Die Frau ohne Schatten @ ウィーン国立歌劇場(June 6) | のんびり まったり やんごとなき みやびなまいにち

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つれづれなるまゝに、日ぐらし硯に向かひて、心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書き付くれば、あやしうこそ物狂ほしけれ。

今回のウィーンetc.旅行の最大の目的は『影のない女』を2回観ること。ウィーン国立歌劇場で、猛烈に感動した6月2日(日)の公演に続いて、6日(木)にもう一度『影のない女 Die Frau ohne Schatten』を観ました。

   
当日は、朝からシュテファン聖堂に上り、プラフッタで最高に美味しかったターフェルシュピッツを食べ、シェーンブルン宮殿の庭園を楽しんだ後、ホテルでお昼寝して夜の公演に向けて準備万端。ホテルからStaatsoperまで徒歩圏内なので歩いて行く…

Staatsoperの近くを歩いていると、(人類で最も美しいと思っている)Natascha Mairさんとたまたま遭遇。翌日の公演のリハーサルが終わったばかりのよう。何という幸運ラブ 1年前の渋谷駅以来の再会ですが、覚えてくれていた。「明日の公演を楽しみにしているよ」と伝えてさよなら。
 
Staatsoperの外壁に掲示されていた配役表がこちら。何気なく撮影したのですが、その時私は左下にあるピンク色の小さな紙に気がつかなかった… 気づいたのは帰国後…
 
この小さなピンク色の紙で30分後に衝撃を受けることなどつゆ知らず…ガーンガーンガーン
  
座席は、Parterre Loge。日本で言うと、2階サイドの舞台にかなり近いボックス席の最前列(第3カテゴリー)。3席あるうちの真ん中で、舞台が近くて見やすい上に、平土間席Parkettでは見えにくい指揮者とオーケストラがよく見えるとてもいい席だったので大満足。

 
  
冒頭にStaatsoper総裁Dominique Meyerが登場して挨拶。イヤな予感。ドイツ語なので分からないが、客席から何度か笑いが起こっているので問題ない(よくある「風邪気味だけど問題がないので出演する」っていう主催者による言い訳の挨拶)のかと思ったのですが、やはりキャスト変更みたい。お隣の現地の婦人に聞くと「複雑な内容で説明出来ないけれど、3人のキャスト変更で、カット版を採用するみたいよ」とガーンガーンガーン やっぱりなぁ… ドイツ語は分からないけど、なんとなくそんな感じのことを言ってたガーンガーンガーン 本作品は、第3幕で乳母とバラク夫妻とのやり取りがカットされることは珍しいことではない。実際、2日に観た時も、そのあたりの演出にぎこちない部分があるなと思ったのでカットについては問題ないのですが…

4日前の公演で歌ったバラクの妻Nina Stemme、乳母Evelyn Herlitzius、伝令使Sebastian Holecekの3人が降板し、それぞれの代役を務めたのは、Rebecca Nash、Linda Watson、Wolfgang Bankl。予想どおり、通常実施される第3幕の一部がカットされた。3人揃って病気というの考えられないので、C.Thielemannの意向で意に沿わないところを変えたのでしょう。何をおいても、N.Stemmeの降板が一番ショックガーン 気持ちの整理が全然つかないまま第1幕が終わってしまうくらい残念だった。

それにしても、皇后Camilla Nylundが素晴らしすぎる爆笑 4日前はN.Stemmeとの豪華共演だったが、Stemmeがいないのでまさに独擅場で圧倒的な存在感。Stemmeがいない分をカバーすべく、世界的ソプラノの実力と気迫がビンビン伝わってきて格の違いを見せつけた。4日前の公演の時よりもはるかに凄みがあった。むしろこれを聴けたのはStemmeの不在ゆえかもしれない。公演後、彼女もそのつもりで気合いを入れて歌ったと言っていたそうです。

Stemmeの代役Rebecca Nashはウィーン国立歌劇場デビューとなった。確かに最初は堅かったし、それがゆえに私の第1幕のショックも大きかったわけですが、尻上がりに調子を上げていった。とても見事で、カーテンコールでも観客は(本当はStemmeを聴きに来た人ばかりだけれど)ブーイングは一切なく、優しく拍手を送っていたのがよかった。

乳母の代役はLinda Watson。Staatsoperでのロールデビューだそうです。やはり、冒頭の部分は、4日前のHerlitziusとの違いが気になってしまい、平常心で聞けなかったガーン 個人的にはHerlitziusの方が好みですが、Watsonは見事に代役を務めたと思う。

Stephenはもう何も言うことがない。世界最高クラスのテノールであると再認識した。4日前の公演と同様に、ものすごい声量。

ティーレマンThielemann指揮のオーケストラが素晴らしすぎる。世界一の指揮者とオーケストラ。豊かな音。たっぷりと歌わせるので、感動がひとしお。コンマスVolkhard Steudeのソロ、第2幕第2場への間奏曲などチェロのソロも素晴らしい。鷹の声を表すオーボエHerbert Maderthanerもめちゃくちゃ巧い。見えにくかったが、クラリネットはOttensamerだったと思う。とにかく、最愛の作品を2回観ることができて幸せだ。


また、カーテンコールの際に、Camillaへの宮廷歌手の授与が発表されて、結構長い時間お祝いがあった。



2019年6月6日(木)18:00 - 22:15  2 intermissions
Richard Strauss "Die Frau ohne Schatten"
 
 
Conductor:Christian Thielemann

Director:Vincent Huguet
Set design:Aurélie Maestre
Costumes:Clémence Pernoud
Licht und Video:Bertrand Couderc
Dramaturg:Louis Geisler

Der Kaiser:Stephen Gould ステファン・グールド
Die Kaiserin:Camilla Nylund カミラ・ニールント

Die Amme:Linda Watson リンダ・ワトソン
Geisterbote:Wolfgang Bankl

Barak:Wolfgang Koch ウォルフガング・コッホ
Sein Weib:Rebecca Nash レベッカ・ナッシュ

神殿の門衛 Hüter der Schwelle des Tempels:Andrea Carroll
青年の幻影 Erscheinung eines Jünglings:Benjamin Bruns
鷹の声 Die Stimme des Falken:Maria Nazarova
天上の声 Eine Stimme von oben:Monika Bohinec
バラクの3人の弟
Der Einäugige:Samuel Hasselhorn
Der Einarmige:Ryan Speedo Green
Der Bucklige:Thomas Ebenstein

   
レベッカ・ナッシュが(今回と役は違うけれど)皇后を歌った映像を見つけたので貼っておきます。

  
ちなみに、さらにその4日後の10日(月)の公演では、N.StemmeとE.Herlitziusが歌ったそうです(伝令使は不明)が、Thielemannはやはり元に戻した方がいいと思い直したのかな。あるいは、カバーの3人を試してみたかったのか、3人に休養を与えたのか。真相は謎です。