彫刻家 杉 英行さん 第1回 ~ 木は一番馴染みます ~
みなさま こんにちは。
彫刻工房くさか 日下育子です。
今日は素敵な作家をご紹介いたします。
彫刻家の杉 英行さんです。
前回登場の岡村 光哲さんからのリレーでご登場頂きます。
彫刻家 岡村 光哲さん 第1回
、 第2回
、 第3回
、 第4回
、 第5回
、 第6回
第1回の今日は、杉 英行さんが彫刻の制作を始めたきっかけについて
お話をお聴かせ頂きました。
杉 英行さん多摩美大の在学時、彫刻家 建畠覚造氏の指導を受けられた時に
お感じになったことをお聴かせくださいました。
別ページに掲載する、杉 英行さんの手記 「木材入手顛末記」
も
どうぞ併せてお読み下さいませ。
より彫刻家 杉 英行さんの人となりを感じて頂けるかと想います。
どうぞお楽しみ頂ければ幸いです。
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方舟‐Ⅵ
木・アクリル絵の具69x69x70cm
2013年
方舟‐Ⅴ
木・アクリル絵の具121x27x24cm
2013年
方舟‐Ⅳ (後ろ側、立っている方の作品)
木・アクリル絵の具 34x38x179cm
2013年
閉じ込められた意思‐Ⅱ
木・鉄
2008年
作業台‐再生Ⅱ
木 60x60x80cm
2003年
日下
杉さんが制作をはじめたきっかけについてお聴かせいただけますでしょうか。
杉 英行さんの手記「木材入手顛末記」
の中で
お父様が建築家で子供時代は木が身近にあった、とのことですが
それはやはり彫刻を始めるきっかけにはなったのでしょうか。
杉 英行さん
きっかけというわけではないのですが、子供の頃から高校2年生までは理系志望というか、
機械、電気が大好きなので、エンジニアを目指していたんですね。
高2の時に急に進路変更しまして。
もともと美術は小さい時から得意ではありましたが、
まさかこういうものが仕事になると思っていなかったので
子供の頃は芸術家という発想は無かったんですけどね。
日下
そうでいらしたんですか。
機械や電気がお好きで、そこが原点におありなのでしょうか。
杉さんのフェイスブックを拝見していると、彫刻と真空管アンプ制作とバイクと幅広く
活動されていますね。
杉 英行さん
そうですね。
でもまあ、そっちは趣味でやっているので。
日下
お仕事では木彫の工房をしていらっしゃるんですよね。
杉 英行さん
私は美大を中退したのですが、その後手作り家具の工房に1年間行って
そこで職人さんについて、家具作りの修行をしたんですよ。
それで、家具の工房とメインは子供たちの美術教室をしています。
幼稚園の講師もしていますし。
日下
それは素晴らしいですね。
杉さんのフェイスブックでは「食器棚が完成しました」という記事を拝見しました。
私がかつて、彫刻シンポジウムで出会ったヨーロッパの作家さんは
普段、家具製作を仕事にしていて、ヨーロッパでは彫刻家がその技量を
生活に関わるもの作りにも発揮するのは当たり前ですよ、と仰っていました。
杉さんのお仕事もそんな感じがしますね。
予感‐RESURRECTION
200x200x45cm
2001年
日下
さて、杉さんは多摩美術大学に通われていたそうですが
杉さんはどなたか師事された先生はいらしたのでしょうか。
杉 英行さん
僕の学年の主任は、建畠覚造先生
だったんです。
なので、入った当初はアカデミックな教育は受けていないんです。
建畠先生のやり方は最初っから
「私はアカデミックな教育はいたしません」
「彫刻は空間を相手に作る美術なので、自分なりの空間概念みたいなものをつくる必要がある」
ということを言われました。
それで「空間の要素は、点、線、面で・・・」というところから始まって線材構成、
線の軌跡が面になるということで面構成、面も含む面と空間を切る面の空間。
そのあとは球体。球体は完全なかたちで。球体の分割と再構成。
もう、こういう授業だったんです。
最後の方になってやっと首を作って・・・。
日下
そうなんですか~。(意外)
杉 英行さん
はい。首は2年生になってからかな。
他の美大と違う感じでした。
日下
そうでしたか。
私の住んでいる仙台は、彫刻のある街づくりをしていましたが、その1点に
建畠先生の「Waving Figure」(波貌 はぼう)
というステンレス彫刻もあります。
その点線面という造形原理の基本の勉強をしていらして
それを今の制作で振り返るということはありますでしょうか。
杉 英行さん
逆にですね、建畠先生はもともとは具象をされた方なんですよね。
具象で高村光太郎賞なんかをもらわれた方で、その後抽象に転じていらっしゃるんですね。
なので、ご自分で彫刻の要素はどうのこうの、という理論を確立して行かれたんだと思いますが、
いきなり、それを教えるというのに対して、僕は後で反発をしたんです。
理論は、自然物や人体、そういうものを作る中で自分で発見していくものだと思ったんです。
そうでないと、そういう理論は本当に自分のものになっていかないと想って、
始めっからやり直すつもりで、人体彫刻をしばらくやっていました。
日下
そうでいらしたんですか。
確かに、造形原理というのは自分の制作の体感を通して発見する
答えみたいなものなんでしょうね。
杉 英行さん
そうなんです。
そういう空間概念みたいなものは、自分で発見していかないと
出来ていかないんじゃないかなと思いました。
日下
そうですか。
その大学のあとに、木工修行をされたんですね。
杉 英行さん
最初は就職をしないと生活できませんから造形会社に行ったんですけど。
そこは、ほとんど実験用の模型を作るのがメインだったですね。
建設省だったかな、ダムとか水路とかの施工の模型で、
圧力をかけて破壊実験をやったりとか、そういうのがメインの会社でした。
勿論建築物の装飾的な仕事もありましたけど。
日下
では、その後に木工修行をされたんですね。
杉 英行さん
そうですね。
その家具の修行で学んだことは、すごく役に立ちましたね。
日下
杉さんはご自身で制作されたアンプの写真などもフェイスブックに掲載されていますが
その木の箱の形もとっても美しいですよね。
杉 英行さん
ありがとうございます。
音も素晴らしいですよ。(笑)
音楽も大好きなので。
でも、アンプは趣味ですから。(笑)
日下
いえ、その四角い箱がとっても美しくて、素晴らしいと思いました。
杉 英行さん
アンプのケースとかはアルミ材を加工して作るんですけど、
金属加工は余り得意じゃないですね。
日下
手記の中でも
木はとても、杉さんの肌にあっているというお話ですものね。
杉 英行さん
木は一番馴染みます。
日下
今日は素敵なお話をありがとうございました。
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今回、岡村 光哲さんからのご紹介で、初めて杉 英行さんのお話をお聴かせ頂きました。
杉 英行さんは「再生」をテーマにした作品制作をされています。
このテーマについての手記で杉 英行さんは
「例えば、どんなひどい状況下でも、矛盾と混沌の中からいつか必ず再生する力
(生命力)が生まれてくる事を、感じとってもらえるような表現をし、伝えたいと思います。」
と書かれています。
お話と作品から、これは杉 英行さんの作品制作の常に根底にあるものだと感じました。
私にとっても「再生」は大切なテーマですが、杉 英行さんの「再生」にはご自身が
生きること自体を「再生」と捉えていらして、そこは新鮮に感じました。
みなさまもぜひ、杉 英行さんの彫刻作品をご覧になって見てはいかがでしょうか。・
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◆杉 英行さんが登場するWEBページ
◇ 自由美術協会公式ウェブサイト
◇ 杉 英行さんの紹介ページ
◆ 杉 英行さんが出品されるグループ展
第10回 彫刻7人展
2014年1月13日(祝日・月)~1月19日(日)
11:00~18:00 (最終日は17:00)
万国橋ギャラリー
〒231-0003 横浜市中区北仲通4-49 萬国貿易ビル1F
電話/FAX 045-201-8103
交通 ■地下鉄 みなとみらい線 馬車道駅下車、6番出口徒歩1分
JR桜木町駅下車、県庁方向へ徒歩10分
JR関内駅下車、馬車道通りを海の方へ徒歩10分
市営地下鉄 関内駅下車、9番口 馬車道通りを海の方へ徒歩5分
/横浜第2合同庁舎向い側
◆杉 英行さんの手記 「木材入手顛末記」
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◆ 杉 英行さんの 略歴 (第1回と最終回に掲載させて頂きます)
1945年熊本県生まれ
多摩美術大学彫刻科中退
1973 横浜新人の美術招待展
1982 自由美術協会会員
1986 横浜美術招待展
1998 自由美術展平和賞
1999 文化庁現代美術選抜展
2000 個展
以後グループ展多数
自由美術協会会員
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