バートン・マルキール Burton G. Malkiel 『ウォール街のランダム・ウォーカー 〜 株式投資の不滅の真理 (A Random Walk Down Wall Street ) 』(50周年記念・第13版)(2023)を読みました。
エッセンスとしては「幅広く分散された株式ポートフォリオを買ってじっと持っているだけで、長期平均的にはかなり高いリターンを享受することができる 」(p114) という主張を終始行っています。また、テクニカル分析を砂上の楼閣で狂信的とし、「成功したテクニカル信者にお目にかかったことがない」(p180) などとあちこち至る所でブッタ切っています。
初版が1973年に出版され、これが50周年記念版(第13版)。
【内容紹介】 ◆全世界で読まれている「投資のバイブル」 1973年の初版以来、全米累計200万部を超え、「投資の名著」として絶賛されるベスト&ロングセラー、A Random Walk Down Wall Streetの最新版。本書の主張は「インデックスファンドへの投資がベスト」というシンプルなものだが、類書と異なる点は、なぜ他の投資方法がインデックス投資に比べて劣っているのかを、データを示してしっかり論じているところだ。過去のデータを鑑み、アクティブファンドの長期リターンが市場平均を下回ることを証明し、「猿がダーツで選んだポートフォリオを運用するのと等しい」とこき下ろすあたりは、読んでいて痛快かつ明快である。 硬派な内容でありながら、数式はほとんどなく、グラフや表を多用しており、初心者にも理解しやすくなっている。間抜けなテクニカル分析手法やチューリップからITに至るバブルの話など、読み物としても面白く読める。 ◆改訂版の特徴 原著第13版は初版から50周年の記念版。著者のマルキール氏はインフレは当面続くとみているが、その中でもこれまで示してきたインデックスファンド投資が最強という論を引き続き展開する。 新たな内容としては暗号通貨、NFT、ミーム株(オンラインコミュニティで人気になり、一時的に高値がつく株)について触れるが、これらも最終的には有効ではなく、これまでの手法の良さをさらに強調する材料となるだけである。 【目次】第1部 株式と価値 第1章 株式投資の二大流派 第2章 市場の狂気 第3章 一九六〇年代から九〇年代にかけてのバブル 第4章 二一世紀は巨大なバブルで始まった第2部 プロの投資家の成績表 第5章 株価分析の二つの手法 第6章 テクニカル戦略は儲かるか 第7章 ファンダメンタル主義者のお手並み拝見第3部 新しい投資テクノロジー 第8章 新しいジョギング・シューズ――現代ポートフォリオ理論 第9章 リスクをとってリターンを高める 第10章 行動ファイナンス学派の挑戦 第11章 「スマート・ベータ」と「リスク・パリティー」--新しいポートフォリオ構築方法第4部 ウォール街の歩き方の手引 第12章 財産の健康管理のための一〇カ条 第13章 インフレと金融資産のリターン 第14章 投資家のライフサイクルと投資戦略 第15章 ウォール街に打ち勝つための三つのアプローチ
訳者の井手正介さんが書いた『企業財務入門 』は証券アナリスト試験 の参考図書だったかな…違うかもしれませんが…20代の頃に証券投資を勉強しようと思って証券アナリスト試験でも受験してみるかと思った際に、有名だったので参考書として読みました。
また、井手さんの著書ではないですが、榊原・青山・浅野『証券投資論 』も当時の基本書だったので読みました。懐かしいです。
証券アナリスト試験に合格しましたが、毎月送られてくる『証券アナリストジャーナル 』が自宅に溜まってしまうし、仕事が死ぬほど忙しかった(いや、ほんと、マジで ) のと子どもが小さくて読む時間がなかったで、結構早く休会しました。休会すると名刺に「証券アナリスト協会検定会員(CMA)」と記載できなくなりますが、当時仕事上で付き合いのあった多くの弁護士や外資系・日系インベストメントバンカーたち(特に外国人) に対して表示するメリットは皆無だし、18,000円の年会費を払わなくてもよくなり、これまでにかなりの金額を節約できた計算です
〜 閑話休題 〜
本著はチャールズ・エリス『敗者のゲーム』 と並ぶインデックス投資を推奨する名著。マルキールさんもC.エリスさんの著書を評価しています。
英語版は50年間で200万部以上売れたそうです。 500ページを超える分量でしたが、面白いので忙しい中10日程で読みました。
50周年記念版(第13版)まえがき
本著のエッセンスが書かれています。目隠しした猿がダーツで銘柄を選ぶ話。本著の趣旨。基本的な理論「効率的市場仮説」。ランダム・ウォーク。
市場は新しい投資情報を速やかに織り込むとする考え方は、株価の変動は「ランダム・ウォーク」に近い動きを示すという見方と裏腹である。この、ランダム・ウォークという概念は、時系列の中で次に出る数字は過去の実績とは無関係であり、したがって予想は困難であるという、数学的な概念 である。(中略)「情報に関して効率的な市場」では、株価の変化を予想することはできない。株価がランダムに変動するということは、市場が気まぐれだということではない。むしろ、株価のランダム性は、市場は合理的で、適切に反応していることの証なのだ。もし株価が既知の情報を程よく織り込んでいるとすると、情報に疎く、ただ市場株価で幅広く分散投資されたポートフォリオを購入して保有するだけの投資家も、プロが手にするのと同じくらいのリターンを享受することができる のだ。 (pp7〜8)
第1部「株式と価値」 で株式投資の二大流派として「ファンダメンタル価値」学派 vs 「砂上の楼閣」学派があると。特に砂上の楼閣を築く人々を酷評。17世紀前半のチューリップバブル、イギリスの南海バブル、1920年代のアメリカのバブル、ITバブル、リーマンショックを生んだ住宅バブル、仮想通貨バブルについて約140ページにわたって解説。このあたりに詳しい人は流し読みでもOKでしょう。
株式投資にとって重要なのは、新しい産業が経済や社会をどのように変えるかとか、どれだけ規模的に大きくなるかということではない。大事なのは、その産業や企業が利益を生み出し、それを維持していく能力なのだ。歴史に照らしてみれば、行き過ぎた株式ブームというものは、遅かれ早かれ重力の法則に屈してついえる 。私の個人的経験に照らしてみても、一貫して株式市場で負け続けているのは、チューリップ・バブルの時代から繰り返される、相場の過熱に身を任せてしまうタイプの投資家 なのである。株式投資によって堅実に富を増やすことは、そんなに難しくはないのだ。後の章で取り上げるように、幅広く分散された株式ポートフォリオを買ってじっと持っているだけで、長期平均的にはかなり高いリターンを享受することができる 。ただ気をつけなければいけないのは、一夜にして大金持ちになれるかもしれないという投機の馬鹿騒ぎの中で、大切な財産を賭けたくなる誘惑に負けないことだ。 恐ろしい過ちを犯さない能力こそが、結局のところ自分の財産を守り、増やすための最も重要な条件と言えるのではないだろうか。学ぶべき教訓は単純明快だ。しかし、それを実践するのは容易ではない。(pp114〜115)
第2部「株価分析の二つの手法」 では、テクニカル分析とファンダメンタル分析について解説。マルキールさんはテクニカル分析が大嫌いで、本著のあちこちでテクニカル分析をボロクソ書いているのが面白い たくさんあるうちの一部の事例を紹介すると…
テクニカル分析は、砂上の楼閣理論に基づいて的確な売り買いのタイミングを予想しようとするものである。そして、ファンダメンタル分析は、ファンダメンタル価値理論を銘柄選択に生かそうとするものである。テクニカル分析とは何かを一口で語るとすれば、株価チャートを作り、それを解釈することだと言えるだろう。この小さいが類を見ないほどに狂信的な宗派 に属する者たちは、チャーティストあるいはテクニシャンと呼ばれている。彼らの研究対象は、株価や出来高の推移に関する過去の記録である。彼らは、それらを分析すれば、今後の相場動向を知る手がかりが得られるものと考えている。 多くのチャーティストの信ずるところによれば、株価の動きのうち、合理的に説明のつく部分はせいぜい一〇%くらいで、残りの九〇%は心理的な要因によるものである。彼らは、一般に砂上の楼閣学派に属し 、投資のゲームに勝つコツは、他のプレーヤーたちの行動を読むことだと考えている。もちろん、チャートに示されたものは、他のプレーヤーたちの過去の行動にすぎない。しかし、それを注意深く観察すれば、彼らが将来どう動こうとしているのかを知ることができるのではないかとチャーティストたちは考えている。一方、ファンダメンタル・アナリストたちはその対極に位置する。彼らは株価の動きの九〇%は合理的なものであり、心理的な要因によるところはせいぜい一〇%にすぎないと主張する。ファンダメンタル主義者にとっては過去の株価パターンなどはどうでもよく、その関心はひとえに株式の適正価値はいくらかということだけに向けられる。(中略)おそらくウォール街に勤める証券アナリストの九 〇%は、自らをファンダメンタル主義者だと見なしているだろう。そして、彼らの多くは、チャーティストのことを、プロ意識と威厳に欠けるグループだと言って軽蔑する のだ。(pp147〜148)
しんらつ
「詳細な調査によると、テクニカル信者には、穴のあいた靴や衿の擦り切れたシャツを身にまとっている者が多い ということが知られている。私個人の経験では、失敗したテクニカル信者の成れの果ては何人か知っているが、成功したテクニカル信者というものには、ついぞお目にかかったことがない 。
ところで不思議なことに、文無しになったテクニカル信者は、この道を選んだことを決して後悔したりはしないのだ。それどころか、以前にも増して熱心な信者になるのである。無礼を承知で、そういう連中が文無しになった理由を尋ねてみるがいい。おそらく彼は何のためらいもなく、「私はチャートに疑いを差し挟むという、全く人間的な、お恥ずかしい失敗を犯したのだ」と答えることだろう。みっともない話だが、私はかつて、ディナーの席で友人のチャーティストがそう答えるのを聞いて、食事を喉に詰まらせてしまったことがある。それ以来、消化に悪いからチャーティストとは食事を共にしない ことにしている。
テクニカル信者は、彼らの理論を実装することで豊かになることはできないかもしれないが、言葉の蓄えは実に豊かである。(中略)天気予報士でさえ、これよりましな予想ができるだろう 」 (pp180〜181)
テクニカル分析に対する批判が止まりません
これらのアナリストたちが どのような肩書き、あるいは蔑称で呼ばれる にせよ、そのほとんとが「ファンダメンタル学派」の信奉者であることに変わりはない。したがって、テクニカル分析の有効性に対して疑問が投げかけられたところで、これらの投資のプロにとって別に驚くほどのことではない 。ファンダメンタリストこそ、ウォール街のプロ中のプロなのだ。しかし、問題は「ファンダメンタル分析は本当に役に立つのか」ということだ。 (p212)
マルキールさんが(インデックス以外で) 提案する戦略は…
私が提案したい戦略は、市場にまだあまり知られておらず、株価収益率が市場よりも極端に高くなっていないような成長株に投資する ということである。もちろん、成長率を予想することは非常に難しい。しかし、株価収益率が低ければ、もし予想が間違って利益が減少したとしても、損失はそれに対応したものにとどまるだろう。反対に予想した成長率が実現すれば、一挙両得になるだろう。これはかなり有利な賭けではないだろうか。(中略)それでは、はじめの二つのルールを以下のように言い換えて、これまでの議論を要約することにしよう。「成長が期待でき、かつ低PERの銘柄を探そう 。もし成長が実現したら、利益成長と株価収益率の上昇による二重のボーナスが得られるため、大きな利益をもたらすだろう。将来の成長がすでに織り込みずみの高PER株には気をつけよう。もし成長が実現しなければ、利益の減少と株価収益率の低下によって二重の損失を被るからだ」 (pp175〜176)
本著の有名なフレーズはこちらですね。
「学者の中には、目隠しした猿にウォールストリート・ジャーナルの相場欄めがけてダーツを投げさせて銘柄を選んでも、プロのファンド・マネージャーと同じくらいの成果が得られる 、とまで言う者もいる」 (p213)
また、ファンダメンタル主義者にも批判的で
アナリストによる業績予想というのは、どうも占星術よりお粗末なもの のようだ(中略) 証券アナリストは、業績予想という基本的機能でさえ満足に果たすことができていない (p215)
と手厳しい。企業がいかに素晴らしい増収増益を達成しても、アナリストのコンセンサス未達によって決算発表後に株価が急落する場合が多々あり、我々投資家に憎まれていますね。あたかもコンセンサスが正しく正義みたいな風潮(コンセンサスに達しないのは、会社が悪いみたいな…) がありますが、実際の企業業績がそれ未満だったというのは、実際には無能な証券アナリストの予想が間違っていた (無能なアナリストが誤った前提を勝手に置いて、さも自分が正しいかのようなモデルをこねくり回して、「もうちょっと上げとく?」みたいな感じで作り上げた妄想の数字) だけにすぎず、私は証券アナリストが無能だと思っているので、この論に同感です。
インデックス投資のお勧め
平均的な投資信託のパフォーマンスは、広く分散投資されたインデックス・ファンドにバイ・アンド・ホールド戦略で投資した場合のパフォーマンスを上回ることができなかった のである。言い換えれば、長い期間で見ると、プロが運用する投資信託も、ランダムに銘柄を選んで作ったポートフォリオも、パフォーマンスは変わらなかった ということだ。特定の短期間をとれば、素晴らしいパフォーマンスを達成するファンドもあった。しかし、一般的に優位なパフォーマンスは長続きしなかったし、どのファンドが将来どのようなパフォーマンスを上げるのか、全く予想がつかないのだ。(中略)単純に広く分散されたポートフォリオを買って、ずっと持っているという投資戦略を上回る成績を上げることは、実はプロにとっては至難の業 なのである。(p230) 結論は単純明快だ。プロが市場平均を上回り続けることは至難だ、ということだ。まさにわらの山から一本の針を探し出すようなものだ。それより遥かに賢明な選択は、わらの山そのものをそっくり買うことだ。つまりインデックス運用だ 。嬉しいことに、ますます多くの投資家がそれを実践するようになっている。今では、個人および機関投資家の投資資金の半分以上がインデックスファンドないしインデックスETFで運用されている。そしてその比率は年々高まってきている。(p237)
第3部「新しい投資テクノロジー」 では、現代ポートフォリオ理論(MPT)や行動ファイナンスについて解説。この部分は一般的には理解するのが難しいと思いますので、サラッと流していいと思います。ベータ(β)やシステマティック・リスク、標準偏差、共分散、DCF法などを知らなくても投資はできますね…
現代ポートフォリオ理論については、3年前にW.シャープとCAPM について少しだけ書きました。さすがにCAPM(Capital Asset Pricing Model) を知らないアナリストは皆無というくらい有名な理論で、実務上も大切な考え方です。H.マーコヴィッツ、W.シャープ、M.ショールズ、F.ブラック、ファーマ&フレンチのマルチ・ファクター・モデル、S.ロスの裁定価格理論(APT)など(Journal of FinanceやJournal of Financial Economicsなど主要な学術誌に収納されている) かなり多くの量の論文を読んで勉強したことがあるので、私はバリバリのアカデミックな要素も含めたファンダメンタル主義者です
もちろん、かなり勉強したからこそ 計測不能な指標や恣意的に用いられる変数の存在などモデルに限界があることを理解しているので、実務上うまく使う必要がありますがね。数学や統計学を使った小難しくアカデミックな議論を理解していても、実際に投資で勝てるかどうかは別問題ですから。有名な事例だと、ノーベル経済学賞を受賞したマイロン・ショールズとロバート・マートンが経営陣として参画したLTCMは、ロシア経済危機のあおりを受けて1999年に破綻しましたからね… あくまで謙虚に冷静に分析することが重要です。
行動ファイナンス学派による研究成果を踏まえて…過去のトレンドで将来が分かるというのは幻想だと…
自分はある程度結果を左右できるという幻想が、投資家をポートフォリオの中の負け犬銘柄にこだわらせる のだ。そしてその延長線上で、ありもしない株価トレンドや、将来の株価を予測する株価パターンの存在を信じるようになる 。実際、何とか過去の株価データから将来を予測できる可能性を探るために多大な努力がなされてきたにもかかわらず、時間軸の上での株価の動きはきわめてランダムで、将来の株価は基本的に過去とは無関係 なのだ。 (p296)
損切りできない投資行動について
多くの投資家が損失の発生している銘柄を持ち続けるのは、やがて株価が回復し、後悔の念を回避できると期待するからだ。こうした自尊心と後悔の念を回避したいという願望が強いため、投資家はしばしば損をしている銘柄を保有し続け、儲けの出ている銘柄から手放すのだ。(中略)個人投資家は、値上がりした銘柄を処分し、値下がりしている銘柄は持ち続けるという、はっきりした選好を持っているのだ。うまくいって値上がりした銘柄を売れば売却益が得られ、自尊心は大いに満たされる。逆に値下がりしている銘柄を売れば、現実に摂失が発生し、自尊心も大いに傷つく。これはプロスペクト理論によれば、同額の利益の何倍かに匹敵するダメージになる。 こうした損失回避行動は、合理的な投資理論の下では明らかに最適な選択ではない。常識的に言っても馬鹿げているように見える。 (p306)
C.エリス『敗者のゲーム 』に言及。また、最近のキオクシアをはじめとするAI・半導体銘柄の急騰・急落に対しても含蓄のある主張です。
長年株式市場を観察し、『敗者のゲーム』という素晴らしい投資の教科書を著したチャールズ・エリスは、アマチュアのテニス・ゲームは勝者の見事なスマッシュによってではなく、敗者が自滅することによって勝敗が決まるのだと喝破している。株式投資もまさにそうなのだ。エリスに言わせれば、ほとんどの投資家は、本書で説くように消極運用によってインデックス・ファンドを長年保有する代わりに、誤ったいろいろな投資戦略に打って出て墓穴を掘る。ほとんどの投資家がこうした行動をとる限り、株式投資もまた敗者の自滅が勝負を決める「敗者のゲーム」なのだ。あなたが買うハイテク銘柄が右肩上がりで上昇を続けた二〇〇〇年の初めには、自分は投資の天才だと思い込んだに違いない 。そしてまた、直近期に最も目覚ましい値上がりを示した投資信託を追いかけることこそ、ベストな投資戦略だと確信したことだろう 。正業を投げ打ってデイトレーダーの道を選んだ諸君にとっては、朝の一〇時に買った銘柄が正午には一〇%も値上がりしているのを見る喜びはいかばかりだったろう。しかし今となっては、これらはすべて誤りだったことがはっきりした のだ。頻繁に売買を繰り返す投資家のパフォーマンスは例外なく、じっくりバイ・アンド・ホールドを続ける投資家よりも劣っている 。 (中略)地道に幅広い銘柄に分散投資したインデックス・ファンドを辛抱強く持ち続ける投資家こそが勝利を手にする 。自分を敵に回してはいけない。つまらない投資戦略を弄してはいけない。(pp315〜316)
第4部「ウォール街の歩き方の手引き」 では、「財産の健康管理のための10ヵ条」や「投資家のライフサイクルと投資戦略」、(米国の財政や制度に基づいた議論になっているのですが) 投資戦略を個人を3パターンに分けて推奨しています。
全体的に様々な事例と数値を挙げて、チャーティストやファンダメンタリストを酷評しているのは痛快ですが、論文を読み慣れた身としては、 その記述や事実がどの論文なのかまで特定して書いてほしかったかなと…その方がもっと素晴らしいと思いますが、これは論文ではないので仕方ないですかね。
というわけで、500ページ超の著書ですが、基本的には手数料の少ないインデックス・ファンドをドルコスト平均法で長期間コツコツと積み立てることこそが投資の王道で負けない戦略だと一貫して主張しています。驚くべきは、初版が出た1973年にはインデックス・ファンドがまだこの世の中になく、インデックス投資を推奨したということ 本著の初版から3年後の1976年にインデックス・ファンドがヴァンガードにより誕生したそうです(注) 。
(注)Chat GPTによると、1971年にWells Fargoのマネジメント・サイエンス部門が、Samsoniteの年金基金向けにインデックス運用を行うファンドを作ったのが最初だそうです。これは機関投資家向けなので、個人向けには1976年のVanguardが最初ということのようです。
アカデミックな現代ポートフォリオ理論などの議論は一般的には理解しにくいのでそこは読み飛ばしてもかまわないし、最初のバブルの歴史も知っている人には退屈なのですが、読んでみて損のない名著だと思います。