目黒冬弥『メガバンク銀行員ぐだぐだ日記』 | のんびり まったり やんごとなき みやびなまいにち

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つれづれなるまゝに、日ぐらし硯に向かひて、心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書き付くれば、あやしうこそ物狂ほしけれ。

目黒冬弥『メガバンク銀行員ぐだぐだ日記』(2022)を読みました。


メガバンクに勤めている友人がそこそこいる。赤い銀行、青い銀行、緑の銀行。仕事上の付き合いもどの銀行ともあったりして、それぞれのカラーを感じることがある。ちなみに3行とも持株会社の株式を長い間保有している株主でもある。この著者はバブルの終わり頃に富士銀行に入行し、現在も現役のみずほ銀行員のようだ。友人たちの話を聞いていると、本著の話は少し脚色が強い部分が見受けられるものの、あながちウソではなく、おおむねホントの話かなと思う。


みずほ銀行のたび重なるシステム障害は多大な影響があったが、銀行は巨大な装置産業で、日々秒単位で膨大な取引が行われているので、いったんトラブルが発生してしまうととんでもない状況になってしまい、顧客に対して最前線に立つ営業現場の気苦労は相当なものだったろうと思う。3行統合の時は勘定系システムメーカーとの関係や3行の主導権争い(=勘定系システムを制するものが統合後の主導権を取れるということ)でああいう複雑怪奇な手法を取ってしまって大失敗。大震災の時のトラブルは、お粗末というか見込みが甘すぎるというほかない大失態でしたね。まったく役に立たない本部行員と現場の行員とのやりとりも興味深かったです。

そして、理不尽な上司。上司と馬が合わなければ、それだけで落伍者となってしまう。その後の銀行員生活は不遇なまま復活するチャンスはほぼゼロ。

また、労働基準監督署が入って多額の残業代が支払われたというのは聞いたことがある。

著者のようないわゆる「営業」(=ノルマ達成)の苦労とやりがいについても面白く読めた。

非常に軽快に分かりやすく書いてあるので、とても読みやすかったです。


「上司に振りまわされる仕事」 現役銀行員が暴きだす、業界の恥部と醍醐味 ―― 語らずにいられないこと
M銀行は最近、世間を騒がせるいくつかの不祥事を引き起こした。多くの行員がその対応、事後処理にあたり、私もその最前線にいたひとりだった。ニュースで報じられる事件の裏側には、現場で汗を流し、時に罵倒され、頭を下げている人たちがいる。そんな生身の姿を知ってもらいたいと思った。―― 四半世紀を超える銀行員生活で、語りたいこと、語らずにはいられないことがある。
●第1章より●
2021年2月28日、日曜日、私は家族で横浜中華街を訪れていた。午後2時すぎ、緊急連絡用の携帯電話が鳴った。「目黒課長、今、大丈夫ですか? 大きなシステム障害が起きていて、ATMが使えず、お客さんがあちこちで大騒ぎしているらしいんですよ。今から支店に来れますか?」 副支店長の慌てぶりが電話口から伝わってきた。またか……。 「システム障害」という言葉に、このさきのことを考えると心が重く沈んでいった。
●もくじ●
まえがき――犯人捜し
第1章 3度あることは、何度ある?
某月某日 緊急連絡 : 「今から来れますか?」
某月某日 統合初日の悲劇 : ATMが動かない
某月某日 統一用語集 : マウントの取り合い
某月某日 2度目 : あの日と同じ光景
某月某日 休日返上 : ちらつく不安
某月某日 回収係 : 「お金はもう手元にないんです」
某月某日 罪と罰 : ウソツキで誠実な男の約束
某月某日 社運をかけたプロジェクト : 新システムへの移行
某月某日 そして3度目 : 大混乱のリモート会議
第2章 銀行の常識は、世間の非常識
某月某日 住宅ローン審査 : 銀行員の醍醐味
某月某日 結婚の作法 : 〝披露宴レクチャー〟の夜
某月某日 人事異動は突然に : 「明日の朝から行け」
某月某日 引き継ぎ : 通訳係は姉御肌
某月某日 顔に泥 : 完璧主義者の苛立ち
某月某日 口から出まかせ : 渾身のお願いセールス
某月某日 デスクワークの正体 : 寮に帰ってすることは…
某月某日 サマージャンボ : 不安→不信→喜び
某月某日 10億円融資 : ワンチームの目標
某月某日 全国トップクラス : 「期待される」という初体験
某月某日 マンモス支店 : 仕事がない
某月某日 血も涙もない : 花形になった日陰者
某月某日 ITバブル : 回収係は使い物にならない
某月某日 エリートコース : これが銀行のヒエラルキー
某月某日 投資信託を売る : 営業キャリアの絶頂期
某月某日 サービス残業 : 問われる忠誠心
某月某日 支店長の顔色 : なぜ若手はダメになっていくのか?
第3章 営業失格!
某月某日 営業人生の終わり : なんで、なんで、なんで…
某月某日 手取り17万円 : 給料も3分の1に
某月某日 エース営業マン : 「どうしてこんなことになった?」
某月某日 寵愛 : 形骸化する「内部管理責任者」
某月某日 防犯カメラ : 印鑑紛失事件
某月某日 ある嘱託社員の死 : かけがえのない仕事
某月某日 車椅子を導入せよ : 強力助っ人、登場
某月某日 振り込め詐欺 : 犯人VS警察の攻防戦
第4章 銀行業界のナイショ話
某月某日 お詫びの品 : 「反社だったらどうする?」
某月某日 シングルマザー : アヤシイFX取引
某月某日 熱意と実利 : 途絶えたメール
某月某日 抜き打ち監査 : 私生活にまで支障が
某月某日 人事評価 : 理想の上司ってどんな人?
某月某日 セカンドキャリア : 選べる立場にありません
あとがき――たったひとつのルーティーン
【発行】三五館シンンャ/【発売】フォレスト出版
著者について
目黒冬弥(めぐろ・とうや)

バブルの終わりごろ大手都市銀行に入行。地方都市や首都圏の支店で法人営業に携わる。紆余曲折を経て、窓口事務の管理者としてメガバンクM銀行に勤務する現役行員である。