<ネタバレ>8月の家族たち ☆☆☆☆ | ROUTE8787 サンサクキロク

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韓ドラ狂騒キロク
映画と音楽とドラマがあればいい

このキャストを観ると、内容がどうであれ、絶対観ないといけないだろー・・・

・・・と思い観た。

オクラホマの片田舎に住む母親バイオレット(メリル・ストリープ)と、父親がこつぜんと姿を消したことで集まった3姉妹。一癖ある母バイオレットは病を患い、長女のバーバラ(ジュリア・ロバーツ)は夫(ユアン・マクレガー)の浮気と娘(アビゲイル・ブレスリン)の反抗期に悩んでいた。一方、次女アイヴィー(ジュリアンヌ・ニコルソン)はひそかな恋に胸を躍らせており、三女カレン(ジュリエット・ルイス)は家族の危機に婚約者を伴い帰宅した。

メリル・ストリープ ジュリア・ロバーツ ジュリエット・ルイスに、
ユアン・マクレガー ベネディクト・カンバーバッチ
ジュリアンヌ・ニコルソンなどなど。

 メリル・ストリープとジュリア・ロバーツってだけで、
生唾モンである。

 この作品は、救いようのない家族を描きだす。
父親の失踪を機に、家族が久しぶりに集まるが、
母親は、ガンに侵され、薬物中毒。
長女は、夫婦仲がうまくいっていない。
二女は、許されない恋まっただなか。
三女は、アホな男にひかっかっている。

 それぞれが抱える秘密が明らかになっていく。

と言っても、もともととっても仲の良かった家族が秘密を抱えていた・・という展開ではなく、初めから、問題のある欠陥家族が、
それぞれに、まだ、爆弾を隠し持っていた・・というところに、
この作品の悲壮さがある。

 秘密・問題は、あれやこれやと出てくるが、
見事に、最後まで解決されない。
 家族同士の口論が、絶えまなく繰り返され、
正直、非情に疲れるのである。

本来の性格の上に、薬物中毒状態の母親。
夫に娘に、常にイライラしている長女。
母親とずっと同居してきたことを不満に思っている二女。
何も考えていない三女。

 互いに、その想いを、ぶつけ合う。

 この映画は、好きではない。
この救いようのない作品は、終始、口論で終わり、
見事なまでに笑顔が出てこない。
 怒り狂っているか、ぶすっとしている。
 
良い女優さんたちの口論する演技は、正直、観飽きている感もあるし、
観ていると疲れるので、
直視しようって気にも起こらない。

 けれど、この作品は、それだけでは終わらないのである。

メリル・ストリープが自分の母親について語る時の表情。
 その時だけ、不意に、シラフに戻ったかのような、
何とも言えない表情になる。
 母親の抱える深い孤独を見せつけられて、言葉を失う。

 そして、圧巻だったのは、本当の本当のラスト。
ジュリア・ロバーツの息を吐き出したような、
小さな小さな、微笑み・・・。
 その小さな微笑みが、すべてを、飲み込む。
どれだけ口論をしたとしても、どれほどまでに、相手に失望したとしても。

それが、家族なのだと。
そう受け入れるしかないのだと。

 そんな小さな小さな「仕方がない・・もう、笑うしかない」という
感情の表現の素晴らしさ。
 
あの最後の一瞬の表情で、この映画は、全く救いのない作品から、
「家族」という輝きを見出すのである。
 再び車へと戻った長女は、きっと、飛び出した我が家へ戻り、
そして、今までと同じように、あの母親と向き合うのだろう。

 さて、この作品。
もうひとつの収穫は、ベネディクト・カンバーバッチ。
 私は、「シャーロックホームズ」も観ていないので、
彼のどこに、そんな人気があるのか・・・と常々、思っていたのだが。

あああ、成程ね・・・と合点がいく。

 田舎町のとぼけた男の役を、本当に、見事に演じていた。
チラ観したシャーロックとは、雰囲気からして別物だった。
 彼と、二女の許されない恋。
素朴な男と、素朴な女の、ピュアな恋は、
口論尽くしのこの作品の中の、唯一の、安らぎだった。

 2人でピアノの前に並ぶシーンは、
この場面だけ抜き取ったら、今年1番だったかも知れない。

 まさか、この2人が1番救いのない結果になってしまうなんて。




 この映画は、何度か観るうちに、高評価になってくる作品のような気がする。

けれど、悲しいかな。

 繰り返し、観ようって気にならない。。。(笑)

 ただ、1度観ただけで、相当なインパクトが残る。

観始めて、多分、途中で挫折しそうになると思うが、
そこは、我慢我慢で、
是非、最後のあのシーンを観て頂きたい。

 「家族なんてものは、こんなものよ」長女バーバラの、
諦めたような、
そんな声が聞こえてきそうである。

 どんな家族であっても、
どんなに問題の多い家族であっても、
「家族」と呼ぶところに、本当の「愛」がある。
 
それが、この作品の、小さな小さな救い。



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