寓話的「幸福なラザロ」2019(46) | Mの映画カフェ♪

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LAZZARO FELICE
2018年 イタリア

監督 アリーチェ・ロルバケル
主演 アドリアーノ・タルディオーロ(ラザロ)、ルカ・チコバーニ(タンクレディ)、アルバ・ロルバケル(アントニア)他

今年の春に公開された作品、やっと観ることができました。

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ネタバレです。
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イタリアの世間から隔絶されたような農村
働き者で人の良い青年ラザロは皆から便利に使われていた。

結婚をした男女が村を出たいと口にすると
「侯爵家の許しが出ないから無理だ」と周囲が反対する。

領主の使いがやって来て農産物を買い上げるが、物々交換で現金収入はなし

いつの時代の話??と思ったところに、侯爵夫人と馬鹿息子タンクレディが登場。あれ?派手めな服に…

携帯使ってる!そんなに昔じゃない!

タンクレディにも都合良く使われるラザロ
山の斜面から転落して…


ラザロという名前は
聖書の死から復活した聖人の名前だそうです。
狼がラザロを見つけて駆け寄ると
ムックリ起きて怪我もなく、衰弱もしておらず、髪も髭も伸びていない


この映画、いくつもの不思議ポイントがあります
ラザロには祖母がいるが、両親は最初から存在しなかったふう
周囲はそれを当然のように受け入れている

監督はラザロを「キャベツの下で産まれた」ように描きたかったそうです。

ラザロの不在を気にも留めず、村を去る人々

それから30年の時が流れ、
再会したタンクレディは当時の愛犬を抱いている。犬の寿命を考えるとこれも変(2代目か3代目?)。


若いタンクレディとラザロは
一緒に狼の遠吠えに呼応して一瞬心を通わせ
兄弟かも知れないなんて戯れ言を真に受ける

狼は何かの遣いなのか、

ラザロを死から蘇らせ、また最後に魂を故郷へ連れて帰る

搾取され続ける事に疑問を抱かず、抵抗することもなく
犯罪の犠牲となりやがて自らも犯罪に手を染め
どこにいても底辺の暮らしを強いられる人々と

彼ら以上(以下)に無抵抗なラザロ
それはもう…神と言うしかない!

なるほど聖書の一節のような物語でした。

アントニアを演じたアルバ・ロルバケルは「ザ・プレイス 運命の交差点」にも出演していました。アリーチェ・ロルバケル監督の妹だそうです

ラザロを演じた俳優はこれが初の演技で
澄んだ瞳とガッチリ(ぽっちゃり)した身体が印象的。

ジワジワと面白く、記憶に残りそうな映画
観て良かったです。


(9月7日 下高井戸シネマ)