【洋画】雪山の絆② | ROUTE8787 サンサクキロク

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俺は別の神を信じる

日数が経過してくると、食料がなくなるワケです。

で、人肉を食べるしかない・・という事が提案されます。

 賛成派は、「生きる権利」として人肉を食べるべきだというし、

反対派は、「神に背く」(多くはカトリック信仰だった)

とか「本人の同意がない」などと意見が割れます。

しかも、人肉はチームメイトだったり、その家族だったりするから余計に辛い。

 

特に、捜索隊の救助の可能性がある時は、

反対派が多いんですよね。

「ひょっとしたら、明日助けが来るかも知れないのに・・・

人肉を食べるだなんて」と。

でも、ラジオで捜索を打ち切った・・という事を聞くと、

反対派も賛成派に流れていきます。

 

そういった状況下での台詞が、印象に残ります。

 

「俺は別の神を信じる

俺が信じるのは、ロベルトが俺の手当をする時、

彼の頭の中に宿る神だ。

ナンドが歩き続ける時、彼の脚に宿る神だ

ダニエルが肉を切る時、彼の手に宿る神だ

僕たちに肉を渡す時、誰の肉かを言わないフィトだ

おかげで食べられる

彼らを思い出さずに済む

それらの神を信じる

ロベルトやナンド、ダニエル、フィトを信じる

死んだ仲間もだ」

 

この作品に出てくる人たちは、みんな、とにかく優しい。

元々から仲間だったからかも知れないが、

人肉を自らさばき、それらを、

分からないようにして提供する優しさ。

反対派と対立するのではなく、何とかして食べて欲しいと願っていた。

 

そして、反対している人たちも、

「自分が死んだら食べていい」と

事前に言い残したりするし。

 

実話でないパニックものサバイバルものにありがちな、

対立や足の引っ張り合いは、皆無なんですよね。

 

そして、そういった行いにこそ、

「神」が宿っている・・・という台詞は、

胸にきました。

 

 この作品、最終的に生存者は助かる・・・と知っていても、

幾度ともなく、絶望を感じるんですよね。

 待つだけではなく、助けを呼びに行こう・・・という流れで、

力が抜けるんだけど、残りの時間がまだ1時間以上ある事に、

愕然とします。

 映画を観ている人間ですら、そういう絶望を感じるのに・・・・

本人たちにとったら・・・・。

 

みんな、もう「神」なんていないと思っている。

これほどまでに理不尽な神がいるものかと。

 神は、それぞれの体に宿っている。

そう感じる事が、もう凄く、人間の優しさだな・・って思いました。

 

 

無駄死にじゃない

脚を怪我してしまい、役に立てない事を悔いるヌマに、

この事故で妻を亡くした夫が、こう語り掛けます。

 

「俺は出来る限り力をこめ、リリアーナを抱き締めた

その時、それまでにないほどの愛を感じた

そして、生きる目的に気付いた

胸にしっかりと抱いたこの愛という感情を

子供たちに伝えねばと

無駄死にじゃない」

 

私が観る前に抱えていた不安というものは、

「生」=「強さ」や「奇跡」

「死」=「弱さ」や「悲劇」

・・・という構図になってしまわないか・・・という危惧だったのです。

 そういう区分になってしまった時、その死に対して

抱く虚無感に、私は意味を持たせる事が出来るのだろうかと。

 

けれど、この台詞が、そういう考えを一掃してくれたように思うのです。

 

生存者たちも、死んでしまった人たちも。

それが「悲劇」なのか「奇跡」なのか。

生き残る事は強さなのか。

 

 そんな事を、私が考える必要もなく、

社会が分類する事でもない。

 

そうする事が出来る権利を持つのは、経験した人たちだけだ。

生きた人も、死んでしまった人も、

その人それぞれが感じる事がすべてで。

経験もしていない人間が、生存者と、死んでしまった人たちを、

区分けするなんて、傲慢なのだ。

 

果たして、どれだけの生存者たちが、

自分たちを「奇跡」と呼ぶだろうか。

「強さ」だと思うだろうか。

 

 

意味を与えられるのは、自分だけ

救助後も、彼らの苦悩は続いていく。

人肉を食した事、その事に慣れ、敬意を抱かなくなったこと、

多くの仲間を助けられなかったこと、

自分が生き残ってしまったこと。

 

「12月22日(72日目)アンデスから16人の生存者が帰還した

今日も彼らの言葉を伝える

全員がかけがえのない存在だ

これは僕らの物語

 

帰郷して圧倒された

この群衆はなんだ

誰もが詳細を聞きたがる

アンデスの英雄たちは新聞記事に。

死の淵から両親の元へ戻った英雄たちだ

僕らと同じくらい彼らは死んだ

だが、帰ってこられた

彼らは、僕らを想い

なぜ、共に帰れなかったと、自問する

あの体験の意味は?

意味を与えられるのは、自分だけ

皆の中に答えがある

互いを思いやり、山での体験を皆に話して欲しい」

 

 生存者を抱き締めて、母親が言った。

「奇跡だわ・・」

 

息子は、抱きしめられながら、

こう答えた。

「奇跡・・・。奇跡って、なに?」

 

まとめ

 非常にリアルでした。

飛行機事故のシーンや、雪崩のシーンとか。

そして、息をのむような雪山の絶壁の景色。

 

更に、そこで生き抜こうとする人々の心情も、とても緻密。

弁護士志望で、インテリジェンスに富んだヌマが、

語り手だった事が、とても大きい。

常に冷静で静かな語りは、彼らの苦悩や葛藤を、

際立たせる事に成功している。

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(少しアダムドライバーに似てるんだよね)

 

そして、キャスト陣の壮絶な役作りも、素晴らしかった。

多くが新人さんだという事らしいが、

そうは思えないほどの、パワーを感じた。

 撮影も、過酷だったと思う。

あの痩せ方は、キャスト陣の体を心配するレベルだった。

本当に、心から敬意を表したい。

 

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これだけの人たちが生存したいうのは、

ラグビーのチームメイトだったという事もあるのかな?

体格や体力もさる事ながら、

互いに鼓舞し、支え合えた事が精神的に大きかったのかな~

と思いました。

144分、視聴者は、このチームと一緒に、

苦悩して葛藤して、何度も絶望の淵に立たされる。

 そして、この作品の意味もまた、

観た人それぞれの中にあるのだ。