彫刻家 須佐 尚康さん 第2回 | みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

生命礼賛をテーマに彫刻を創作。得意な素材は石、亜鉛版。
クライアントに寄り添ったオーダー制作多数。主なクライアントは医療者・経営者。
育児休暇中の2011年よりブログで作家紹介を開始。それを出版するのが夢。指針は「自分の人生で試みる!」

皆様、こんにちは。
みんなの学び場美術館 館長 日下育子です。


今日は私より、素敵な作家を紹介させて頂きます。
彫刻家 須佐 尚康(すさ たかやす)さんです。


須佐 尚康さん



須佐 尚康さん   第1回

第2回目の今日は、須佐 尚康さんの作品「美妙花について」、社会との接点について思うこと、「あなたにとってアートとは?」についてお聞かせ頂きます。
どうぞ、お楽しみに。



どうぞ、お楽しみに。

**********************************************



 花孔 1999 600 susa_saku08

「花孔」
木彫(くるみ) 
158×43×35cm
1999年
第63回 河北美術展 賞候補






慈愛花 2000 600 susa_saku05

「慈愛花」
木彫(くるみ)
178×45×42cm
2000年
第64回 河北美術展 東北放送賞


作品制作の思い

このモデルは家内の妹が41歳で3人目の子供を妊娠したときの姿です。
義妹の旦那にも了解を取って、モデルになってもらいました。

義妹は最初は恥ずかしがっていましたが、むしろ旦那の方が「彫刻に彫ってもらえば、
お前が死んでも作品が残るんだよ。この臨月の美しい姿が作品で残れば、
何より娘が喜んでくれるよ。」と義妹を説得してくれました。

義妹が出産前から入院していた病院に、30×130センチの板を持ってよく通いました。
ベッドの上に板を敷き、立ってもらうのです!!

自分の子供が生まれるときには、家内のお腹は全く触らないでしまいましたが、
この時はよく臨月のお腹に触れて、手でも感じながら制作しました。
ですから、この時に生まれた姪は可愛くて仕方ありません。








 天花 2007年 600 tenka03syu

天花 2007年 600 shokusuitei_0063

「天花」
石彫
200×50×50㎝
2007年
第92回 二科展入選

2007年から秋保温泉・篝火の湯「緑翠亭」ロビーに展示







美妙花 2008 600 P1030800_syusei

 美妙花 2008 600 DSC5079

「美妙花」
木彫(欅)
200×55×55cm
2008年
第72回 河北美術展 河北賞

2010年からホテルメトロポリタン仙台ロビーに展示








「尚舎」
アトリエ ドアの彫刻










妖曲の花 2011年 600 DSC5166

妖曲の花 2011年 600 DSC5183

「妖曲の花」
木彫(欅、着色)
140×35×30cm
2011年
第75回 河北美術展 招待作品

2012年から仙台画像検診クリニックに展示。





 
震災にたたずむ女神 2013  600  shinsai_megami_
「震災にたたずむ女神」
石彫(黒御影石)
200×50×50cm
2013年
第98回二科展入選

2013年から仙台空港1階フロアに展示








日下
須佐さんの作品では、具象的な女性像だけでなく、もっと抽象化の進んだ作品もありますね。
2007年辺りからは特に空間も意識されていて、さらに2008年の「美妙花」は、造形的にも
技術的にも独特な感じがするのですが。


須佐 尚康さん
芸術家と言うのは最初は綺麗に描いたり作ったりしますよね。そして段々と内面と深さ、強さを
表現したいと思うようになると思うんです。それで、私も段々形をくりぬくようになってきて、美の
表現をもっと変えてやろうと思っていました。

ある時、オランダの公園でこの作品のアイデアがハッと浮かんだんです。その公園にはベンチ
が有り、その先に高さ8メートル、幅20メートル位の石積みがありました。 ベンチに腰掛けて
前を見ていると、その石積みから山のかたちをくりぬいてあるんですが、そのくりぬかれた山の
かたちの遠くに、同じ形の自然の本当の山が見えたんです。
本当に素晴らしくて感動しました。きっと芸術家が考えた公園だったのでしょうね。

自分だけではできないようなアイデアでしたが、本当にそのアイデアを頂いてもいい!制作した
い!と思いました。


日下
そうだったんですか。


須佐 尚康さん
帰ってきてから、木をくりぬく機械を全部のメーカーに問合せましたが無かったんです、それで
長さ70センチのドリルで穴開けしましたが、木の柔らかい方に曲がってあいてしまって、真っ
すぐ抜けないんです。それでとっても大事な高価な材料を無駄にしてしまいました。

そのあとは30センチの深さを前と後、両側から空けるようにしました。どんなに頑張っても、
3ミリ~5ミリはずれるのですが、ずれをその位に抑えないときれいなラインが出ないんです。


日下
そうですか~。深さ30センチで5ミリ以下のずれなら、かなりの精度だと思います。


須佐 尚康さん
そうやって、くりぬいてズドンと落とした人物の塊を6枚ぐらいにスライスして、一番いいところを、
くりぬいた空間に戻しました。もう一枚は、自宅のアトリエのドアの彫刻にしました。
この技術ができるようになるのに何年もかかりました。


日下
ご自身で技術の研鑽もされていているのですね。素晴らしいです。
さて、須佐さんが社会との接点について意識されていることをお聞かせいただけますでしょうか。


須佐 尚康さん
芸術、特に彫刻について一般の方々に美術を理解していただきたい、皆さんの目につくところに
設置して芸術を広めていきたいと思っています。


日下
須佐さんはご自身で制作者であると同時に晩翠画廊オーナーとして東北の作家を応援し続け
ていらっしゃいますね。その画廊は今年、開廊20周年とのことで、本当におめでとうございます。
須佐さんが晩翠画廊にかける思いをお聞かせ頂けますでしょうか。


須佐 尚康さん
私は収集家でもあり、彫刻家なんです。私は大学卒業後、商社の株式会社トーメン、その後
そこは豊田通商株式会社に吸収合併されましたが、そこで5年間働いて、28歳で独立して
東洋ワーク株式会社を作りました。

その頃からリトグラフのシャガールやビュッフェをなど良い作品は、自分で借金してでも収集して
いました。それらは現在では当時の10倍以上の価値になりましたが。


日下
そうだったんですか。ご自身でもコレクションされていたんですね。


須佐 尚康さん
そうして収集している中で、30年位前、私が35、6才の頃、仙台の画廊、十数店舗全部と
知り合いましたが、それらの画廊はすべて東京の画廊の卸屋から作品を買っていて、取り
扱い作家もすべて中央の作家でした。地元の作家を育てる画廊は一軒もなかったんです。

それで私はいつか、宮城県、東北の作家を育てる画廊をやりたいとずっと言っていたんです。
そのうちにそれに賛同した人が二人いて、それが藤崎の画商部にいた工藤さんと画家の渡邊
雄彦先生で「是非、やって下さい!」と言われて晩翠画廊を始めました。ですから渡邊雄彦先生
は画廊の始めから関わって頂いています。


日下
実際に画廊を運営して作家を応援するというのは、とても大変なことだと思うのですが、いかが
でしょうか。


須佐 尚康さん
画廊運営というのは大変なもので年間に600万円は持出しになります。この20年間では豪邸
2軒分、普通の家なら3軒分位の金額になります。私は事業をしていて、分かっていてやって
いるからいいのですが、芸術に貢献するというのは本当にお金がかかります。

最初はビルの2階でやっていて、そこもエレベーターが無かったので観にいらっしゃるお客様が
大変で、長年1階の店舗を探し続けてようやく昨年見つかり、画廊を移転てきました。

20~30年前、晩翠画廊のスタート時に仙台では15軒位あった画廊で今も残っているのは、
晩翠画廊以外では2軒のみです。うち1軒は店舗を持たずに作品を持って歩いて販売してい
ます。


日下
本当に20年も継続してこられたというのは素晴らしいことだと思います。


須佐 尚康さん
これまでに画廊で紹介してきた作家の数は、年間52週のうち正月とお盆は休みますので、
実際に展覧会の開催は45週×20年で、延べ900~1,000人になります。
売上ということよりも、とにかく人が集ってきて、作家が作品を見せ合って、豊かな時間を過ご
せる場所を提供していきたいと思っています。

本当に厳しい状況ですが、本当に頑張っている作家が社会で認められて、贅沢はしなくても月に
30万から50万円位の収入になるような活動を支援したいと思っています。
というのも、実際に木彫家の数も減ってきているんです。石も高価ですが、木も高価で、直径
70センチ位ないと等身大の作品は彫れないのですが、私の一番好きな胡桃材は2.2~2.5
メートル単位で、家具で有名な旭川の材木のセリで買っても30万円位します。


日下
そうですか。これまでの須佐さんが画廊を続けて来られたというのは、本当に偉業だと思います。
晩翠画廊で発表させて頂いた東北の作家の一人として、心より感謝申し上げます。
須佐さんは、制作で今後の活動予定はおありでしょうか。


須佐 尚康さん
現在は事業が多忙のため、二科展を中心にやっていきたいと思って制作しています。


日下
そうですか。また作品を拝見するのを楽しみにしております。
最後に須佐さんの「あなたにとってアートとは?」いかがでしょうか。


須佐 尚康さん
生活の一部です。


日下
そうですか~!(納得)
今日は本当に素晴らしいお話をたくさんお聞かせ頂きまして、ありがとうございました。


******************************************

編集後記

 今年、須佐 尚康さんがオーナーをされている晩翠画廊が、開廊20周年とのこと、心よりお喜び
申し上げます。 私が須佐 尚康さんを存じ上げるようになったのは、私が20代半ばで河北美術展に出品するようになった頃で、その頃は須佐尚康さんが晩翠画廊をオープンされた頃でもありました。
 
 昨年1月、私は初めて東洋ワーク株式会社の社長室に須佐 尚康さんを訪ねる機会がございました。私が社内に足を踏み入れると、デスクでお仕事されている何人もの社員の皆様全員が一斉に起立して「いらっしゃいませ!」とお声かけ下さいました。

私は本当に驚きと感動を覚えましたが、そのことで須佐さんが事業の分野で大成功をおさめられ
ているというのも、私なりに理解できる思いがしました。

そして、その時に社長室の横に展示されていた作品「慈愛花」を見て、清楚な美しさと、須佐さん
の彫刻の技量、表現の豊かさにも改めて感動を覚えました。

その時の新鮮な感動と、今年9月に私が制作人生で初めての画廊での個展を晩翠画廊でさせて
頂いたことで、制作者としての須佐 尚康さんに改めてインタビューさせて頂きたいと思い、今回
みんなの学び場美術館でご紹介する運びとなりました。

日頃、画廊オーナーとして作家を応援し続けていらした須佐尚康さんですが、ご自身も子どもの頃から自然の中で培われた豊かな感性、創造性で、限られた時間の中で本当に一生懸命、真摯に制作に取り組まれていることが伝わってきてとても感動しました。

 これからは、ご自身の制作は二科展を中心に制作発表されるということですが、新しい作品を
拝見出来ることを心より楽しみにしております。 

 また、東北の作家を応援する晩翠画廊の益々のご発展を心よりお祈り申し上げます。
  
 ******************************************

■    須佐尚康(すさたかやす)さん プロフィール

・福島県金山町(奥会津)出身、仙台市太白区在住
・昭和23年(1948年)1月6日生 満69歳
・日本大学工学部卒業 
・東洋ワーク株式会社 代表取締役社長
・晩翠画廊 オーナー 
   
彫刻受賞暦
【主な受賞作品】
平成9年(1997)  河北美術展 入選 「翔太」
平成10年(1998) 河北美術展 入選 「ジャンケンポン」
平成12年(2000) 河北美術展 東北放送賞 「慈愛花」
平成16年(2004) 河北美術展 入選 「待ちぼうけ」
平成17年(2005) 河北美術展 河北賞受賞 「無言の花」
平成19年(2007) 河北美術展 東北放送賞 「夢幻花」
  〃       第93回 二科展入選 「天花」
平成20年(2008) 河北賞受賞 河北賞受賞 「美妙花」
同年より 河北美術展 招待作家に推挙される


■須佐 尚康さんが掲載されているWEBページ

東洋ワーク株式会社           
 

晩翠画廊    (須佐 尚康さんがオーナーでいらっしゃいます) 


りらく 「顔」語りシリーズ 須佐 尚康氏 - 東北情報ポータルサイト


東北障がい者芸術支援機構 代表の挨拶


須佐尚康 / 震災にたたずむ女神 | @ART




本日もご訪問、ありがとうございます。


:::::::::::::::::::::::::::::::::::