物語達は、ちょっと古めかしくて、ちょっと乾いてて
それでも優しい風が吹いている夕暮れ時の匂いがします。

 

商店街を中心に描かれているけれど、中心になっているのは
古本屋・幸子書房と覚智寺。
どんな奇妙な話しでも、真剣に聞いてくれる古本屋のご主人は
顔に似合わずいい人です。

 

芥川龍之介が老けたような顔の人という描写なんだけど
ドラマでは、まるで違う顔だったんですよね(^◇^;)
既に記憶に刷り込まれてしまったので修正できず・・・
これから読む人の為にあえて名前は出しませんけど・・・

 

「紫陽花のころ」
アカシア商店街に越して来た若夫婦。
引越しの作業に飽きて町をぶらぶらしていたら
ラーメン屋を見つめる若い男がいた。
そのラーメン屋では殺人事件があったという。

 

旦那目線のお話しになりますが、
なんとも切ないお話しです。

 

「夏の落し文」
重い小児喘息を患う小学3年生の弟・啓介が
優しく聡明な小学5年生の兄・秀則の思い出を語ります。
アカシア商店街でカタカナの筆文字で書かれた
奇妙な貼り紙が見つかる。
そこに書かれていた内容は、啓介に対する不吉な予言らしい。
目撃された犯人は、どこか変な格好で・・・

 

何故にそこまで優しくなれるのか。
弟が自慢に思うのも当然なくらいに頼もしい兄。
そして最後の1行は泣きそうになりました。

 

「栞の恋」
酒屋の娘の邦子が古書店に通う学生にときめき
カレが読んでいた本に挟んであった栞で
短い言葉のやりとりを始めるのだが・・・

 

栞で文通だなんて、なんて胸キュンなお話し!
不思議で悲しくて、やっぱり胸キュンキュンです。
ドラマの方は、ほぼ原作通りに作られていたといっていいでしょう。

 

「おんなごころ」
どうしようもない男に惹かれる「女心」を憂うスナックママ。
男があっけなく死んだ後も、子供そっちのけで泣きくらす。
ところが死んだはずの男が毎夜、部屋を訪れるという・・・

 

この話しの結末は虚し過ぎると思ったんだけど
なんかこの話し知ってる気がする・・・
アンソロジーかなんかで読んだのかな?
ただ、最後の話を読んで気持ちが救われましたけど・・・

 

「ひかり猫」
漫画家を目指して上京してきた主人公の部屋に
飛び込んできた野良猫・チャタロー。
そこにいるのが当然のように、自分の居場所も決めていた。
チャタローが急に姿を見せなくなったと思った時期に、
窓から入ってきて主人公にじゃれつくように動く光の球。
チャタローが魂になって遊びに来た?

 

猫好きさんは、泣くぞ!
これも、すごく胸キュンものです。

 

「朱鷺色の兆」
レコード屋の店主が過去の話しを語ります。
死期を目前にした人に表れる「朱鷺色の兆」
最初は見間違いかと思ったけれど、3度目に目撃した兆候を
カレは知らせずに先輩を失い、激しく後悔する。
そして・・・

 

朱鷺色の解説の方が興味深かった。

 

「枯葉の天使」
覚智寺近くのアパートに越してきた夫婦。
窓から覚智寺の境内を見ていたら、ちょっと目を放した隙に
いつの間にか女の子がいた。
小さな女の子が一人なのを気にして彼女は境内に行くが・・・

 

ここで散りばめられたお話しが繋がります。
古書店の店主の過去がわかります。
「おんなごころ」であまりにも惨いと思っていた事も
ここで、救われた気分です。


 

読後感は何とも暖かいのですよ。
ホラーと言っても、怖くないですし・・・
これは好きです♪
他の作品も読みたくなりました♪ d(⌒o⌒)b♪