彫刻家 ケイト・トムソンさん 第3回 ~制作テーマ リレイティブ・パーセプションズについて~
みなさま こんにちは。
彫刻工房くさか 日下育子です。
今日は素敵な作家をご紹介いたします。
イギリス人の女性彫刻家 ケイト・トムソンさんです。
ケイト・トムソンさん
片桐 宏典さん
お二人とも彫刻家であり、ご夫妻でもいらっしゃいます。
前々回の日下育子からのリレーで、片桐 宏典さんに引き続き、ご登場頂きます。
片桐 宏典さん
第1回
、第1回続き
、第2回目
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第8回
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、第9回リンク
、第10回
、第10回リンク
ケイト・トムソンさん
第1回
~~6歳で彫刻家になると決まりました!~
第1回続き
略歴のご紹介
第2回
~制作の素材と想い 石を彫り始めたきっかけと作品の中のスペースについて~
第3回目の今日は、ダンスのデザインに取り組まれた経験が
彫刻の表現に影響を与えたことについておうかがいしました。
ケイト・トムソンさんの「リレイティブ・パーセプションズ(相対知覚)」という彫刻作品の
シリーズでは、観る人が彫刻作品の中に入ったり、まわりを歩いたりして
いろいろな視点から見ることによって、演劇のようにいろいろな物語りが現れてくる
体験をして欲しいということをお聴かせ頂きました。
お楽しみ頂けましたら幸いです。
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「リレイティブ・パーセプションズ(相対知覚)」
黒御影石
50×50×50cmH
2002
「リレイティブ・パーセプションズ(相対知覚)」
黒御影石
210×440×180cmH
2005
「リレイティブ・パーセプションズ#3」
カラ―ラ大理石
50×50×50cmH
東京都港区南青山
2003
「ムーン・ダンス」
大理石、LED
40×30×85cnH
2001
個人蔵
「デュエット」
大理石
10×7×24cmH
2001
「リレイティブ・ヴァリューズ」
カラ―ラ大理石
22×13×35cmH
2004
「ダンス」
マケドニア大理石
16×8×35cmH
2005
「レゾナンス#1」
カラ―ラ大理石
50×50×80cmH
2004
東京都港区南青山
「チェィンジング・パースペクティブ」
カラ―ラ大理石
50×50×18cmH
2003
セラミック
24x25x32cmH
1999
日下
先の回で(第1回リンク)、ケイトさんはダンサーの彫刻を作りたいという想いから
ダンスの先生とお二人でダンスカンパニーを設立されたというお話を伺いました。
また、ケイトさんは振付をされる時に
人間を素材に彫刻を創作するという感覚だったというお話でした。
ダンスの振付と、彫刻の造形表現に何か共通することはありますでしょうか。
ケイト・トムソンさん
やっぱり、ダンスを踊ることの中でも
私たちはコンタクト・インプロバイゼ―ション(※)というものを結構やりました。
※ コンタクト・インプロバイゼ―ション contact improvisation
⇒ コンテンポラリー・ダンスの手法・スタイルの一つ
相手と接触、関わりを持ちながらの即興 (参考:WEBLIO辞典)
参考:20世紀ダンスの系譜
ダンスのデザインとか、ムーブメントを考える時、
インプロバイゼーション (※)の一つのテクニックに
手だけ繋いで、そのテンションで何かやってみるというものがあります。
すると一人がもう一人を支えるから、
一人の時よりも、もっとフリーな感じでいろいろ出来ます。
※インプロバイゼ―ション improvisation ⇒即興的作品
そのバランスとテンションは、半分ぐらいはケンカみたいな感じだけど、
あと半分ぐらいは愛情みたいな感じがして面白かった。
私たち二人と同じで、20年間ケンカと仲直りの繰り返し。(笑)。
そこでは一つの表現の中に愛、好きと嫌いが両方入ってますね。
そのデュアリティー duality(二重性)が好き。
日下
それはとっても面白いですね。
ケイト・トムソンさん
社会に関わるものでも、パブリックに出てくるものは、ほとんどディズニー的なものが多いですね。
つまり、「愛だけ!」「嬉しい!」「幸せ!」とか「エンターテイメントだけ!」とか。
でもそれはリアルライフじゃないでしょう?
それはあり得ません。
私たち芸術家はもっと深い、本物の話を出した方がいいと思います。
難しい部分も入っていないとすぐ飽きちゃうじゃない?
あまり簡単過ぎると面白くないと思う。
細かい、深い、難しい、野獣のことも入っていないと。
美しいだけだったら、本当の美しさは出ないの。
日下
はい。
ケイト・トムソンさん
やっぱり何かコントラストがないと分からないですね。
そういったものが、私の作品一つ一つの中に入っています。
日下
はい、そうですね~。(納得!)
ケイトさんの作品では2、3のピースが組み合わされて一つの作品というものがありますね。
それは、今のお話の、細かい、深い、難しい要素やコントラストを表現したりするために
組作品にしていらっしゃるのでしょうか?
ケイト・トムソンさん
そうですね、
でも、たった一つのオブジェ作品の中にも、
二つ三つのエレメント(要素)が入っているものもあると思います。
あと、三つの額みたいな作品(作品名 「リレイティブ・パーセプションズ」)では、
お互いの関係のおかげでスペースが創れるということかな。
多分、半分ぐらい演劇ですね。
日下
演劇と言いますと?
ケイト・トムソンさん
前回(第2回 リンク)もお話しましたが、私はいつも創るときはどこが正面か、とは全然考えません。
「全部正面だから、360度歩きなさい」という感じです。
360度全部まわって観るというのはナラティブ(物語)、演劇みたいで、
全部歩いてみると違う関係性が見えてくる。
それがファッシネーション(魅惑)です。
片桐 宏典さん
そう物語ね。彫刻をまわって観ることが物語。
ケイト・トムソンさん
そう。
外側を360度歩くだけじゃなくて、中とか下に入ったり、上に登ったりと
それでやっぱりいろいろ観るのは面白いかな。
人間と同じぐらいのサイズの作品では、実際に人間が彫刻の中に入って行く、
また、小さい作品ではイマジネーションで彫刻の中に入って行く。
すると、同じ作品でも、自分の視点で見ていたものとは、
違う要素、見え方が現れてきます。
それで、ある一点だけから観た時とは違った新しい関係性が見えてきます。
日下
それはとっても、興味深いですし、面白いことですね。
ケイト・トムソンさん
テレビとかコンピューターの四角いトウー・ディメンショナル(二次元)な画面には
インフォメーションがたくさんありますね。
でも、それでは深いことが分からない。
表面に表示される情報だけ見ても、知識が増えるだけです。
日下
確かに、そうかもしれません。
ケイト・トムソンさん
リレイティブ・パーセプションズ(相対知覚)という作品では、三つの形を組み合わせることで
三つの違うお話を考えるという彫刻なのです。
現代生活の中では、たくさん情報があるけどパースペクティブ(遠近法)が無いんです。
でも、リレイティブ・パーセプションズ(相対知覚)がちゃんと分からないといけないのでは?
と考えてこの作品を作りました。
その彫刻はサイズもちょうど、スペースが人間と同じぐらいのプロポーションになるから、
人間もスペースに入って、違うパースペクティブも考えてちょうだい、という作品です。
ある人の位置から見た時と反対側の人のポジションから見ると違う話じゃない?というように。
さらには、そういう個人の立場を超えた、国際関係と国際問題も考えるテーマでしたね。
日下
素晴らしいですね。とっても内容が深い作品だと思います!(感動!)
ケイトさんの作品は、たくさんの視点を含んだ作品なのですね。
ケイト・トムソンさん
そう、かな~?
自分の作品にいろいろな視点が入っているというより、
観る人が自分の視点を考えて、隣の人の視点のことも考えて、という風に
少しずつ考えていくと、もっと面白くなる。
だから、「違った人と上手くいくために何か勉強しましょう」ということです。
日下
鑑賞者が多様性を学んだり、
他の人のことを想像するイマジネーションを養ったりするような作品なのですね。
ケイト・トムソンさん
そういうコンセプトがテーマのシリーズです。
リレイティブ・パーセプションズ(相対知覚)とか、
リレイティブ・パースペクティブ(相対遠近)という題名で。
やっぱり、リレイティブ(相対性、相対的)というのは、
例えば家族などのリレーションシップ(関係性)ではなくて
違うポジション(位置)やアングル(角度)から見ると
やっぱり、そのリレーションシップ(関係)のリレティブ(相対性)という
違うパースペクティブ(遠近)が出る。
それと、さっきお話したような、私のいつもの彫刻のテーマがあるでしょ。
彫刻を360度見て回るということが演劇のような物語という。
違うポジションから見ると違うかたちが出るから。
それで、そういう彫刻のイメージだけじゃなくて、テーマとしてもやってみようと思った。
日下
そうですか~。本当に深いお考えで創作されたのですね。
作品には多様な視点が含まれているというのは、
ケイトさんご自身が彫刻家であり、妻であり、母であり、という一人何役という視点が
反映されているのではないかと感じるのですが、いかがでしょうか。
ケイト・トムソンさん
それは、みんなそうでしょう、芸術家は特に。
あと、小さい時から彫刻をやってきたので、わたしはいつも彫刻で考えるから
観る人にもその経験をあげたいかな。
片桐 宏典さん
興味として、いろんな所から見てみたいのかな。
欲張りで、一つの味じゃなくて七色の・・・。だからレインボウなのよ。(笑)
やっぱり、一つの答えがないというところじゃないでしょうか。
見方をいくつも持っているから。
ケイト・トムソンさん
そうそう。もっと複雑ですね。
まだ、リサーチ中で、自分でも答えはまだ分かりません。
まだまだ実験中ですね。
日下
そうですか~。
改めてじっくりお話をお聞かせ頂いて、とっても勉強になりました。
素晴らしいお話をありがとうございました。
* * * * * * *
ケイト・トムソンさん カタログ
『 Relative Perseptions リレイティブ・パーセプションズ 』 より
「私の『リレイティブ・パーセプションズ (相対知覚)』シリーズのコンセプトは、
世界に向かって開かれた平面的な窓を三次元に押し広げようというものである。
そこで風景を窓枠の中に取り込んで、現実世界を一種の劇場の空間のように仕立ててみせた作品を
見る事で、自分の周りの日常的な空間に新たな目を向け、世界と人間、人間同士の関係の見直しを
迫ること、そして身近な問題から、あるいはもっと大きな状況にせよ、これまでとは違った視点や世界認識の様々な方法があるのだということに気づいてもらおうという試みなのだ。」
同じくカタログP12 アーティスト・ノートより
「私たちが物を見るとき、その見え方は実物そのものより自分の見方に左右されるものだ」
「往々にして、私たちが目にするのは手頃なサイズに縮小・編集され、二次元のメディア(新聞、テレビ、
コンピューターなど)のフィルターを通して届けられた『現実世界』の架空イメージです。」
同じくカタログP12 アーティスト・ノートより
「彫刻は、私が自分の考えを表現し、世界を理解するために境界を見定め、世界を定義するための
言語である。
どんな言語でも、その第一に目指す所はコミュニケーションであり、そうでなければとても孤独な、
不必要で わがままな自己満足に終わってしまう。 私は人々に、とりわけ視覚芸術にまだなじみのない人たちに、 リラックスして自信を持ちながらアートと対話してもらいたいと思う。」
「Resonance」
カラーラビアンコ大理石
110x110x245cmH
2010
所在地
東京都品川区東五反田パークタワー・グランスカイ
東五反田パークタワー・プロジェクト
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編集後記
私が片桐 宏典さん、ケイト・トムソンさんに初めてお会いしたのは、
私が大学の副手1年目の冬に、お二人の住む岩手県岩手町にある㈲浮島彫刻スタジオを
訪問した時でした。
その時、ケイトさんは、第一子の娘さんを出産された頃で、
赤ちゃんを抱きながら、彫刻のお話を聴かせて下さったのがとても印象残っています。
その後は、お二人目の息子さんも出産され、子育てをしながらも着実に創作を展開されて
同じ女性として、とても素晴らしくエネルギッシュだなぁ~と尊敬しています。
今回は、リレイティブ・パーセプションズのシリーズは、彫刻を360度まわって観ることで、
違う関係性が表われてくるのを体験する作品ということをお聴きしました。
私自身は、彫刻は360度全てが正面と頭では分かっていても
実際にはとても正面性が強く出るところがあるので、
ケイトさんのお話はとても新鮮で説得力あるものに感じられました。
これから、ケイト・トムソンさんのいくつもの見方、広い視点からのお話を
たくさんお届けしていきたいと思います。
次回はLEDの光を使った大理石の作品について、お話をお聞かせ頂きます。
どうぞお楽しみに。
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◆片桐 宏典さん、ケイト・トムソンさんのホームページ
浮島彫刻スタジオ
◆スターリング大学(イギリス)での展示
スターリング大学 Corridor of Dreams
(「夢の回廊」 インタビュー動画)
(全23分中、お二人と作品が映るのは11:30~15:30頃です。)
スターリング大学アートコレクション
ケイト・トムソンさんのインタビュー
(約2分)
スターリング大学のFacebook ⇒Art Collection at the University of Stirling
◆現在、 開催中の展覧会です。
「As Ithers See Us」
【期間】2014年3月11日(金)~9月末日まで
【時間】11:00~21:00
【料金】有料
【場所】Pobert Burns Birthplace Museum, Murdoch's Lone, Alloway, Ayr KA7 4PQ, UK
tel 0844 493 2601 email burns@nts.org.uk
http://www.burnsmuseum.org.uk/
◆日本・石の野外彫刻―ストーンアート写真集
藤田観龍 著(写真) 本の泉社
ケイト・トムソンさんの作品写真、片桐 宏典さんの作品写真と手記が掲載されています。
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