前王者との再戦は予想外の幕切れ！
ロッキー・マルシアーノは１９５２年９月２３日、米国ペンシルベニア州フィラデルフィアで前ＮＢＡ世界ヘビー級王者ジャーシー・ジョー・ウォルコットへ世界初挑戦すると歴史に残る大逆転ＫＯ劇を演じて王座を獲得したのだった。その稀に見る激戦でマルシアーノは王座に就いたものの、鼻骨や顎の亀裂骨折で治癒に８カ月間もの空白期間を余儀なくされてしまう。
そして、ウォルコットとは再戦契約も成立していたことから、そう長くは休めるはずもなかった。
傷がある程度癒えると、それまでにないハードなトレーニングを積んだという。ロードワークでは縦横無尽に動き回るラグビーなども取り入れて徹底的に体を鍛え直している。新王者となったマルシアーノにとってはけっして楽な王座奪取ではなかった。
なにしろ、前王者のウォルコットには初回に雑な立ち上がりの隙からいきなり強烈な左フックで倒され苦戦のスタートを強いられた。マルシアーノは再戦で強さを証明する完璧勝利を誓った。前王者のウォルコットも王座返り咲きを狙って必死に研究してくるに違いなかった。
そして１９５３年５月１５日、米イリノイ州シカゴにあるシカゴ・スタジアムでの開催が決定したのだった。
マルシアーノで５人目となる世界王者を育てあげた名トレーナーのチャーリー・ゴールドマンから前回劣勢に陥った展開を教訓に日々指導を受け続けた。
そして、１９５３年５月１５日、いよいよウォルコットとの再戦日は訪れた。
前回、両者のスリリングな激戦振りが知れ渡って人気も沸騰してシカゴ・スタジアムには１万６千人以上（Biography-参照）もの大観衆が詰めかけたのだった。
（当時のシカゴ・スタジアム）
大歓声の沸く中ついにゴングは打ち鳴らされた。
試合が開始されるとお互い接近しては突き放す展開。
まずはマルシアーノが右フックを強振すると、ウォルコットは左ジャブで応戦する。マルシアーノは体を左右に振りながらウォルコットに接近して強引に潜り込んで右フック、左フックと打って出るが、クリーンヒットするまでには至らない。ウォルコットも退がりながら左ジャブを出して攻めを探る展開が続く。
しかし、２分が過ぎたところでまさかの展開となった。
ウォルコットが退がりながら体を左右に振ったところへマルシアーノの強烈左フックから右アッパーをもろに浴びたウォルコットは崩れ落ちるように背中からロープ脇へとダイブするように仰向けダウン。効いたウォルコットはカウントを受けながら間を置きロープ伝いに立ち上がったものの既に遅くカウントアウトされてしまった。ウォルコットはレフェリーに抗議したが、受け入れられなかった。
なんと、再戦はマルシアーノがわずか初回２分２５秒でのＫＯ勝ちで呆気なく終了、初防衛成功となった。
それではマルシアーノがわずか初回ＫＯで終わらせてしまったシーンをどうぞ！（２分５２秒）
紛れもなく、マルシアーノの厳しい練習成果が充分に発揮されたリターンマッチであった。
この後、マルシアーノに２連続ＫＯ負けを喫した３９歳の前王者ジャーシー・ジョー・ウォルコットは体力的限界を悟って報道陣を前に引退を発表して２３年間の現役生活にピリオドを打ったのだった。
初防衛に成功したマルシアーノは４４連勝３９ＫＯ無敗と負けなしロードを続ける。
これまで年間６〜７試合を続けてきたが、さすがに王者となってからは試合数を減らして年間２試合ペースを貫いていくことになる。
★１９５３年９月２４日（ニューヨーク州）
ローランド・ラスターザ（米国）に１１回ＴＫＯ勝ちで２度目の防衛に成功。
★１９５４年６月１７日（ニューヨーク州）
イザード・チャールズ（米国）に１５回３ー０（８ー５/９ー５/８ー６/※支配したラウンド数による採点）の判定勝ちで３度目の防衛に成功した。
しかし、この試合は接戦で採点も微妙となりチャールズの勝利だとする関係者やファンも多くいたとされる。
メディアはマルシアーノへの贔屓採点ではないかと報じると、更に巷（ちまた）では審判員買収ではないのかと疑惑が持ち上がる。チャールズ陣営はＮＢＡ団体に再戦要求すると結果的に承認され再戦が決定した。
※当時この微妙な採点結末はマルシアーノの友人にギャンブル場を取り仕切るマフィアがいたことから審判員を高額報酬で買収したのではないかと嫌疑をかけられ大スキャンダルへと発展した。
★１９５４年９月１７日（ニューヨーク州）
イザード・チャールズ（米国）とのダイレクトリマッチに８回ＫＯ勝ちで再戦決着して４度目の防衛に成功した。これで前試合の防衛戦で全米を大騒動へと巻き込んだ審判員買収疑惑は払拭する形となった。
★１９５５年５月１６日（カリフォルニア州）
ドン・クッケル（英国）と対戦して９回ＫＯ勝ちで５度目の防衛に成功。これで、マルシアーノの戦績は４８連勝（４２ＫＯ）無敗とした。
そして、防衛を重ねるマルシアーノの次戦は１９５５年９月２１日、米ニューヨーク・ブロンクスにあるヤンキー・スタジアムで強打を誇る階級下のＮＢＡ＆リング誌認定世界Ｌヘビー級王者アーチー・ムーア（米国）との６度目防衛戦が決定するのだった。
〜〜〜其の５へ続く！（不定期更新）
【Rocky Marciano biography＆wikipedia-参照】
