マス・ドライバーの有用性

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 月が資源供給源として有望なのには、もう一つ理由があります。

 月のような大気のない真空の天体には、地球では不可能な、あるいは難しい交通機関があり得るのですね。

 それをマス・ドライバーと言います。

 要するに電磁的な方法で、加速して質量(マス)を打ち出すというモノです。電磁的なカタパルトといったほうが判りやすいかもしれませんね。

 真空の月面では空気による抵抗がありません。だから速度はマス・ドライバーの長さと加速度によって決まります。そして一度加速した速度は落ちません。(正確に言うと月の引力である程度は落ちますが)

 特に月の場合は、常に地球に対して同じ面を向けていますから、逆に言うと、常に地球が空の同じ方向にいるわけです。だから地球圏の交通手段として最適なのですね。

 ここまで言うとお判りでしょう。月とマス・ドライバーを使えばロケットを使わない宇宙旅行が可能なのです。加速度が大きいほど速くなるので、有人にはちょっと問題ですが無人の貨物運搬には有用です。特に資源の運搬などには何百Gかかってもかまわないので理想的とも言えますね。

 このマス・ドライバーを使って、宇宙空間の一点めがけて資源を送ることが可能ですね。

 月の脱出速度は秒速2.4kmなので、1g(1gは9.8メートル毎秒毎秒)で約240秒加速すればこの速度になりますが、それだとマスドライバーの長さは約288kmもの長さになります。作れないサイズではないですから将来的には作られて、有人宇宙飛行に使われると思いますが、100gならば2.88kmですね。まずはこちらでしょう。

 また、マス・ドライバーは小惑星でももちろん使えます。小惑星の資源を何億キロも離れた地球周辺まで低コストで輸送できるわけです。

 地球上でも絶対使えないと言うことはないですが、大気のために速度は大幅に低下しますし、地球の脱出速度の大きさもあり、あまり有効な方法ではないようです。やはり重力井戸の底ですね。

 それでも例えば秒速2kmまで加速できれば燃料の大幅な節約になりますが。

 火星も大気がありますから、速度は低下します。それもまた火星の開発が難しい理由ですね。
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