こんにちは、弁護士の鵜飼です。
政治資金規正法違反罪で起訴された民主党の小沢一郎元代表に無罪判決が言い渡されました。
今回、注目したい点は、元秘書との「共謀」の有無の認定でしょう。
新聞報道もされているように、判決では、小沢一郎元代表の違法性の認識が立証されてないこと、元秘書らとの共謀があったとは認められないことを指摘して、「共謀共同正犯」の成立を認めませんでした。
この共謀共同正犯とは、二人以上の者が一定の犯罪を実現することを共謀し、共謀した者の一部の者がその犯罪を実行した場合には、実行行為に関与しなかった者も含め、共謀者全員について共同正犯が成立することをいいます。
分かりやすくいうと、自分は直接犯行に及んでないけど、自分の指示に従って部下がやったということです。
でも、この「共謀」は、自白がなく関係者すべて否認している場合には、立証が困難なのです。
もっとも、関係者がすべて否認していて、状況証拠だけで「共謀」を認定した事件はあります。例えば、有名な最高裁決定としては、平成15年の「スワット事件」がありますね。
この「スワット事件」は、山口組の組長が配下の組員(スワットと呼ばれていた)に拳銃を携行して警護するよう直接指示していなかったのですが、そのスワットが組長自身を警護するために拳銃を所持していることを「確定的に認識し、当然のこととして受け入れて認容していた」と判断した事件です。
組長と組員が直接話し合ったことを示す物的証拠も供述もなく、組長とスワットの間に「黙示的に意思の連絡があった」として、共謀共同正犯が成立するとしたのです。
指定弁護士側(つまり、今回の検察官役)も、このスワット事件を論告で引用し、虚偽記載につき「小沢被告が確定的な認識があってこれを認容し、元秘書も認容されていることを承知していれば、謀議の日時を特定できなくても共謀共同正犯が成立する」と主張しておりました。
しかし、「疑わしきは被告人の利益に」の原則からすると、拳銃所持が状態化していたと思われる山口組の事件と同じように安易に「共謀」を認定をしてしまうことは難しいでしょうね。
弁護士仲間で予想していた通り、やはり無罪の判決になりました。
(渋谷駅徒歩2分の法律事務所)