「カーン」という打球の音、周りがざわつきます。みんなが上を向いています。高いところに白球がありました。そして、こちらに向かって落下してきます。僕たちは東京ドームの2階席にいます。そして白い玉は僕の頭の上に向かって落ちてきます。とっさによけました。とても素手では取れません。取ろうとも思いません。そして打球は床にワンバウンドして、ベンチの底に数度あたって、なんと足下に転がっています。巨人の4番のギャレットが打ったファールボールがたまたま足下にありました。それを拾い上げると、係りの女性が駆け寄って、「お怪我はありませんか?」と尋ねます。「大丈夫です」と言うと、僕たちの手元にあるボールにはコメントせず、立ち去っていきました。「ファールボールもくれるんだね」と娘が大喜びです。先日の開幕戦が娘の東京ドームデビューでした。そして野球観戦が相当面白かったらしく、入学式の日にもう一回行きたいということになり、チケットオフィスに尋ねると、なんとこの2階席の券が手に入ったのです。そして実際に試合で使っていたボールのお土産付きとなりました。本当に良い思い出です。
この日は娘の入学式でしたので、仕事は休みにしていました。入学式が一段落し、記念写真を撮って、そして東京ドームに繰り出しました。なんと、早速、友達になった同級生に水道橋駅で会いました。彼女は阪神ファンでした。早々と東京ドームに着いたので、東京ドーム見物をしました。一階のチケットカウンターに行って、「どこの席が見やすいのですか?」と伺うと、いろいろと教えてもらいました。結論は「どこも見やすいですよ」ということなのです。そして、時間も早かったためか、他にお客さんがいなかったためか、球場をご案内しましょうかと言われました。そしていろいろと見せていただいたのです。1階の内野は4000円から6200円、2階は1700円から2400円、立見であれば大人1000円、こども300円、これが通常の販売価格でした。
それ以外にシーズンチケットと言うのがあり、1年間に東京ドームで開催される巨人の公式戦63試合のチケットです。1階ではバックネット裏の180万円の最上級シートから、そして1階の内野の隅は35万6400円までありました。2階は55万9400円から20万5500円でした。案内されて、実際に見て、2階の「ある場所」からの眺めを僕はとっても気に入りました。そこであれば、1試合当たり、約3000円です。野球が好きな友達と何人かと購入すれば通路にも近くて、気に入った席が一年間手に入ります。いいですね。野球ファンとしては最高の贈り物ですね。僕がシートのことをいろいろと尋ねたので、シーズンシートを購入するのかと勘違いされて、東京ドームを案内して頂いたようです。ちなみに中二階はシーズンシートだけで、一般販売はしていないそうで、そこにも連れて行っていただきました。そしてわかったことは、高いお金を出せば良い席もあるが、ちょっと見にくい席もあるということ。また、お金を出さなくても、実は結構見やすい席もあるということでした。
病院のランキングなどがいろいろと公表されています。ある基準で並べているので相当の信頼性はあるのですが、でもそこには、良さそうな席は、良さそうに書いてあるのです。実は、いいと思われる病院でも、すべての診療科が良い訳ではないかもしれません。また、すべての診療科が良くても、すべての医者や医療従事者が良いとは限りません。病院を紹介されるよりも、やはり医者を紹介されることが大切なのです。東京ドームで販売価格の高い席よりも、予算とは無関係に、または低予算でも専門家が「この席はいいですよ」という席がやはりいいのです。
そして何より大切なことは、どんな席に座っても、嫌な奴と一緒の野球観戦は面白くありません。少々不都合な席でも楽しい仲間とのひとときは最高です。また、どんなに見やすい席に座っても、直前にお相撲さんのような巨漢で座高の高いお客さんが居れば、野球観戦には最悪の条件になります。良い病院、良い先生を探すことはもちろん大切ですよ。でも家族に見舞いに来て貰えるような自宅から近いという地理的条件は相当大切です。また、病気の状態や、本人の体力などで、どんなに良い条件を揃えても残念な結果に終わることもあります。一方で、日本一の病院でなくても、日本の医療は世界最高水準ですから、評判の良い病院を選べば、そこで奇蹟が起こることもあります。そして医療は、最後は運と縁だと思っています。今日も野球観戦から連想した医療のお話しでした。公式戦で運良く頂いた試合球、大切に娘の机に飾ってあります。
人それぞれが、少しでも幸せになれますように。