小説の呈はとっていますが、これは川端の後輩作家でもある三島由紀夫の「仮面に告白」同様に自伝的色彩が限りなく強いものと思われます。
川端康成の10代(旧制中学)での愛はもしかしたら対象性別にかかわらず彼に取っての初恋だったのでしょうか。
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マイナビニュース 2022/04/06 18:51 引用
川端康成の幻のBL小説『少年』が大反響、発売からわずか7日で重版決定
――お前の指を、手を、腕を、胸を、頬を、瞼を、舌を、歯を、脚を愛着した。
――床に入って、清野の温い腕を取り、胸を抱き、うなじを擁する。清野も夢現のように私の頸を強く抱いて自分の顔の上にのせる。私の頬が彼の頬に重みをかけたり、私の渇いた脣が彼の額やまぶたに落ちている」(以上本文より)
ニュース,時事ドットコム,時事通信社 2022/04/06 引用
70年ぶりの復活が大反響。知られざる川端康成のBL作品『少年』が、発売からわずか7日で重版決定。
ではなぜ、あれほど愛した少年との交流を絶ったのか。川端の孤独な魂にとって「少年」とはなんだったのか。そしてなぜ後年、50歳になった時に、本作『少年』を書くことにしたのか――。
作家の精神の謎は容易に解けるものではありません。しかし、50年前の自死の謎を考える手がかりが本書にあるとしたら、まぎれもなく〈BL文学〉の名編といえるのです。
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小説というより自伝の一部としての後輩少年への燃える愛を綴った「少年」と題した小作品がけっこうな値もつく全集の中にあることは私は10代の終わりごろから承知していました。
引用した原文も折に触れてweb上などでも見ていましたが、今回こうして手ごろな文庫化の運びとなったことは喜ばしい限りです。
BL(ボーイズラブ)が今一つ肝心の少年たちの間でほとんど顧みられない現象は、女性書き手の内容にどこか浮ついた非現実的な空想や机上での少年愛を無意識に感じ取っているからではないでしょうか。
現実には少年間での恋愛は片思いも含めたらその数は同性愛の背徳性がキリスト教道徳が注入しはじめたもの珍しさで重宝されていた当時よるはるかに多いにもかかわらずです。いきおい女性たちが描くBLはどこか異次元の世界の出来事として自覚の有無は別として少年たちからは黙殺の対象となっている現状があります。書店のBLコーナーを利用する少年及び成人男性は女性に比べたらかなりの少数派であることがそのことを如実に物語っているともいえましょう。男子同性でBLを話題にする者の数も相当に少ないのではないでしょうか。
そうした意味でも川端に限らずですが、私はBLを扱う男性著者の筆致は空虚にしてリアル感覚のない机上性が女性著者のものに比べるとほとんどないことを私見感覚しています。
当テーマ(カテゴリ)の各欄以外でも、例えば川端と同じく旧制中学の同級生との恋愛やその破綻を綴った堀辰雄の燃ゆる頬、やはり旧制中学の後輩に宛てた村山槐多のラブレター、水上勉の一人称小説男色(僧院での先輩僧と少年僧の秘め事部部分)などを読めば、そのことは納得できるのではないでしょうか。
追記
続・BL作品はやはり男の書き手じゃないとね@川端康成「少年」