三浦しをん『墨のゆらめき』 | のんびり まったり やんごとなき みやびなまいにち

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つれづれなるまゝに、日ぐらし硯に向かひて、心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書き付くれば、あやしうこそ物狂ほしけれ。

三浦しをん『墨のゆらめき』(2023)を読みました。

 

実直なホテルマンは奔放な書家と文字に魅せられていく。書下ろし長篇小説!
都内の老舗ホテル勤務の続力は招待状の宛名書きを新たに引き受けた書家の遠田薫を訪ねたところ、副業の手紙の代筆を手伝うはめに。この代筆は依頼者に代わって手紙の文面を考え、依頼者の筆跡を模写するというものだった。AmazonのAudible(朗読)との共同企画、配信開始ですでに大人気の書き下ろし長篇小説。

 

【オーディオファースト作品】直木賞作家・三浦しをんによるAmazon オーディブル書き下ろし小説。
小さなホテルに勤める続力(つづき・ちから)は、顧客の「お別れの会」の案内状の宛名書きを依頼するため、町で書道教室を営む遠田薫(とおだ・かおる)のもとを訪れる。遠田はなにやら過去のありそうな男だが、さまざまな筆跡を自在に書きこなす腕前の持ち主だった。続が文面を考え、遠田がそれを書き記す形で、二人は協力して手紙の代筆業をはじめることになるのだが――。


風が強く吹いている』(2006)に感動した三浦しをんさんの最新作。とても面白い。

他人から話しかけられやすい雰囲気の真面目なホテルマン続と奔放ながらも書道に秀でた能力を持つ遠田との交流。つかず離れず互いに距離があるけれど、実は互いに大切に思っている適度で気持ちいい距離感なのかな。そして、互いに認め合っていて信頼もある。私も大人になってベタベタした関係がほぼないからその心地良さに共感を覚えるのかもしれない。


また、自分には全くセンスの欠片もない書道の筆の動きや墨の匂いまでも感じるところがまたいい。中盤まではのんびり来て、終盤にかけて急速に畳み込んでくる流れも良くて、とても面白かったキラキラ