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豪華なパンフレット。52ページあって、分厚いです。

250x210mmという、正方形に近い横長の変形サイズ。表紙は厚紙。オールカラーで、800円です。

先日紹介した「バンブルビー」と同じ値段で、16ページ多いですね。サイズはあっちの方が大きいので、単純に比較はできませんが…。

 

このパンフレットの特徴は、インタビューが充実しているところ。監督や主要キャストだけでなく、技術部門のスタッフのインタビューも多く掲載されています。

写真の面では、監督の演出風景や、ダンボのCGを合成する前の撮影風景などが多くて興味深いです。

一方で、レビューやコラムなどの記名記事は一切ないです。

全編、インタビューのみ。キャストとスタッフのインタビュー集とも言うべきパンフレットになっています。

非常に割り切った作りになっていますね。メイキング本として読み応えのある一冊です。

 

ティム・バートン監督のインタビュー。

ダンボを描写するために、一通りではなく、様々な手法を使ったことが語られています。

「このシーンは何を使えばいい? エド(・オズモンド。ダンボのパフォーマー)かい? ぬいぐるみ? それともワイヤー版のゾウかな? それぞれのショットに個別の問題があって、対処方法もそれぞれ違った。だから、ただ各ショットに粛々と取り組み、それぞれ最高の仕上がりになるようにさまざまなテクニックを組み合わせたんだ」

 

また背景に関しても、グリーンバックでCGに頼るのではなく、実際に多くの大規模なセットが作られ、そこで演技が行われたようです。

セットがある方が、仕事がしやすいんだ。完全なグリーン/ブルーバックの映画は、なかなかイメージを掴みにくい。少なくとも、環境の一部を肌で感じられるのは良いものだよ」

なるほど。CGばかりでない、現実の肌触りのある背景や動物キャラクターが、映画に温かみをもたらしていたと思います。

 

 

バートン監督が多くの作品で取り上げている、サーカスというテーマについて。

「サーカスはあらゆるタイプの人々の集合体だ。つまり、みんな逃げ場を求めてサーカスへやってくるということなんだ。僕は特にそうしたいと思ったことはないけど、これはひとつのアイデアだ。世間に溶け込めないのなら、他の人々がなじまない場所に移動する。サーカスはそれを前向きに象徴していると思うんだ。サーカスはどこにも行き場のないすべての人にとっての居場所だ」

 

ホルトを演じるコリン・ファレルのインタビュー。

「ヴァンデヴァーは全権を握り、成功を収めている”歪んだ”ディズニーのようなキャラクターだ。世界的に有名で、この美しく絢爛なテーマパークの持ち主だ」

ヴァンデヴァーがウォルト・ディズニーのイメージを投影されたキャラクターなんじゃないかって、僕も観ながらちょっと思ったんですよね。見た目のイメージを近づけてある気がしたし、ドリームランドはディズニーランドだし。

さすがに大々的には言えない…と思ったけど、コリン・ファレルが言及しちゃってますね。

映画の中でメディチのサーカスを飲み込んだように、別のスタジオを傘下に組み込んでいくのも連想させるところがあります。意識していたとしても、ティム・バートンのはちょっとした遊び心というところでしょうが。

 

コレットを演じたエヴァ・グリーンのインタビュー。

「(ドリームランドは)ディズニーワールドに少し似ている。近代的で大きくて派手、そして大金がある場所」

エヴァも言っちゃってますね。ドリームランドは最後に燃え尽きるんですけどね!

 

ヴァンデヴァーを演じたマイケル・キートンのインタビュー。

本作は、「ビートルジュース」「バットマン」「バットマン・リターンズ」の3作でティム・バートンの初期を支えたキートンの、久々の復帰作と言えます。

「彼(バートン監督)は、家族についての映画だと言った。実際、それがテーマなんだ。僕が演じるヴァンデヴァーは、傍若無人に振る舞うひどい奴だ。彼は家族を知らず、実はそのことをとても気にしているんだ。決して人には言わないけどね」

 

メディチ団長を演じたダニー・デヴィートのインタビュー。

デヴィートは「バットマン・リターンズ」「マーズ・アタック!」「ビッグ・フィッシュ」でバートン作品に出演。キートンの後を引き継いだ形になっていますね。

「これは、ティムと僕のサーカス3部作だ。僕は「バットマン・リターンズ」でサーカス団を所有していた。次に「ビッグ・フィッシュ」でサーカスの舞台監督を演じた。そして本作がシリーズ最終作になる」

 

ミリーとジョーを演じた子役二人、ニコ・パーカーフィンリー・ホビンズのインタビュー。

ホビンズ「僕は、撮影現場にゾウがいると思い、『ヤッホー』って感じだった。だけど、緑のスーツを着たエド(・オズモンド)という人がダンボ役をやっていて、スクリーン上でゾウの映像に変わるということがわかった」

パーカー「エドはとても優しい人よ。ずっとゾウの演技をしていた」

 

何度も名前の上がっている、ダンボを演じた「クリーチャー・パフォーマー」のエド・オズモンドのインタビューもあります。

「僕はセットでダンボを演じていた。ダンボのすべての動作を担当し、共演の俳優たちに目線を送っていた。ダンボはCGキャラクターだから、僕の動作の多くはダンボの動作へと変換されるんだ」

 

「キャラクターにバージョンが7、8個あったんだ。そしてそれぞれのバージョンに2つの異なるサイズがあった。ダンボは最初とても小さいゾウだけど、だんだん成長して大きいサイズのゾウになるからね。僕が着用したスーツの一つに、実際のダンボのサイズに相当する大きなゾウの頭がついた詰め物をしたパフォーマンズスーツがあった。ひとつ問題だったのは、そのスーツを着ると、四つん這いになってずっと下を向いていなくてはならなかったこと。つまり、まったく見えないということなんだ。それで、特殊メイクと特殊効果のスタッフがやってきて、僕に特別なゴーグルをつけてくれたんだ。それがゾウのてっぺんにある小さなビデオカメラにつながっていて、おかげで僕は何が行われているか、ライブ映像を見ることができたんだ」

 

ジャンボの中には二人の人間が入っていたんだ。前方にいる人が前足を動かし、後方にいる人が後ろ足を動かしていた。あらためて、僕の仕事はなんてハードなんだろうと思ったよ」

 

ヴァンデヴァーの部下、ニールズ・スケリッグを演じたジョセフ・ガットのインタビュー。

「ニールズ・スケリッグはダース・ベイダーのようだ。かなり恐ろしい奴なんだ。彼は南アフリカ出身の腕利きの白人ハンターだ。本作では南アフリカ英語の訛りで話している」

 

後半はスタッフのインタビューです。

プロダクション・デザインリック・ハインリクスのインタビュー。

美しいコンセプト・アート画が多数掲載されています。

「物語の中心には、メディチ・ブラザーズ・サーカスとヴァンデヴァーの遊園地ドリームランドの対比がある。それは例えるなら『オズの魔法使い』のカンザスとオズのような対比なんだ」

 

衣装デザインコリーン・アトウッドのインタビュー。

ティム・バートン監督とのコラボレーションは13回目になるそうです。

「メディチ・ブラザーズ・サーカスの団員は皆、衣装を多く持っていないの。また、サーカス芸人は自分たちで衣装を作るから、それを映画の序盤に反映したわ」

「でもサーカス団がニューヨークに遠征する際は、全員に新たな衣装を着させた。自分たちの夢をついに見つけた彼らが、なけなしのお金で都会向けの服を購入したということを表現しようとしたの」

 

ビジュアルエフェクトリチャード・スタマーズ&ハル・カウゼンズのインタビュー。

「飛ぶシーンでは耳を通常より大きくして翼幅を広げることで真実味を与えた」

「ドリームランドに行く頃には、ダンボは少し成長し、体高85センチから103センチになる。飛ぶ時に数人乗せられそうだと感じる大きさだね。本物らしさを出すためにダンボの皮膚に少し体毛を足したよ」

「大人のアフリカゾウの耳を持つアジアゾウの赤ちゃんだと考えることで、歩く時に耳がどのように折れ曲り、はためくのかのヒントを得ることができた。足は現実の赤ちゃんゾウより短くし、全体のバランスの中で体がまるまると見えるようにしたよ」

「またオリジナルアニメの青い目はそのまま描くことにしたが、それは実在するゾウとは決定的に違うところだね」

 

製作デレク・フライ&ジャスティン・スプリンガーのインタビュー。

「バートン監督のファンとして、彼の映画で一貫性のある点をあげるとすれば、物語の中心にアウトサイダーのキャラクターを置くことだと思う。そしてダンボは史上最高のアウトサイダーだと思う」

 

脚本アーレン・クルーガーのインタビュー。

「サーカスの世界に最大限の現実味を持たせるのが大切だと感じた。だから最初から、喋る動物は一切描かないことを決めたんだ。ダンボはオリジナル映画でも話さないし、ジャンボも1〜2行のせりふしかなかったので、この決断はとても自然なことだった。ダンボは常に表情や行動で表現したんだ。まるで無声映画俳優のチャーリー・チャップリンやバスター・キートンのようにね」