彫刻家ケイト・トムソンさん(再放送)第6回~共働制作の体験から描いた夢、公会堂アートショウ~ | みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

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生命礼賛をテーマに彫刻を創作。得意な素材は石、亜鉛版。
クライアントに寄り添ったオーダー制作多数。主なクライアントは医療者・経営者。
育児休暇中の2011年よりブログで作家紹介を開始。それを出版するのが夢。指針は「自分の人生で試みる!」

みなさま こんにちは。

彫刻工房くさか 日下育子です。

 

今日は素敵な作家をご紹介いたします。

イギリス人の女性彫刻家 ケイト・トムソンさんです。


 

ケイト・トムソンさん
片桐 宏典さん
お二人とも彫刻家であり、ご夫妻でもいらっしゃいます。


以下、2014年10月の再放送でお届けします。
前々回の日下育子からのリレーで、片桐 宏典さんに引き続き、ご登場頂きます。
     
片桐 宏典さん
     

第1回   、第1回続き  、第2回目  、第3回  、第4回  、第5回   、第6回  、第7回 

第8回  、第9回  、第9回リンク    、第10回  、第10回リンク  


ケイト・トムソンさん 
 
第1回  ~~6歳で彫刻家になると決まりました!~

 第1回続き   略歴のご紹介
 第2回  ~制作の素材と想い 石を彫り始めたきっかけと作品の中のスペースについて~ 

 第3回  ~制作テーマ① リレイティブ・パーセプションズについて~

 第4回   ~制作テーマ② 光(LED)を使った大理石の作品群について~ 
 第5回   ~社会との接点 彫刻で遊び場を創っています~


第6回目の今日は、ケイト・トムソンさんがたくさんの共働制作の体験を活かして、
インスティチュートを作りたいという夢を持っていらしたことについて、
実現したらどのような事を伝えたかったのか、お話をお伺いしました。

 

 

また、共働制作について、ケイト・トムソンさんのカタログ、アーティスト・ノートの言葉も併せて
お届けいたします。

 

どうぞ、お楽しみ頂けましたら幸いです。


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七つの旅1

 


七つの旅2


「七つの旅」
ケイト・トムソン+片桐宏典共働制作
中国産大理石
150x1050x210cmH
青森県八戸市南郷区図書館
2004

メモ
この作品は、人間の知的好奇心と柔らかな精神が、
世界に広がる文化的多様性と叡智に触れる驚きと
喜びから生まれる「知的果実」を求めて、
理想と現実世界を駆け抜ける精神の旅を象徴しています 。




 

 



「コスモス」

1.[ビックバン広場」 モノリス

 



「コスモス」

1.[ビックバン広場」


 

 




「コスモス」

1.[ビックバン広場」

 

 

 


「コスモス」

2.「現在の時空広場」

 

 




「コスモス」

2.「現在の時空広場」

 

 


「コスモス」

2.「現在の時空広場」


「コスモス」、(1.「ビックバン広場」2.「現在の時空広場」)
ビック・バン広場 - モノリス

デザイン及び制作
片桐宏典、ケイト・トムソン、用澤修、吉田昇、ルボミア・ヤネチカ、
アンディー・アルプ、岩村俊秀、清本真右、坪井常男

 

岩手産白御影石、 遠野産黒御影石

本体寸法 

1.「ビックバン広場」6.2mH x 30m x 25m
2.「現在の時空広場」 2mH x 30m x 25m

宮城県仙台市若林区元茶畑  宮城県仙台第一高等学校内
デザインから制作まで全て芸術家の共働制作によるプロジェクト
1993



 


1991-VMbering

「V.J.ベーリング記念彫刻広場」
ブロンズ像制作         ケイト・トムソン
広場のデザイン及び制作   片桐宏典

ブロンズ、白御影石、スレート
1000 x 1000 x 270 cmH

宮城県石巻市網地島白浜海岸
牡鹿町所蔵

1991

メモ
ベーリング海峡の発見者であるオランダ人探検家V.J.ベーリングが、

探検途上、金華山沖に現れ、当時の住民と交流があったこと(1735)

を記念して設立された。





 



PTA

「WALL」
パークヒルズ田原彫刻シンポジウム
山本哲三氏と共働制作
黒、白、赤御影石
大阪府四條畷市

1990


 

 





「Watch the Moon Come Down」、
(月が舞い降りるのを見よ)
片桐宏典、ケイト・トムソン共働制作作品
岩手県産白御影石
400x35x270cmH, 150x90x35cmH
1990

メモ
浜松市ゆりの木通りに計5点の作品が設置。
そのうちのひとつで二人の共働制作作品。
月の緩やかな運行をモチーフに
幾何学的なムーブメントで優雅さを表現。





 


「Journey Home」
第一回公会堂アートショウ
プラスティック段ボール、発泡スチロール、LED
2005






 




「迷路プロジェクト」
第一回公会堂アートショウ共働制作作品
ケイト・トムソン、宝池智美、工藤由美、土坂万機、福士一也

発泡スチロール、ミラーフィルム、新聞紙、木、大理石、LED
10m x 10m 2.7mH
2005




 


「In The Attic Of My Mind」
第三回公会堂アートショウ
プラスティック段ボール
2010


 

 

日下
ケイトさんは日本のみならず世界各国で制作されていますね。
また、共働制作も多数取り組まれていますね。
それらのご経験から、以前、学校を作りたいという夢を持っていらっしゃるということを
お話されていたのが、とっても印象に残っています。

 


ケイト・トムソンさん
いろいろ面倒臭いことがあり断念しました。
でも、浮島でインスティチュート、専門の研究所みたいなものを作りたいと思っていました。

 


片桐 宏典さん
学校と言っても芸大という意味じゃありません。

 


日下
仮に、その学校、研究所を作ったとしたら、そこで伝えたかったことは
どんなことだったでしょうか?


ケイト・トムソンさん
バウハウス みたいな夢があったかもしれないです。
建築家、デザイナー、創る(作る)人たちと一緒にデザインをすること。
インタラクション(相互作用)のコンセプト作る人など、
いろいろな分野の人と実験的なコラボレーションで、
実際にアイディアをカタチにすることができる研究所をと考えていました。
シンポジウムとバウハウス を一緒にしてみたいと。

 

インタラクションの学校(場)として、アイデアだけを出すのではなくて、ちゃんとそれを作ることも。
それで、次のステップをどうやって展開していくかのリサーチも出来るような場所が創りたかった。
でも、その研究所を作ったら私たち二人は、もう自分では制作に専念できず、
もうずーっとその面倒を見るだけになってしまうかもしれないと段々考えるようになりました。

 


日下
ああ~、確かにそうかもしれませんね。

 


ケイト・トムソンさん
だからインスティテュートはやめたけれど、いろいろ違うプロジェクトで、
期間限定ならそれがが出来ると考えました。

 

公会堂アートショウ などは、そのミニ版の実践でした。
ジャンルの違う芸術家と、いろいろ実験的なインスタレーションを作りました。

   

    ※岩手県公会堂【登録有形文化財】

   

 

日下
そうですか~。

 


ケイト・トムソンさん
彼(片桐 宏典さん)はいつもは石の彫刻ですが、サウンドインスタレーション をしましたね。
また、本田健さん は鉛筆画を描いてますが、お米でインスタレーションしました。
私も、発泡スチロールとかサンプライシートによるインスタレーションです。


日下
サンプライシートって、どんな素材でしょうか?


片桐 宏典さん

プラダン(プラスティック段ボール)みたいな。
それを切り抜いて折り紙みたいにしたり。
あと、モビールも作ったね。


 

ケイト・トムソンさん
そう。最初の公会堂アートショウでは、
建築科の学生たちとコラボレーションしました。


片桐 宏典さん

あのときは、プランから実現まで学生と一緒にコラボレーションです。
アシスタントとして学生を使うのではなくて、学生にも一緒にプラン出してもらって。

 


日下
そうですか~。それは素晴らしいですね。

 

 

ケイト・トムソンさん

でも、思っていたよりは、私の作品の雰囲気が出てきました。
学生はみんな、まだ自分に自信がなかったから
最初から、私のアイデアを見て似たようなアイデアを出してきたんでしょう。

 

それも良かったけど、学生たちがもう少し自信をもてるように
自分自身のアイデアをもう少し強く入れてほしかったけど・・・。
でも面白かったね。

 

あと、仙台一高のプロジェクトも彫刻家と職人さんと一緒にやりましたが、
最初のアイデアの段階では建築家もコラボレーションで入りました。

 


日下
それぞれのプロジェクトでインスティチュートの夢を実践されていて
とても素晴らしいと思います。

 


ケイト・トムソンさん

もし、自分の浮島スタジオでインスティチュート作ると、
ずーっと、最初はお金にもならなかったでしょうね。
建物作るお金すらもないですから。

 

でも今考えると、
一人ぼっちで我がままに自分のアイデアだけ考えることは結構大事です。
その暇があるとまた、コラボレーションが上手くできると思います。

 

人と一緒にコラボレーションすることは大変面白いけど、
インスティチュートが自分の制作場所になって、
ずーっとコラボレーションの生活だったら単に疲れるだけになるかも知れない。
自分のコントリビューション(提供)が出来ないんじゃない。
アイデアも段々薄くなるかもしれない。

 


片桐 宏典さん

枯れちゃうね。

 

 

ケイト・トムソンさん

うん。

 

 

日下
そうですか~。
それも共働制作の体験を数多くされてきたからこそ
仰ることができる言葉だと思います。

 

今はアートに限らず、商業活動などでもコラボレーションという言葉は、流行のように聞かれます。
私も一度は体験してみたいという憧れもありますが
やはり、個人の独創的なアイデアや力があってこそ成り立つものなのですね。
とっても貴重な体験談をありがとうございました。

 



迷宮

「迷宮」
白御影石
46x49x32.5cm
1999

 



 

ケイト・トムソンさん カタログ
『Relative Perseptions(リレイティブ・パーセプションズ)』 
P19 コラボレーション より

 

「夫、片桐宏典とのコラボレーション(共働制作)は、私たち二人の関係をぎりぎりの
限界にまで引っ張っていくという点で危険な試みにもなりうる」


「これまでに関わった、アーティストたちとの共同制作プロジェクトでは、大抵、最終的に
生まれる結果より、そこまでのプロセスの方がはるかに豊かであることが多い。
それでも時には、各人の考えをできる限り詰め込んだ安全な折衷案に終始する危険性も
非常に高い。片桐との共働制作では、お互いを充分に知り尽くしているがゆえ頑固にもなるし、
また素直にも従順にもなる。そしてどちらも自分が良いと信じるもののために真正面から
ぶつかり合い、激論をたたかわせるのだ。そしてどんな衝突に遭遇しても。お互いから最良のもの
(片桐の言葉を借りれば『プラス・アルファ』という)を引き出すことができるだけの強い絆で
結ばれている」


「共働制作は非常に興味深い、とても骨の折れる作業だが、その報酬としていつも豊かな
発想と経験を与えてくれる。ただし、こういったコラボレーションが健全に機能するためには
時折一人でじっくりとアイデアを充電し、単独制作の自信をつけることが肝要だ」

 



 


「タイム・イズ・ア・リバー」
ポルトガル大理石
30x75x5cm厚
2002

 

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編集後記

 

私が片桐 宏典さん、ケイト・トムソンさんに初めてお会いしたのは、
私が大学の副手1年目の冬に、お二人の住む岩手県岩手町にある

㈲浮島彫刻スタジオを訪問した時でした。 

 

ケイト・トムソンさんは、片桐 宏典さんと共にお二人のお子さんを育てながら、
着実に精力的に創作活動を展開してこられました。

 

私がケイト・トムソンさんからインスティチュートの夢をお伺いしたのは約10年ほど前でした。
活き活きと夢を語っていらして、私から見ると本当にスケールが大きくて素晴らしいと、
いつか詳しくお聴きしたいと思っていました。
ご自身のよりよい作品を創作し続けるために、敢えて実現しないという選択をされたのも

大きな決断だったのではないかと思います。 その後、かたちを変えて実践を継続されているのは

素晴らしいことだと思います。

 

ケイト・トムソンさんのカタログ、アーティスト・ノートから引用させて頂いた言葉も、

今の私にとってはとても感動的に響きました。

 

次回は東日本大震災直後にケイト・トムソンさんと片桐 宏典さんが主催された展覧会、
POST CARD TO JAPANについてお話をお聞かせ頂きます。

 

どうぞお楽しみに。

 

浮島彫刻スタジオ 片桐 宏典さんとケイト・トムソンさん

岩手県岩手郡岩手町浮島


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◆片桐 宏典さん、ケイト・トムソンさんのホームページ
 
浮島彫刻スタジオ 


 

 ケイト・トムソンさんのエッセイ集 (英語です。)
 

スターリング大学(イギリス)での展示
 

 ケイト・トムソンさんの紹介ページ


 スターリング大学 Corridor of Dreams  (「夢の回廊」 インタビュー動画)

 (全23分中、お二人と作品が映るのは11:30~15:30頃です。)

  

スターリング大学アートコレクション 
ケイト・トムソンさんのインタビュー  (約2分)

スターリング大学のFacebook ⇒Art Collection at the University of Stirling

        

                    ⇒ケイト・トムソンさん、片桐 宏典さんの作品

                        

 

日本・石の野外彫刻―ストーンアート写真集
  藤田観龍 著(写真)  本の泉社

  ケイト・トムソンさんの作品写真、片桐 宏典さんの作品写真と手記が掲載されています。

 

※2017年1月より Kindle版も発売になりました。

⇒ https://www.amazon.co.jp/dp/B01N25WLQ8

 

ケイト・トムソンさん 第1回続き 略歴のご紹介


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★☆ アーカイブス ☆★

学び場美術館登場作家リスト
学び場美術館登場作家リストⅡ
学び場美術館 登場作家リスト Ⅲ ー2014

 


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