Die Frau ohne Schatten @ ウィーン国立歌劇場(June 2) | のんびり まったり やんごとなき みやびなまいにち

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つれづれなるまゝに、日ぐらし硯に向かひて、心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書き付くれば、あやしうこそ物狂ほしけれ。

ウィーン国立歌劇場の開場は1869年5月25日。先月は150周年記念のお祝いムードで歌劇場のSNSで多数発信されていました。ちょうど150年目にあたる5月25日に "Haus am Ring" 150周年特別ガラ公演としてプレミア上演されたのが、私が愛してやまない最愛のオペラ『影のない女 Die Frau ohne Schatten』。今年がウィーン国立歌劇場で初演されてからちょうど100年にあたります。5月25日、30日ときて、3回目の公演を6月2日(日)に現地Wiener Staatsoperで観てきました。
(公演プログラムの表紙)
   
  
歌劇場中央の階段。久しぶりにここに来たのだと懐かしい感じがしました。カーペットの色が質素。

   
  
   
   
座席は平土間席Parkettの7列目(2nd カテゴリ最前列)という狙いどおり絶好の席。しかも、前の列に背の高い人がいないので、舞台がよく見える。これを通常のルートにより定価€209で取れたのは奇跡。
   
ウィーン国立歌劇場は、日本式で言うと6階席まであります。客席は一昨年に行ったバイエルン国立歌劇場と比べると地味な印象。また、Parkettについて言えば、とてもコンパクトな設計で、1列目から最後列の18列目(3rd カテゴリ)までの距離が新国立劇場(最後列は22列)と比べると驚くほど短い。ご存じの方も多いかと思いますが、最近日本語字幕が手元の画面に表示されるようになりました。
   
上演中でなければ、写真撮影しても問題ないようです。結構多くの人が撮影していました。写真を撮ってあげたら「あなたも撮ってあげるわよ」と…お言葉に甘えて。スーツはLost baggage中のスーツケースの中なのでスーツ姿ではありません…ガーン
    
    

   
本作品は大編成のオーケストラが必要なので、ピットに入りきらないくらいぎゅうぎゅう詰め。
  
打楽器は上手の奥で演奏していました。
  
2019年6月2日(日)17:30 - 21:45  2 intermissions
Richard Strauss "Die Frau ohne Schatten"
Premiere: 25. Mai 2019
Reprisen: 30. Mai 2019, 2., 6., 10. Juni 2019
   
指揮C.Thielemann ティーレマン、皇帝S.Gould グールド、皇后C.Nylund ニールント、バラクW.Koch コッホ、バラクの妻N.Stemme シュテンメ、乳母E.Herlitzius ヘルリツィウスというこれ以上望むべくもない超豪華な布陣。これまでに何回となくオペラを観てきて、『影のない女』を実演で観るのも5回目だが、最高に感動した。すべてが素晴らしかった。文章で表現することのできない異次元の体験だった。

冒頭のカイコバートのモチーフがズンズン響く。4日後に再度観た時に分かったのですが、コントラバスが8人いて、低音を響かせていたことが分かります。最初の乳母Herlitziusからもう涙目アセアセ
  
皇帝Stephen Gould、皇后Camilla Nylundが高い場所から歌うので、輝かしい声が平土間席にいる自分に降り注ぐ感じになるあたりも神々しい印象を受ける。7列目ということもあり声がダイレクトに伝わってくるのだが、オケの強奏をものともせず、声をはりあげることなく美しいままに突き抜けてくる声量と声質には驚かざるをえない。


皇帝があまり目立つ役でないのがもったいない。
  
第2幕のモノローグ。矢か剣か手か。本作品の中で唯一イマイチよく分からないところだが、皇帝の歌が聴ける貴重な場面。1年前の新国立劇場『フィデリオ』の終演後に開催されたシーズンエンディングパーティで、彼に「来年観に行くからね」と約束していたのが実現してとても嬉しいし、彼もそれを覚えていてくれた。
   
バラクWolfgang Kochの妻を思う温かみのある深い歌にもただただ感動。2017年7月にバイエルンで聴いた時(こちら)も彼だったが、より一層感動的だった。弟たちを思う優しい兄。

妻への優しさも。

   
バラクの妻Nina Stemme。2016年11月のウィーン国立歌劇場来日公演『ワルキューレ』で聴いたブリュンヒルデ以来。ヒステリックな役柄なのでキンキン声になりがちなところを美しい声のままに出せるところが超一流歌手。演技力もあって、ものすごい存在感。第2幕最後の「私はやっていない」では歌も演技も素晴らしすぎて泣けて仕方なかった笑い泣き
  
乳母E.Herlitziusとのやり取りで、現状に大きな不満を持ってヒステリックになったり、自由で裕福な暮らしを夢見る複雑な心境を見事に表現していた。
   
 
   
第3幕「Schweigt doch 黙っていてください」、それに続くバラク夫妻の「Mir anvetraut 私に委ねられた」でもただただ感動して泣けた笑い泣き KochとStemme最高!
  
本作は皇后の成長物語だが、それをCamillaは第1幕から第2、第3幕と見事に歌い分けている。ただただ乳母と皇帝のもとでぬくぬくと生活していた第1幕。
   
バラク夫妻と出会って苦悩し、葛藤する。
  
バラクの苦悩に、影を彼の妻から買い受けることに疑問を感じ始め、バラクに寄り添う。
  
   
第3幕 魔界への入口。いつまでも人間を理解しようとしない乳母と決別して、父カイコバートに影などいらないと…
 
  
皇帝が石になるあたりも感動して泣けた笑い泣き
   
伝令使S.Holecekも、出番が少ないが素晴らしい存在感。
    
青年の幻影Benjamin Brunsの輝かしい艶のある声にも驚いた。舞台裏で歌っているのだが、舞台上には全裸(モロ出しびっくりの幻影が登場。事前にOTTVIAの有料放送で見ていたとはいえ、まさか本当に全裸で登場させるとは…全体的にオーソドックスな演出だったが、ここは全裸の男性を出す必要性を感じなかった(ぜひBlu-rayを販売してほしいのですが、この映像は不要)。
 
そして、C.Thielemannの指揮とウィーン国立歌劇場管弦楽団の演奏は何と表現していいのか分からない。とにかくただ美しい。迫力も尋常じゃない。低音がビンビンと響いてくるし、強奏しても音が割れず、ふくよかで艶のある音は感動的。コンマスのシュトイデをはじめとする最高のメンバーによる最高の演奏だった。

       
   
Director | Vincent Huguet
Set design | Aurélie Maestre
Costumes | Clémence Pernoud
Licht und Video | Bertrand Couderc
Dramaturg | Louis Geisler

Der Kaiser | Stephen Gould
Die Kaiserin | Camilla Nylund
Geisterbote | Sebastian Holecek
Sein Weib | Nina Stemme
神殿の門衛 Hüter der Schwelle des Tempels | Andrea Carroll
青年の幻影 Erscheinung eines Jünglings | Benjamin Bruns
鷹の声 Die Stimme des Falken | Maria Nazarova
天上の声 Eine Stimme von oben | Monika Bohinec
バラクの3人の弟
Der Einäugige | Samuel Hasselhorn
Der Einarmige | Ryan Speedo Green
Der Bucklige | Thomas Ebenstein
1. Stimme der Ungeborenen | Ileana Tonca
2. Stimme der Ungeborenen | Mariam Battistelli
3. Stimme der Ungeborenen | Virginie Verrez
4. Stimme der Ungeborenen | Szilvia Vörös
5. Stimme der Ungeborenen | Bongiwe Nakani
1. Solostimme | Ileana Tonca
2. Solostimme | Mariam Battistelli
3. Solostimme | Virginie Verrez
4. Solostimme | Szilvia Vörös
5. Solostimme | Bongiwe Nakani
6. Solostimme | Zoryana Kushpler
   

  
素晴らしい公演
   
最愛の作品を100周年の記念すべき年に、初演されたウィーン国立歌劇場で観ることができたことはとても幸せ。