ヒラメ男とサイヤ人その4
(続き)
部屋に入って確認すると、ヒラメ男に握られてた手首に、指の跡が赤くはっきりついていた。ズキズキと痛かった。
それを見たら、改めてゾッとした。
そして、ゾッとする以上に悔しかった。
悔しい。
悔しい。
あんなに本気で暴れても、男の手たった一本さえも振りほどけなかったのだ。むしろ、暴れれば暴れるほど、男は手首をがっちり食い込むほど握ってきた。
力で負けてしまうという事実が悔しい。小柄だから舐められたのか。何もかもが悔しい。
助かったのはたまたまだ。私の抵抗があったからじゃない。
私が暴れても殴っても、ヒラメ男はあの時点で私を殴り返そうとはしなかったし、たまたまタイミング良く助けも入った。
もしヒラメ男が殴り返してくるタイプだったら?
もし助けがこなかったら?
もし車のなかに引きずりこまれてたら?
恐怖と、それ以上の悔しさで、泣いた。
以来、軽くトラウマだ。
歩く私の真横で車が止まると、反射的にビクッとする。
後ろを男の人が歩いてると警戒してしまう。
背後を歩かれるのも、少しずつ近寄ってこられるのも怖いので、立ち止まってメールを打つふりをして、私を抜き去ってくれるのを待つ。
抜き去る瞬間まで軽く緊張しつつ、疑いの目で見てしまう。
何の他意もない大多数の男性には申し訳ない話だけど、こればっかりは女にしか分からない恐怖だと思う。
うちに来た警察の人を見送りながら、改めて気を引き締め直した。
現実に、被害にあってる女性がいるのだ。しかも近所に。
そういうニュースを見聞きするたびに、いつも、こいつら何考えてるんやろ?と思う。生きてる価値ないよ。死刑にすべきだよ。死ねばいいと思うよ。死ね死ね。
部屋に入って確認すると、ヒラメ男に握られてた手首に、指の跡が赤くはっきりついていた。ズキズキと痛かった。
それを見たら、改めてゾッとした。
そして、ゾッとする以上に悔しかった。
悔しい。
悔しい。
あんなに本気で暴れても、男の手たった一本さえも振りほどけなかったのだ。むしろ、暴れれば暴れるほど、男は手首をがっちり食い込むほど握ってきた。
力で負けてしまうという事実が悔しい。小柄だから舐められたのか。何もかもが悔しい。
助かったのはたまたまだ。私の抵抗があったからじゃない。
私が暴れても殴っても、ヒラメ男はあの時点で私を殴り返そうとはしなかったし、たまたまタイミング良く助けも入った。
もしヒラメ男が殴り返してくるタイプだったら?
もし助けがこなかったら?
もし車のなかに引きずりこまれてたら?
恐怖と、それ以上の悔しさで、泣いた。
以来、軽くトラウマだ。
歩く私の真横で車が止まると、反射的にビクッとする。
後ろを男の人が歩いてると警戒してしまう。
背後を歩かれるのも、少しずつ近寄ってこられるのも怖いので、立ち止まってメールを打つふりをして、私を抜き去ってくれるのを待つ。
抜き去る瞬間まで軽く緊張しつつ、疑いの目で見てしまう。
何の他意もない大多数の男性には申し訳ない話だけど、こればっかりは女にしか分からない恐怖だと思う。
うちに来た警察の人を見送りながら、改めて気を引き締め直した。
現実に、被害にあってる女性がいるのだ。しかも近所に。
そういうニュースを見聞きするたびに、いつも、こいつら何考えてるんやろ?と思う。生きてる価値ないよ。死刑にすべきだよ。死ねばいいと思うよ。死ね死ね。
ヒラメ男とサイヤ人その3
(続き)
誰かに気づいてもらおうと大声出しながら暴れてたけど、頭は比較的冷静で、一瞬で色んなことを考えてた。
レイプされる?大人しくしてたらレイプだけで済む?それとも殺される?最後まで抵抗したほうが助かる確率は高い?どうしたら助かる?ヤバイ、分からん。
てか国道を走ってる車の中の人たち、なんで誰も気づかないの?気づいてるけど、ただの痴話喧嘩だと思って無視してんの?
とにかく車に引きずりこまれたら会話しよう。会話でこのヒラメの性格を探ろう。性格探って傾向と対策を練ろう。
落ち着け私、とにかく落ち着け。
「こらー」という声が遠くで聞こえた。
道路の反対側で、学生服を着た二人連れが、こっちを見ていた。国道をぶっ飛ばす車の波が途切れたら渡ってくるつもりなのが分かった。てか途切れないのに無理やり渡ろうとしてる。
私は「助けて!」と絶叫。
ヒラメ男はこの状況はマズイと思ったのか、私をパッと離して、ダッシュで車のほうへ逃げた。エンジンをかけっぱなしにしてた車は、そのまま素早く立ち去った。
「逃げんなアホ!」と追いかけようとした私は、自分の力量が分かってないアホです。
車のナンバーを確認しようとしたけど、コンタクトも眼鏡もつけてなかったから見えなかった。くそっ!
学生服二人連れは、遅れて到着。ヒラメ男を取り逃がしたのを悔しがりながら、私に「大丈夫?怪我してない?」と声をかけた。
その声で一瞬にして戦闘スイッチが切れた。
ああ…助かった。
へたりこもうとする私を一人が支えてくれた。
安心した。気が抜けた。
恐怖が今さらのように訪れて、ブワッと涙が出た。年下の学生くんの前で、恐怖でぽろぽろ涙をこぼしてる自分なんて、想像したこともない状況だ。
でもどうにも止まらなかった。
足が生まれたての小鹿のようにガクガクし始めて、立ってるのも難しかったのだ。
このヘタレっぷり、どうやら私はサイヤ人の落ちこぼれだったみたい。
学生くん二人は、私が落ち着くまで、「もう大丈夫やで?」「お姉さん怖かったんやな」と、まるで子供を相手にするような言葉を掛けながら待ってくれた。ガッデム、一生の不覚だ。
お礼を何度も言う私を、彼らはマンションの玄関前まで送ってくれた。
後悔したのは、興奮してて彼らの連絡先を聞き忘れたことだ。改めてお礼がしたいのにできない。いまだに後悔してる。ありがとう、ごめんなさい。
(続き)
誰かに気づいてもらおうと大声出しながら暴れてたけど、頭は比較的冷静で、一瞬で色んなことを考えてた。
レイプされる?大人しくしてたらレイプだけで済む?それとも殺される?最後まで抵抗したほうが助かる確率は高い?どうしたら助かる?ヤバイ、分からん。
てか国道を走ってる車の中の人たち、なんで誰も気づかないの?気づいてるけど、ただの痴話喧嘩だと思って無視してんの?
とにかく車に引きずりこまれたら会話しよう。会話でこのヒラメの性格を探ろう。性格探って傾向と対策を練ろう。
落ち着け私、とにかく落ち着け。
「こらー」という声が遠くで聞こえた。
道路の反対側で、学生服を着た二人連れが、こっちを見ていた。国道をぶっ飛ばす車の波が途切れたら渡ってくるつもりなのが分かった。てか途切れないのに無理やり渡ろうとしてる。
私は「助けて!」と絶叫。
ヒラメ男はこの状況はマズイと思ったのか、私をパッと離して、ダッシュで車のほうへ逃げた。エンジンをかけっぱなしにしてた車は、そのまま素早く立ち去った。
「逃げんなアホ!」と追いかけようとした私は、自分の力量が分かってないアホです。
車のナンバーを確認しようとしたけど、コンタクトも眼鏡もつけてなかったから見えなかった。くそっ!
学生服二人連れは、遅れて到着。ヒラメ男を取り逃がしたのを悔しがりながら、私に「大丈夫?怪我してない?」と声をかけた。
その声で一瞬にして戦闘スイッチが切れた。
ああ…助かった。
へたりこもうとする私を一人が支えてくれた。
安心した。気が抜けた。
恐怖が今さらのように訪れて、ブワッと涙が出た。年下の学生くんの前で、恐怖でぽろぽろ涙をこぼしてる自分なんて、想像したこともない状況だ。
でもどうにも止まらなかった。
足が生まれたての小鹿のようにガクガクし始めて、立ってるのも難しかったのだ。
このヘタレっぷり、どうやら私はサイヤ人の落ちこぼれだったみたい。
学生くん二人は、私が落ち着くまで、「もう大丈夫やで?」「お姉さん怖かったんやな」と、まるで子供を相手にするような言葉を掛けながら待ってくれた。ガッデム、一生の不覚だ。
お礼を何度も言う私を、彼らはマンションの玄関前まで送ってくれた。
後悔したのは、興奮してて彼らの連絡先を聞き忘れたことだ。改めてお礼がしたいのにできない。いまだに後悔してる。ありがとう、ごめんなさい。
(続き)
ヒラメ男とサイヤ人その2
(続き)
そのまま歩いてた私は、二、三メートル先に横に車が横付けされるのを、目の端で捉えた。
その車から男が降りてきて、私のほうへドカドカッと近づいてきた。
な、なになに?!
焦って反射的に背中を向けて逃げようとした私に、男は背後からガシッと抱きついた。そして胸を乱暴に揉んだ。正確には、私のあるかないか分からない可愛いオッパイ50%と、ブラに入ってるパット50%を。
「ちょっと!やめてよ!」と身をよじって逃れようとした。
同時に「うわ、キチガイだ、キチガイを怒らせたらマズイ、何されるか分からん、対応気をつけなきゃ、穏便に穏便に…」という意識も働いた。
でも、「離してください!」と言いながら身をよじってもよじっても、ヒラメ男は抱きついたまま離さない。
な、なんやコイツ!
ヒラメ男はやっと抱きつくのをやめると、私の左の手首をギュッと握って、路上に置いてある車のほうへ引っ張ろうとした。
ぐっと足を踏ん張った私と、綱引きのような形になった。
ヒラメ男はすごい力で引っ張ってて、踏ん張りがきかなかった。
私はズルズルズルッと何歩か引きずられた。
ぶっちーん!
なんやこいつ!!
血が沸騰した。
恐怖より怒りが先に来た。さすが私。
相手を怒らせたらマズイなんて意識は、一瞬にして吹っ飛んだ。
戦闘モードにスイッチが入った。
頭のなかでゴングが鳴り、ロッキーのテーマが鳴り響く。
私の前世は戦闘民族サイヤ人に違いない。
私は綱引きを止め、ヒラメ男のほうに向かって足を踏み出した。
私を引っ張ってたせいで軽くバランスを崩したヒラメ男の顔面を、持ってた鞄で思いっきり殴りつけ、サオとタマをまとめて蹴り上げようとして避けられ、避けられたことに腹を立てて「キモいわ!シネ!」「誰に触ってんねん!」「離せ不細工!」などと意味不明なことをわめき散らしながら、しっちゃかめっちゃかに暴れた。
暴れて暴れて暴れまくった。
なのにいつの間にか、両手首ともヒラメ男にがっちり握られてた。ねじり上げるように捕まれて、痛くて力が入らなくなった。
男はそのまま車へと近づいていく。引きずられる私。
心臓がドキドキして、嫌な汗が吹き出した。
これはヤバイ、まじでヤバイ、と思った。
(続き)
そのまま歩いてた私は、二、三メートル先に横に車が横付けされるのを、目の端で捉えた。
その車から男が降りてきて、私のほうへドカドカッと近づいてきた。
な、なになに?!
焦って反射的に背中を向けて逃げようとした私に、男は背後からガシッと抱きついた。そして胸を乱暴に揉んだ。正確には、私のあるかないか分からない可愛いオッパイ50%と、ブラに入ってるパット50%を。
「ちょっと!やめてよ!」と身をよじって逃れようとした。
同時に「うわ、キチガイだ、キチガイを怒らせたらマズイ、何されるか分からん、対応気をつけなきゃ、穏便に穏便に…」という意識も働いた。
でも、「離してください!」と言いながら身をよじってもよじっても、ヒラメ男は抱きついたまま離さない。
な、なんやコイツ!
ヒラメ男はやっと抱きつくのをやめると、私の左の手首をギュッと握って、路上に置いてある車のほうへ引っ張ろうとした。
ぐっと足を踏ん張った私と、綱引きのような形になった。
ヒラメ男はすごい力で引っ張ってて、踏ん張りがきかなかった。
私はズルズルズルッと何歩か引きずられた。
ぶっちーん!
なんやこいつ!!
血が沸騰した。
恐怖より怒りが先に来た。さすが私。
相手を怒らせたらマズイなんて意識は、一瞬にして吹っ飛んだ。
戦闘モードにスイッチが入った。
頭のなかでゴングが鳴り、ロッキーのテーマが鳴り響く。
私の前世は戦闘民族サイヤ人に違いない。
私は綱引きを止め、ヒラメ男のほうに向かって足を踏み出した。
私を引っ張ってたせいで軽くバランスを崩したヒラメ男の顔面を、持ってた鞄で思いっきり殴りつけ、サオとタマをまとめて蹴り上げようとして避けられ、避けられたことに腹を立てて「キモいわ!シネ!」「誰に触ってんねん!」「離せ不細工!」などと意味不明なことをわめき散らしながら、しっちゃかめっちゃかに暴れた。
暴れて暴れて暴れまくった。
なのにいつの間にか、両手首ともヒラメ男にがっちり握られてた。ねじり上げるように捕まれて、痛くて力が入らなくなった。
男はそのまま車へと近づいていく。引きずられる私。
心臓がドキドキして、嫌な汗が吹き出した。
これはヤバイ、まじでヤバイ、と思った。
(続き)